徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

―映画を‘観る’視覚障碍者たち―

2009-01-22 16:00:00 | 日々彷徨

視覚障碍のある人たちが、映画を楽しんでいることをご存知でしょうか。
もちろん、ご存知の人も多いと思います。
生まれながらにして、或いは生後何らかの理由で視覚障碍があって、目の不自由な人たちでも、晴眼者(目の見える人)と同じように、映画を観ているのです。
正確に言うと、観ていると言うより、映画を‘聴いて’楽しんでいるのですね。
そうです。ちょうどラジオドラマを楽しむように・・・。

目の不自由な人たちにとって、映画の映像が見えない、字幕が読めないという事実は、映画を鑑賞する上で、とても大きなバリアとなっています。
でも、たとえば目が見えていた頃に、映画を楽しんでいた人たちは、失明後も、以前と同じように、映画を何とか楽しみたいと思っています。

映画に興味を持っている、視覚障碍者の人たちは、実は沢山いるのです。
「映画は、頭でなく心で伝えるもの・・・」とは、黒澤明監督の言葉です。
その心さえあれば、誰でもが映画は観られるはずで、「見えることがすべてではない」と、視覚障碍者も一緒に楽しむ映画鑑賞を推進している、ボランティア団体シティ・ライツまであります。
この人たちは、映画を通じた、障碍のない、新しいコミュニケーションの場づくりをめざしているわけです。

テレビの副音声に似た、映画の視覚的な情報を補うナレーションが、目の不自由な人たちの助けとなります。
つまり、映画の音や台詞を聴き、映像を想像しながら楽しみます。
その想像をより鮮明にするのが、「音声ガイド」と言われているものなのですが、最近この「音声ガイド」を取り入れる映画館も見られるようになり、視覚障碍者の人たちに喜ばれています。

会話と会話の間に入る解説、登場人物の動き、場所、情景を、簡潔なナレーションを挿入することで、鑑賞者はFMラジオのイヤホーンでそれを聴き、想像の世界で、映画をより一層楽しむことができるわけなのです。

外国映画の、吹き替えのない字幕スーパーでは、ボランティアたちがにわか声優となって、各俳優の役割を分担し、台詞を本物の俳優そっくりに、「音声ガイド」でよく分かるように演じることさえあります。

実は、先日その現場に居合わせる機会があって、映画を楽しむ視覚障碍者たちの明るい笑顔に接し、そうした人たちのいること、そのおかげでどんなにか目の不自由な人たちが映画の鑑賞に福音となっていることを知った次第です。
勿論、ボランティアの人たちには、人知れぬ苦労があります。
カメラワークひとつとっても、編集効果などで表現される映像演出も、専門用語やどうやって撮っているのかをナレーションするのではなく、どう表現したらよいのかを考えて言葉にするのだという、大変なご苦労もあるのでした。

要は、視覚障碍者の人たちが何を求めているか。
大切なことは、見えない人の立場に立って、説明の出来るコミュニケーション力が必要なことで、現場で働くガイドの人たちには頭が下がりました・・・。
上映館での視覚障碍者たちは、「俺たちだって、映画を楽しんでるんだぞ」という気概にあふれていました。
これからも、 「音声ガイド」に携わる人たちの、善意の輪が少しずつでも広まっていくのではないでしょうか。


 ~閑 話 休 題~
1月24日(土)から2月20日(金)まで、 「中国映画の全貌in横浜黄金町」が、横浜市中区のシネマ・ジャック&ベティ(045-243-9800)開催され、中国、香港の傑作映画24作品を集めて一挙上映されます。
見逃していた旧作や、懐かしい名画「宋家の三姉妹」「古井戸」「天安門、恋人たち」「小さな花」、大作「項羽と劉邦」「阿片戦争」などの作品とも再会できそうです。
大変ユニークで、面白そうな企画です。