徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

「住居侵入罪!」ービラ配りー

2007-12-25 14:00:00 | 寸評
たかがビラ配り、されどビラ配りなのである。
一審で無罪、二審で逆転有罪だ。

玄関にオートロックの付いていないマンションで、部外者が立ち入り禁止の張り紙を無視して、最上階から順番に、各戸のドアポストに共産党のビラを入れたということで、東京高裁から、二審で「住居侵入罪」を言い渡された。
このお方、普段から大変真面目な、お寺の住職さんだそうである。

・・・マンションに立ち入ったのは、せいぜい7,8分間だったそうだ。
彼は、これまで40年以上も政治ビラを配っていたと言われる。
しかも、それまで一度も立ち入りを咎められたことはなかった。
勿論、問題を起こすようなこともなかった。
しかし、住職は、住民の通報で逮捕、勾留となり、23日間も身柄を拘束されるという不名誉な事態にまで発展してしまった。

一審では、「住居侵入罪」を認めず、「無罪」となった。
ビラ配りそのことが、「住居侵入罪」を適用するには、まだ社会的な合意として馴染んでいないとしたのだ。
二審で、それが覆ったわけだ。
・・・とすると、ピザや不動産のチラシとかはどうなるのか。
あれは、犯罪ではないのか。
どうも、分かりにくい。
ビラ配りだけで、業者が逮捕されたと言うことは聞いたことがない。
ビラ配り(チラシ投函)に、目くじらを立てる必要があったということか。
限られた政党の、主義主張を訴えるビラだからだろうか。
しかし、ビラの内容が問われたわけではなく、住居区域へ侵入したことが罪になった。
この行為が、「刑罰」を科されるほどの罪状となるのか。
そんなに、悪質な行為なのか。
「ビラ配り」は犯罪なのか。

二審の高裁は、マンションに立ち入ったことについて、他人の財産権を「不当に侵害」したとして、「住居侵入罪」を言い渡した。
人の住居に断わりもなく立ち入ってはならぬ と言うわけだ。
それはそうだ。
確かに、筋の通った話だ。
この住職は、勾留期間があったから、刑が確定しても罰金を払う必要はなくなったが、それでも「有罪判決」に変わりはない。

捜査にも、問題は残る。何だか、少し怖ろしい気がする・・・。
これとは別に、自衛隊のイラク派遣反対のビラを、防衛庁の官舎で配って住居侵入罪に問われた、市民団体の三人が有罪判決となった例がある。

マンションのビラ配り、二審判決は、特定政党の主義主張を訴えるビラを配れば、警察に逮捕され、有罪判決を受ける恐れがあることを示した判決だった。
表現の自由への目配りは・・・?
こうした判決が相次いでいる実情は、何を物語っているのだろうか。

高裁はこう言っている。
 「憲法は、表現の自由を無制限にに保障してはいない。公共の福祉のためには制限されることもある。だから、たとえ思想を発表するための手段であっても、住民に無断で立ち入ってビラを配ることは刑事罰に値する
ふむ、ふむ・・・、なるほど・・・。

ビラ配り(チラシ投函)は、確かに住民にとっては迷惑なことだろう。
居住者の苦情にも、耳を傾けなければならない。
その内容はどうであれ、ビラ配りの強引なやりかたには、一考が必要だ。
だからと言って、そのつど逮捕と言うのは如何なものだろうか。
無断でビラを配ったかどで、手錠をかけられ、長い間鉄格子の中に収監されることになるのだ。
「犯罪者」となるのか。
常識的に考えて、どうも釈然としない。

この一件、当然、被告側は直ちに上告した。
表現の自由とプライバシーの問題、一審判決と二審判決をふまえて、最高裁はどう判断するだろうか。
最高裁が、「市民の常識」に立ち戻った、正しい判断を下すことを信じたい。

・・・週末近く、金曜日の夕方のことである。
郊外の都市機構の高層団地の前に、一台の乗用車が停まった。
車から、不動産関係と思われる、スーツ姿の若い営業社員らしい男性が降り立った。
男性は、オートロックされていないエントランスを、勝手知った足取りで颯爽と入っていった。
その手に、あり余るほどの広告ビラを抱えて・・・。
彼は、集合ポストには目もくれず、そのままエレベーターで最上階の十三階へ向かった。
エントランスの壁には、やはり「部外者立ち入り厳禁」の大きな貼り紙があった・・・。