今年も残り少なくなってきました。
今年は、海外の目を通して、日本を見直そうとする、そんな映画体験の続いた年のようでした。
新聞を読んでいて、ふと目につきましたので・・・。
「長江哀歌(エレジー)」の文字が・・・。
著名な映画評論家七人が、今年心に残った映画作品を各々三本選んでいました。
その七人のうち五人(秋山登、稲垣都々代、佐藤忠男、品田勇吉、秦早穂子)の評論家までもが、それぞれあげた三作の中に、あの中国映画「長江哀歌(エレジー)」を入れていたのです。
(上記、下線部分「長江哀歌」をクリックしますと、詳細へアクセスします。)
・・・七人のうち五人もですから、それほど、高い評価を受けたというわけです。
まあ、さすがに、ヴェネチア国際映画祭のグランプリだったこともうなずけますよね。
ちなみに、この作品を選ばなかったのは、柳下毅一郎、山根貞男の両評論家でした。
映画祭の審査委員長だった、カトリーヌ・ドヌーヴをして、「物語のクオリティ、時代のうねりを捉える視線、人生の機微を見つめる眼差しに、とても心動かされた」と言わしめただけのことはあったのです。
ジャ・ジャンクー監督の中国映画「長江哀歌(エレジー)」は、中国・三峡のダム建設現場を舞台に、社会の変化に翻弄される庶民の姿を描いた,大変ユニークな作品です。
地味な作品ですから、あらすじをなぞるだけの映画とは一味違う、深々とした、現代の世界観が「大人」の観客をひきつけたそうです。
10月のこのブログ欄で、ドキュメンタリータッチの印象深かった、この映画の鑑賞記事を書かせてもらいました。
横浜の場末のミニシアターで自分の鑑賞した映画が、評論家五人の方々の、今年特に印象に残った作品と奇しくも一致したことで、ああやっぱり、あの映画はいい映画だったのだなと、想いを新たにして嬉しくなってしまいました。
これには、ふむ、ふむ~と納得です。
「長江哀歌(エレジー)」は、一般受けのしにくい、言ってみれば、「映画らしくない映画」だったかも知れません。
でもそれは、逆にこれが「本当の映画」だと思わせるものだったという気がしています。
なお、「長江哀歌」とは大きな差で、一応名前があがったのは次の作品でした。
参考までに・・・。(残念ですが、見ていない作品がほとんどです。)
「それでもボクはやっていない」(周防正行監督、日本・中国)
「不都合な真実」(デイビス・グッゲンハイム監督、アメリカ)
「天然コケコッコー」(山下敦弘監督、日本)
「ミリキタニの猫」(リンダ・ハッテンドーフ監督、アメリカ)
「オフサイド・ガールズ」(ジャファル・パナヒ監督、イラン)
「善き人のためのソナタ」(フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督、ドイツ)
「夜顔」(マノエル・ド・オリベイラ監督、フランス・ポルトガル)
「殯(もがり)の森」(河瀬直美監督、日本・フランス)
「サッド ヴァケイション」(青山真治監督、日本)
「叫(さけび)」(黒沢清監督、日本)
「ラザロ-LAZARUS-」(井土紀州監督、日本)
「陸に上がった軍艦」(山本保博監督、日本)
「デス・プルーフ i n グラインドハウス」(クエンティン・タランティーノ監督、アメリカ)
映画会社は、どこでも青息吐息で、日本の映画はいま正念場に立っていると言われます。
年末、年始はどんな作品が登場することでしょうか。
映画は、楽しい事も大事でしょうが、すぐれた作品の登場を期待したいものです・・・。