YS Journal アメリカからの雑感

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アリゾナ州で州法として移民法成立

2010-04-28 11:35:50 | アメリカ政治
移民法というより、不法移民取り締まり法と呼んだ方が相応しいのだが、アリゾナ州の州法として先週、成立した。

背景には、連邦政府がメキシコとの国境の保守をキチンとしていなかった事、カリフォルニア州やテキサツ州の国境警備が厳しくなった事、アリゾナ州と接するメキシコ側の麻薬組織の活動が激しい事などで、アリゾナ州国境での不法移民が増えて、犯罪行為が活発化している事が挙げられる。

不法移民の増加で、アリゾナ州の州都フィネックスは、メキシコ人絡みの誘拐事件多発しており Capital of Kidnapping と呼ばれており、車の盗難や殺人も増えており、先日は国境のある軍警察署の副署長が自宅で殺される事件が発生している。移民法成立は議会の70%の賛成多数で可決されている。

法律自体は、不法移民と見られる人を片っ端から容赦なく尋問出来るというものではなく、何らかの理由がある時に、合法移民である書類の提示を求める事が出来るという内容で有る。移民に対する書類の提示要求は、連邦移民法で認められており、州法は注意深く、連邦法を運用と連動する様な文言となっている。

移民、特にメキシコ人に対する人種差別的法案であると大騒ぎになっている。騒ぎの責任の一端は、オバマ大政権が、昨年から激しくなったメキシコ側での麻薬抗争の影響があるにもかかわらず、連邦政府の国境警備を強化せずに着た事が挙げられる。その挙げ句に、今回の州法成立に付いて、オバマ大統領、司法長官、国土安全保障長官が雁首並べて、法律の中身も把握しないまま、違憲であるなどと軽はずみな発言を繰り返しており、アメリカ市民の安全より不法移民の人権が大事であるかの様な印象を与えている。

マスコミも民主党議員も政府論調に同調した形で、尻馬に乗っている。「ナチのユダヤ迫害と同じだ」とか、狂人的な発言を臆面も無くしている人達がいるのには、驚いた。

アリゾナ州は、国境があるので、これまでも移民法、人種差別などで、メキシコ人絡みの訴訟経験が豊富なので、オバマ政権が言う様な明らかに憲法違反になる様な州法を作らないのである。Reasonable Suspicion は議論の有る所であるが、通常の警察官の尋問と同じであるし、連邦法で移民への合法書類提示は定められているのである。

健康保険改革法案成立した事で、オバマ大統領への批判も一段落していた。金融改革法案では、改革相手が金融機関と限られていたので、ウォールストリートの演説では変な事(相変わらずの嘘)も言っていたが、余り批判に曝される事も無かった。

今回は、不法移民へ肩入れするという、改めてリベラル活動家の面をさらけ出しているので、アメリカ国民に改めて幻滅をもたらしたと思う。この秋の中間選挙に向けて、ヒスパニック(メキシコ人中心)、人種差別絡みで黒人への受けを狙った政治的なアピールという一面もあると思うが、アメリカ市民の安全と国境警備の厳重化を棚に上げての、声明なので改めて、大統領としての資質を問われる自体になってくるだろう。

アメリカの不法移民は、経済状況の悪化でここ数年減ってきているらしいのだが、現在でも推定で一千百万人いると言われている。健康保険改革法案のときも不法移民にも補助金で健康保険を提供するのではないかとの疑問が付いて回っていた。オバマ大統領は、一方で移民法改革で、不法移民に市民権を速やかに与える事を画策しようとしていたりする。

もし、オバマ大統領が現在の国境警備の不備を放置し、自己防衛の為に連邦法の枠内で州法で対応しようとするアリゾナ州を邪魔し、市民権獲得の基準を甘くすると、メキシコとの国境を持つ州は(カリフォルニア、アリゾナ、ニューメキシコ、テキサス)は、大変な事態になりそうだ。ひいては、アメリカの国体を維持出来なる危険性さえ出てくる。

どうひいき目にみても、オバマには大統領の資質が無いとしか思えないアリゾナ州の移民法成立をめくる騒動だ。恐ろしいのは、まだ始まりに過ぎないという事だ。任期中のダメージを最小限にして欲しいと願っている私のささやかな願いもはかない夢か。


追記(4-26-12)

アリゾナ州の法律は、これ