YS Journal アメリカからの雑感

政治、経済、手当たり次第、そしてゴルフ

塩野七生、惚けてないですよね?:文芸春秋5月号

2010-04-16 14:05:43 | 新聞、雑誌から
一連のトヨタリコール問題は、日本人にとっては強力なインパクトがあたようで、未だにいろんな人がいろんな切り口で取り上げている。今週は、レクサス SUV の販売停止ありーの、WSJ でトヨタのお家騒動の記事がありーので、まだまだ話題に事欠いていない。極めつけは、昨日届いた文芸春秋5月号で、塩野七生の『日本人へ』という連載エッセイで、何とも珍妙な取り上げ方をしていたことである。

塩野七生は好きな作家の一人だ。(だった。の方が正確?)多くの著作を読んでいる訳ではないのだが、『海の都の物語』でファンになり、『ローマ人の物語』も3巻くらいまでは新刊で購入していたが、15年で全15巻という事なので、揃ったら購入しようと思って、そのままになっている。

理由は、『海の都の物語』に比べて『ローマ人の物語』の濃度が薄い気がした事だ。巷では、『ローマ人の物語』は塩野七生のライフワークで、15年も掛けて執筆という事で、第一回から絶賛であったが、私的には承服しかねる内容であった。(最終結論は全巻読んでからくだそうと思うが、今のところ購入意欲が無い)

最近は文芸春秋のエッセイでしか読む機会は無いのだが、印象が薄く、思い出せるエッセイがない。そんな状態での、今回のトヨタ問題を取り上げたエッセイ『車文化のちがい』である。

先ず、驚いたこととして、「対応の拙速さ(散々取り上げられているので省くとしている)」と「問題視されていた期間中すっと、広告が消えてしまった事で想った、日本人の正直過ぎ,真面目すぎ、肝っ玉のなさ」の二点を挙げている。ここまでは、塩野七生らしいと言えばらしい、日本人叩きなのでOK。ここまでで四分の一。

残りの四分の三は、自分は車を運転しないと前置きはしたうえで、アメリカで生活した事のある一ヨーロッパ人の意見をダラダラと自身との問答の形式で書いて、ユーモアのある広告でも出しときゃ良かったと結んである。

ひどすぎる

大御所、塩野七生大先生に、誰も何も言えないのであろう事は想像出来るが、天下の文芸春秋の編集部がこれで良いのであろうか?

イタリア留学をして、イタリア語(確か、古語も)を解し、ローマの歴史を誰よりも勉強し、お綺麗?(年ですけど)なのは、分かりますが、今にして思えば、『ローマ人の物語』を執筆し始めた1992年頃から進歩が無くなっているのではないだろうか?『ローマ人の物語』で感じた希薄な印象、漠然とした失望感の根拠がハッキリした様な気がする。

ローマの歴史は政治の歴史なので、必然的に政治評論家と認識されているようで、文芸春秋でも政治家、政治評論家との対談が掲載されたりする。しかし、歴史との比較をするだけで(特に人物評にその傾向が強い様に感じるが)、現状を分析する視点が欠けていて、将来の予測が出来無いようなイメージがある。(これら対談もキチンと読んだ記憶が無い)まあ、ローマの歴史上の人物を引き合いに出されたら、誰も彼女と議論は出来ないと思う。

『ローマ人の物語』という大鉱脈を掘り当てたけど、真摯な作家という意味では、その前で終わっていたのかもしれない。

今年で73歳になられるそうだが、惚けるにはちょっと早いと思うので、勉強し直して態度を改めて出直して欲しいと切に思う。そして、門外漢の分野は、年寄りの冷や水にならない様に、書かない方が無難ではないかと、お恐れながら、アドバイスしておこう。