YS Journal アメリカからの雑感

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へんてこりんな宇宙開発政策

2010-04-17 18:24:31 | アメリカ政治
今週木曜日に、オバマ大統領は、わざわざフロリダのケネディ宇宙センターまで出かけて、NASA の今後の政策について発表をした。非常にへんてこりんな内容的の発表であった。これまでも大統領の発言には批評的ではあるのだが、もし、発表された政策が実施されると、宇宙開発の将来は暗い。では、問題発言を二つ。

「宇宙開発の主要部分を民間に委ねる事で、宇宙開発のリーダー国の位置を強化する」と「約25年後には、火星への有人飛行を行う」である。

「宇宙開発の主要部分を民間に委ねる事で、宇宙開発のリーダー国の位置を強化する」

この発言は支離滅裂だ。宇宙開発の開発を民間に委託するという事は、今後、国としてはやらないという事である。つまり、アメリカは宇宙開発に興味がありませんと言っているのに等しいのである。NASA の予算として開発を進めないと、民間企業が付いてくる訳が無く、技術的に大吃停滞する可能性がある。

大きな政府を指向するオバマ大統領が宇宙開発の民営化を打ち出した事は、本人も宇宙開発に興味が無い事をハッキリ示した事になる。宇宙開発は、軍事開発と密接な関係もあり、軍事嫌いのオバマ大統領の発言としては、一貫しているのであるが、それで、リーダー国の位置を強化出来るとは、絶対本心では思っていないはずで、一センテンスなかで矛盾が起きている。

「約25年後には、火星への有人飛行を行う」

この発言は、宇宙開発に力を入れないと言う事を、覆い隠す為の、只のおべんちゃらである。オバマ大統領本人も自分が生きている間に人が火星に行く事を見れるかもしれないとの発言もあったが、たちの悪いジョークか、でなければ技術音痴、宇宙開発音痴を隠そうともしない厚顔無恥発言である。火星への探検を真剣に考えている人達は、怒り心頭であろう。現に、人類で初めて月面にたったアームストロング宇宙飛行士は、公式には初めて、オバマ大統領の政策を批判している。

「核無き世界」発言と同じレベルの夢想家発言である。

まず、火星へ行くのは、月へ行くのとは全然レベルの違う話であり、技術的な根拠が微塵も無い。ちょっと考えただけでも、片道3ヶ月も掛かる事、その上,火星は地球と同じ位の重力があるので、降り立ったら最後、アポロやスペースシャトルの様なロケットが火星上に無いと、帰ってこれ無い事など、卒倒しそうな問題が山積みなのである。

ケネディの月へ人を送る決意宣言とは違うのである。ケネディの場合は、既に人工衛星等の技術があり、月への有人飛行の技術的な下地は出来ていた上での、宣言であった。ブッシュ前大統領のもう一度人を月への宣言の方が、現実的な計画や夢を持たせられるので、政策や宇宙技術者にとっては心に響くものであろう。

もし、今回発表の政策が実施される事になれば、宇宙開発が停滞するばかりか、NASA が民間中心になると『カプリコン1』の様な、宇宙開発と国家陰謀の話が見事に融合した名作(珍作?)映画の企画さえ思いつかなくなるであろう。

宇宙に女性4人がいるという明るい話題の最中に(だからこのタイミングなのであろうけど)、こんな暗い政策の発表がされた事は、アポロ11号が月に着陸した事が、間接的にアメリカに住む事の要因になったものにとっては残念である。