よろみ村くらし暦

奥能登の禅寺での山暮らし。野菜作りと藍染め,柿渋染め,墨染めのくらし暦。来山者への野菜中心のお料理が何よりのおもてなし。

寒波

2021-12-30 20:25:04 | 自然の不思議

最近の気候は、変化が大きい。
一晩にして別世界が出現する。
ちょうどここでは年末の麹作り、お味噌作り、お餅つきの時になる。

部屋は薪ストーブが焚かれ、大勢が集まっているので熱気で暖かい。
しかし一歩廊下に出ると冷気が鼻を突き、足の裏から寒さが走ってくる。
でも、外に出る時は完全防備で身を固めるのでむしろそれほど寒さを感じない。



寒波が続くとそんな中にも楽しみがある。
世界が真っ白に覆われると一種の聖地に生まれ変わる。
白という色、全てが白一色になると自分は消え、何かに包まれる温かな安堵ような気分になる。
これは毎回感じる不思議な体験だ。



そして寒さが作る摩訶不思議な芸術作品。
でもそれは儚さと危うさを秘めて、温度、湿度の微妙な上に成り立っている。
窓ガラスのレースは数時間で消え、2メートルにもなった氷柱は数日で落ちてしまった。



無事年末の行事が終わり、キムチ、浅漬け沢庵、白菜漬け、大根寿司も終え、今おせち料理を作っている。
明日には来客が4人となり、賑やかな大晦日になりそう。












富士山

2021-12-23 21:03:02 | 旅行

石川の能登に来てから日常の視界から高い山が見られなくなった。
やはりそれは私には寂しさでもあった。
私の故郷、甲府からは台形の5合目からの富士山がいつも見えていた。
そして登山をすると雲海の彼方に富士の姿が見える。

今回の旅で見たのは、裾野から広がった大きな富士山が目の前に現れた。
雄大で堂々としたその姿に畏れと憧れを感じた。
改めて富士山の何にも頼らない独立した姿は美しく近寄りがたさがあった。
私にとって、富士山は遠くから眺める山、憧れの山でいい。



私の旅の楽しみの一つに、車窓からの景色を見ること、そして読書。
しかし今回、電車の中で見たのは50人中、ほとんどの人がスマホを見入る人達だった。
本を広げていた人は2人、ぼーっとしている人はその電車では私一人だった。
確かにその電車と時間帯からすると旅の人ではなかったが、ここでも寂しさを感じてしまった。
もう一つ、甲府駅から南アルプスが見える窓にはロッカーが置かれてしまった。
みんな何を大事にしているのか、私だけが違っているのか、どうなのだろう。



でも、一歩日常を出ると色々な気づきと小さな冒険がある。
今回は友人との旅によってより楽しい旅になった。
これからも思い出深い旅と言えるだろう。



家に帰ると年末のお仕事が待っていた。
12月は大掃除、おせち作り、味噌作り、お餅搗き、そして漬物月。
その途中だ。






ギャラリー 友人 そして富士山 ー3ー

2021-12-20 20:23:49 | 旅行

今回、旅と共に3人の友人をめぐる旅でもあった。



一人は甲府で同じ職場だった友、特に美術系の話が合い、以前はスキーを一緒にしたこともあった。
二人目は今回の旅を企画した人で、最近は登山を共にしている。彼女は私より20ほど違うのだが趣味も気も合うので不思議。
性格的には、どうも回遊魚的らしい。じいっとしていることより動いている方があっているらしい。
3人目は、中学時代からの友人で両方の親たちも知っている幼馴染でもある。
甲府にいた時はよく二人で山に登った。今思うと何も知らずに南アルプスや北アルプスに登れたと思う。
若さという無知が怖い物知らずの行動を起こした。



それぞれと久しぶりということもあって心置きなく話が尽きることはなかった。
3人が3人とも私を待っていてくれ、それぞれの立場で私を迎える準備をしていてくれた。
今回の旅で何よりもそれが嬉しく、今も私の中で寒い冬でも心は暖かい。





ギャラリー 友人 そして富士山 −2ー

2021-12-17 21:29:42 | 旅行

旅は続く。
今回の目的の一つにポーラ美術館があった。
甲府にいた頃、月に一回は東京の美術館に足を運んでいたが、箱根のポーラ美術館は遠かった。
そこには私の好きなモネの作品があるので楽しみにしていた。
確かにモネの絵が数点掲げられていた。
ところが自分自身驚くほど感動がなかった。



どうしてだろう。モネを見る前に現代美術の作品で私は酔ってしまった。
それが私だけでなく、友人も同じ症状になっていた。
細かく気が遠くなる作業によって作られた作品、そして波の写真、つまり船酔いに近い気分に陥っていた。
それが原因なのか、モネの展示の仕方なのか、見入るとか、向こうから入ってくるとか、心の交わりが感じられなかった。
私の感受性が衰えたのか、寂しさを抱えて美術館を後にした。

ところが思わぬ出会いが待っていた。
成川美術館が近くにあり、近代から現代の日本画の作品群が並んでいた。
その中に私の中で大切な日本画家の堀文子の絵が掲げられていた。
私が知らなかった大きな物からNHKのきょうの料理の表紙絵などが展示されていた。
本物は買えない、でも一筆箋や絵葉書、そして画集を求めた。



旅のおもしろさは、予定外、予測不可能の出会いにある。
今回も思わぬトキメキに大満足の旅になった。
まだ旅は続く、、。









ギャラリー 友人 そして富士山

2021-12-15 21:01:19 | 旅行

旅は私の青春の故郷であるいつもの大糸線と中央線から始まる。
まず、生まれ故郷の甲府の緑ヶ丘で両親と弟たちのお墓参りを済ませて出発した。



緑ヶ丘からの南アルプス、残念なことにテニスコートが工事中だった。

甲府ではエアリーというギャラリーをしている友人とギャラリー巡り、3箇所とも初めてのギャラリーだった。
アサヒギャラリーの石田泰道展、和紙で作った「石華繚乱」繊細かつ精緻な大小の華や蕾が静かに置かれていた。
我が家が近代建築だったらきっと似合っていただろうが、自然の中では紙の花は咲いてくれない。



iギャラリー、「錆びる人」市川治之。小さいもので5センチくらいの鉄錆の板状で作られた像が歩いていた。
鉄で錆びているのに違和感はなく、むしろ暖かさを感じた。
ジュコメッティーとも違う、登っているのに下がっているような、エッシャーの世界を歩いている。
おもしろい。

evam eva yamanashi 「ささなみ」山本昌男 写真展
久しぶりのモノクロームの世界、そこに映し出されたのは空、川、そして秋山実の盆栽とのコラボ。
なんとも不思議な空間だった。色を見たわけではなかったが、冷たさはない。
ほとんどが黒だったがそこに光の白が映し出されると画面が動き出す。
緩やかな心地よい揺れを感じた。
そうそう、びっくりしたのはそのお値段、原田マハの小説の世界ではないが、私のような一市民ではとても手が出ない。
芸術のお値段は摩訶不思議な世界。



友人おすすめのお昼に食べた肉まんと春雨スープ

その日のラストは闇に映し出された八ヶ岳のシルエットと甲府盆地の夜景を私たちは温泉に浸りながら眺めていた。
選び抜かれたギャラリーと温泉と食事、なんと贅沢な1日だったか。
友人に感謝です。

旅は続きます。