ハナを見ていると、体内時計がきちんと働いているとしか思えない。
私は一応目覚ましを掛けるが、大概それ以前に目が覚める。
ハナは夜7時半頃には廊下から寝床に移り、そこで眠る。
そして、朝の6時前にゴソゴソと動き出し、「くいん、くいん。」と私に外に出たいとサインを送ってくる。
冬の間、娘が2階にいることもあり、私は犬のハナと同じ部屋に寝ている。かつてここは母がいた部屋だ。
大きさは6畳,唯一ここだけが外と接触していないので隙き間風もワンクッション置かれるが、実は一番玄関に近く、ハナが出入りする度に開けたり閉めたりしないと一番寒い部屋と言うことになる。
今朝のことである。居間の柱時計が五つ鳴った。ベッドのスタンドを点けて時間を見ると6時を指していた。
ゼンマイ時計も止まる頃は音の間隔も長いのでてっきり時計がひとつ鳴らないと思ってしまった。
ゴソゴソ起き上げるとハナも起き出し外に出たいと催促した。
いつもなら大概はハナが先に起きて私を起こすのだが、今朝は逆だった。
しかし不思議に今日はすぐ帰ってきて部屋に入れてくれという。
そして6時過ぎ、いつものように外に出たがり、6時45分,いつも通り隣の中学生と一緒に出掛けてしまった。
台所の電気とストーブを点け、居間の薪ストーブに火を点け電気炬燵を入れた。
お弁当を作り朝ごはんを用意して時間を見ると45分、いつもならもう台所に来てもいい時間なので、息子の部屋まで呼びに行った。
ここで私はまだ長針しか見ていない。いつも付けているラジオも番組が違う。まだ私は気付いていなかった。
ごはんを食べている時にカーテンを開け、「今日は雪でも降るのかね、まだ暗いわ。」
眠そうな顔をしながらもくもくと食べる息子,用意されたお弁当を袋に入れ玄関を出た。
「エー。1時間早いよ!」「えーっ、どうりで暗いと思ったら、、、」
夕方になると廊下でそわそわとハナの動きが感じられる。
そして起き上がると障子のガラス越しにこちらに視線を向けてくる。その視線を受けて時計を見ると「4時」。
雨の日以外は、前後5分くらいしか差がない。
犬はGPS機能を持っているとか、途中の匂い付けや風景を覚えているとか言われている。
どうもそれだけでなく、体内時計しかもデジタルとまでは行かなくとも、ほぼ正確に時を刻んでいるとしか思えない。
お弁当を作り出して5年,今までになかったミスをしてしまった。
私の時計のゼンマイが錆付きだしたのだろうか。
それに比べ、犬時計に狂いはないということかな?