よろみ村くらし暦

奥能登の禅寺での山暮らし。野菜作りと藍染め,柿渋染め,墨染めのくらし暦。来山者への野菜中心のお料理が何よりのおもてなし。

六角文庫

2013-09-30 21:16:23 | 旅行

戸を開いた瞬間ジャズが聞こえた。
そこは六角文庫,金沢から兵庫の北条に引っ越して10年になるという。
泉井重郎さんと音座マリカさんの家,それを六角文庫と名付けている。

そこはそれまでもそうだった。家に入ると何か異空間に足を踏み入れた錯覚を覚える。
時がゆったりとスイングしている。ジャズは流れているのに、時間は流れることを忘れ、気持ち良さそうにスイングしている。
それがたまらなく、また数年振りに一緒に揺れたいと思った。

話はジャズだけではない。天文のこと,植物のこと,詩、俳句,縦横無尽に終わることを知らない。
私の拙い質問に彼はそれに答えるばかりでなく、それにまつわるものがたりが語られ、時はもう消える。

マリカさんの声がまたいい。小鳥のさえずりか秋の虫の涼しさを醸し出す。
彼女はまた珍味,珍芸のマジシャンでもある。
月下美人をアルコール漬けにしたり、カボチャアイスも出てきて私を楽しませてくれる。


これは朝食である。おしゃべりをしながらの洋食の朝はやはり異国気分。
3日間,上げ膳据え膳の日々は私にとってとびきりの旅でした。
勿論,おいしい3日間でした。
ごちそうさま。

そこは、私の博物館。また一緒に納まりたいと思ったのでした。

帰山すると,まだ元気に鈴虫が鈴を鳴らしていました。
その鈴虫の飼い主は、このマリカさんなのです。もう7年になるそうです。すごいな!

今回の旅は神戸,六甲駅前のギリシャ料理店のphi、フィでのギリ丼、これはよろみの玄米を使っています。
そこでやはり数年ぶりにお会いしたフラワーロド服部内科の友人と共に食事。
飾られたギリシャの白い家と青い海の写真とオーナーのギリシャ彫刻のようなお顔を見ながらのランチは、さながらもうギリシャでした。



そうそう,住吉倶楽部での展覧会はしっとりと美しく染めて織られた着物はまた格別。
偶然にも、かの内田樹氏の奥様を拝顔することも。
だから旅はおもしろい。









展覧会

2013-09-23 09:44:46 | 展覧会

9月21日から27日まで,神戸の住吉倶楽部で黒田妙美染織展が開かれている。
その賛助作品として私の藍染めと柿渋染めの帯と袋物を出させて頂いている。

彼女は人間国宝の志村ふくみさんのお弟子さんで絹糸染めて紬を織っている。
以前私の藍瓶で染めさせてあげたことがある。
絹糸を瓶に浸け、引き上げてそれを搾った瞬間,緑色から藍色に変わった。
それは蜩が羽化したその瞬間に立ち会えた、そんな気がした。

あの緑は朝露に濡れた葉っぱの緑,草の緑を抽出できないその緑を一瞬糸に移した、その時でもあった。
絹糸と藍が織りなす妙でもある。



今日がもう23日,連休の最後,一人でも多くの人が訪れますように。
自然から頂いた色と人の技の妙をお楽しみください。





にんにくの植え付け

2013-09-22 10:45:20 | 畑仕事

9月はニンニクの植え付けの時季だ。
ニンニクもショウガと同じでにんにくそのものを植え付ける。
生姜は春に植え付けもうそろそろ収穫になる。

ニンニクの1片を地中に埋め込むのだが、そのポイントは草取りと肥料と土寄せ。
その成果があって、今年は見事に育った。



今年は自前のニンニクを種として使うことにする。
市販のニンニクと何が違うか。
それはぷっくり、ふっくら、辛みと甘みが絶妙なバランスが味わえる。
びっくりしたのは、市販のにんにくをそのまま放置しておいたところ色が緑の変ったことだ。
その時は酸化したんだと受け止めていたが、自前のそれは変化しない。
あれは単なる酸化でなく、化学物質が入っていたのではないかと思われる。

これから約半年,7月には1片が8個ほどに、直径が7センチほどに大きくなる。
これからの冬も、雪の下でゆっくり、じっくり育ってゆく。
あのオリーブオイルとニンニクの焼けた香りはたまりません。






密の味

2013-09-19 14:32:39 | 自然の不思議
     
最初からだともう数年になる。
この2階の天井裏に蜜蜂が冬越しをしていた。ある年,そこに貂らしき者が入り荒らされて数年は蜜蜂がこなくなった。
ここ数年世界的に蜜蜂の数が減ってきたと言うニュースが話題となった。
その原因は気象現象,ダニ,農薬被害と言われている。
日本でも稲のカメムシ対策に使われている農薬が原因とも言われた。

私たちの田んぼも畑も無農薬、だからかここに蜜蜂は集まる?
その事件から数年後,私のかつての希望で養蜂に住職が動き出したのは2年前のこと。しかし天井裏の蜜蜂の巣がなくなり、住職自ら養蜂箱をネットで調べて作った。しかし肝心の蜂が入らない。空っぽの箱だけが木の下にぽつんと置かれていた。
ところが今年の春,2階の部屋に蜜蜂が数匹飛び交い、しかも天井裏で羽音が聞こえた。
このチャンスを見逃してはならない。そして運良く女王蜂を箱に誘引できた。

それから約5ヶ月、いよいよその蜜を取る時季になった。
何しろ初めてのこと,手伝う私も何をしたらいいのか分らない。密採取用の道具も何もない。
兎に角、上の段の箱だけを取り出すことが出来た。

先ず、その見事な6角形の巣の見事なこと。
そして、その蜜蜂の多さにびっくり、確か一つの巣に3から6万匹がくると書かれたいたのを思い出した。



ようやく一段だけ巣を取り出し、それを鍋に移した。
鍋底に垂れた蜜の味は初めての蜂蜜の味だった。色はいろがあるかないかの薄い黄色の透明で、味は思っていたより甘くない。
と言うより、舌の上で滑らかに融けていくような、それでいて舌の纏わりつかない程よい甘さ。
この甘さの加減は動物に共通する甘さではないかと。
甘みと同時に香りが広がる。これが自然界の花の香りなのか。100種とはいかなくとも,いろいろな花の蜜の味なのか。

ほんの一嘗めである。しかしこの蜜にするまでの蜂と花のことがぱーっと全身に登ってきた。
あの大きさの蜂が何万回、いや何億回かもしれない、花と箱を行き来して集めたもの、その1回に集める量を思った。
それを私たちは拝借,いや,略奪してしまう。
蜜の味は、その甘さ故にその誘惑に乗り、禁断の味,罪の味だと思ったのです。
蜂の大群は圧巻だった。蜜蜂1匹1匹が塊となり、一つの生命体を形作り維持してゆく。
個より全体を優先させるいのちの営みを見せつけられた。



蜜蜂さん、ありがとう。そして、ごめんなさい。




ゴマの収穫

2013-09-15 11:09:06 | 畑仕事

雨の晴れ間にする仕事がある。
その一つにゴマの収穫。今年は今までになく伸びに伸びて150センチにもなった。
さてその収穫だが、その時季を見定めるのがたいへん。
直菜園の最大の得は完熟の野菜が食べられることにある。
トマトなどはその最たるもの。もうこれ以上熟れることはない,そこまで待つことが出来る。

しかしこのゴマはそうはいかない。
物の本には、下枝の3分の一の実が黄色くなったと書いてあるが、そのてっぺんはまだまだ緑のままである。
さてどうしようと迷っている間にも早くも実が弾けて来る。

さて、その鞘の中にはどれだけの種,胡麻が入っているでしょううか?
鞘は4つの部屋に分かれていて、何とその一部屋に20個、だから一つの鞘から80個,それが1本に鞘が30以上あり,枝分かれした分を入れると、なんと,(ここで計算)ざっと6400個になる。
だから、一粒の種から6400個の収穫できたことになる。すごい!



喜んでばかりはいられない。
これからがたいへん,全ての種を一粒残さずに集めることは容易のことではない。
去年は紙袋に逆さに入れて種を落としたが、最後は手作業となる。
それをきれいにゴミを取り,食べるまでにはまだまだ時間がかかる。

この胡麻で月心寺流胡麻豆腐を作ること。
この作り方は胡麻を一晩水に漬けてから擂る、時間も擂るだけで1時間近くかかってしまう。
おいしものには、手間を惜しみません、と言いたいろころだが、息が切れる。

そうそう、かの「アリババと40人の盗賊」のあの呪文「ひらけごま!」はこの一機に弾けるとこらろから来ているとか。
今までその疑問が自分で胡麻を作ってみて初めて分った。
何か困ったとき、この呪文が効きそうな気がしてきた。
「ひらけ、ごま!」