カクレマショウ

やっぴBLOG

「仏像」を知ってから感じる。

2009-05-23 | ■美術/博物
「BRUTUS」の2009年4月15日号の特集は「仏像」です。表紙が阿修羅立像のアップ写真だし、「阿修羅に会えた?」とあることからも、とうぜん、「阿修羅展」に合わせての特集と思われます。ただ、阿修羅展そのものについては、「入口」と位置づけてさらっとかわし(「八部衆」の写真は見開き2ページにわたって掲載されていますが)、特集はあくまでも「ブツゾウ」。日本の仏像の歩みを、仏教伝来からの歴史と共にわかりやすく解説してくれています。

わかりやすいのはいいけれど、なんだか気になるのが、やたらと「若者」に身近なモノに引きつけようとする文章。

○仏教とともに伝えられたハードウェアである仏像&寺院建築は、先端テクノロジーの結晶として、まさに「ギラギラ」と輝いて見えただろう。

○ゾウブツ、と言ったって、仏師が自発的に造るわけはない。いちばん小規模な例を挙げてみると、まず願掛けだったり供養だったりで、「仏像が造りたいわ」という施主(クライアント)がおり、そのクライアントに「だったらナントカ菩薩いっとく?」とアドバイスするプロデューサー役の坊さんがつき、…(後略)

○赤い彗星がシャア専用ザクに、ルパン三世がフィアット500に乗っているように、仏の中にも専用の乗り物の決まっている方々がいる。

○仏像の名前の末尾には、ほぼ必ず如来、菩薩、明王、天などの言葉がつく。これは、それぞれの仏像の示すポジションを示している。サッカーだったら、GK、DF、MF、FWの区別みたいなものだ。サッカーのポジションに偉いも偉くもないが、仏像にははっきり差がある。


各ページの冒頭の文章はほとんどこんな感じで始まるので、私のようなおじさんは苦笑するしかない。最後の例なんか、サッカーのポジションと違って仏像のポジションには「はっきり差がある」のなら、サッカーを引き合いに出してくることはないだろうに…なんて思いますが。ほかにも、オバマ大統領の「チェンジ」だの、地デジ放送、フルハイビジョンだの、メジャーリーガーだの、果てはEXILEまで動員。若者に読んでもらえるように…という思いと苦労は十分にうかがわれます。

ただ、そこまでしなくちゃ「若者」が読んでくれないのか…と思う。ま、こういう文章が「BRUTUS」という雑誌の特徴なのでしょう。もちろん、そういう「たとえ話」は別として、解説そのものは内容がしっかりしているのでとても勉強になりますけどね。

それにしても、同じ「たとえ話」でも、いとうせいこう&みうらじゅんが『見仏記』(角川文庫)で見せる鋭さには到底かなわないわけですよ。この二人の仏像の見方、そして、一体の仏像からの背景のふくらませ方ときたら、感動すら覚えるほどです。特に、小学生の頃から仏像スクラップブックを作っていたというみうらじゅんの仏像への愛情の深さには…。

さて、今回の「BRUTUS」の「ラッキーアイテム」(へへへ)は、なんといっても、「特別付録」として綴じ込まれている「ブツゾウJAPAN」と名付けられた仏像カードです。今回の特集の監修も務めている千宗屋氏が選んだ「いつかは参拝したい日本を代表する仏像32」が、カードになっています。さっそく切り取って、持ち歩いています。このカードのすぐれた点は、さっきのサッカーのポジションとは「違う」、仏像のランク(尊格ヒエラルキー)ごとにバランス良く32の仏像が選ばれているという点です。つまり、上位から、如来、菩薩、明王、天、そして実在の人物である高僧・祖師、それぞれから、「典型的であり、かつ表現に優れた尊像」が紹介されているのです。

表には写真、裏にはその仏像の解説とデータが掲載されています。ちなみに、no.1のカードは、「釈迦如来立像」(京都・清涼寺本堂)。私が昔から好きな「弥勒菩薩半跏思惟像(みろくぼさつはんかしいぞう)」は、「菩薩」なので、no.14あたりに登場。「阿修羅立像」ももちろん選ばれていますが、阿修羅は尊格からいえば「天」にあたるので、no.28になってようやく出てくるわけです。なお、「阿修羅展」でかっこいいなあと思った四天王像は、4人ともカードに載っています。さすが。

同じ「仏像」でも、そのポーズや表情、しぐさ、身にまとっているものなど、それぞれにちゃんと意味がある。そういう「意味」を知った上で仏像と向き合ったとき、自分が彼らからどんなメッセージを感じるか。それを大切にしたいなと思っています。

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