「葉っぱビジネス」で知られる徳島県上勝町。事業を展開する株式会社いろどりの社長、横石知二さんが、昨年度の全国社会教育研究大会徳島大会で行った講演の記録を読むことができました。
「葉っぱビジネス」とは、「“つまもの”、つまり日本料理を美しく彩る季節の葉や花、山菜などを、栽培・出荷・販売する農業ビジネス」(株式会社いろどりのWebサイトより)。高齢者がパソコンを駆使して全国の市場を舞台に商売を展開し、今や年間2億円以上の売り上げを誇る、いわゆる「コミュニティビジネス」の典型です。テレビでも紹介され、映画化もされています。その仕掛け人が横石さん。
山に行けばそこらにいくらでも生えている「葉っぱ」が商品になる。この発想はすごいと思うのですが、もちろん、最初に横石さんが呼びかけた時には誰も賛成してくれる人はいなかった。彼の面白いとこは、みんなが賛成するようなアイディアはうまくいかない、というポリシーを持っているところ。小さい時から、「あんたバカだね。」と言われると、その逆に聞こえるんだって! 地域も同じで、欠点だ、何もないと言われる部分にチャンスがあるという。
横石さんは講演の冒頭で、こんなことを言っています。
私は「地域おこし」や「町おこし」をしようと思ったことはありません。私は一人一人に役割をつくっていくこと、おじいちゃんやおばあちゃんに「こんなことを一緒にやったら面白いちゃうん?」「あんただったらできるよ。」「一緒にやっていこうよ!」という、共に助け合いながら笑顔をつくっていく。そのように一緒になって幸せを見つけていくことが自分の一番好きなことです。
高齢化率約50%という地域で、彼が目指していたのは、ほかならぬ、近所のおじいちゃんおばあちゃんの笑顔だったんですね。何歳になっても、「朝起きた時に、「これやらなあかん」という仕事があり、生涯現役で働けることくらい幸せなことはない」という考え方には深く共鳴します。地域づくりって、そういうことですよね。地域をどうしようああしようということより、住んでいる住民一人一人が健康で生き生きと楽しく生活できることを追求していけば、いつのまにか地域全体が輝いていく。横石さんは、その手段というか、方向性として、「ビジネス」という道を選択したに過ぎない。もちろん、ビジネスとして軌道に乗せるためには、それなりの戦略も必要だったとは思いますが。
人間誰でも、「あなたが必要だ」と言ってもらえるとうれしいし、笑顔になれるし、それが生きがいになったりもします。それは子どもでも若者でも高齢者でも同じですね。彼は、インターンとして全国から毎年多くの若者を受け入れているそうですが、その中には、町に居残る若者も多いといいます。それは、ビジネスとしての可能性だけでなく、「自分が必要とされている」ということを若者たちが感じているからでしょうね。
この講演のタイトルは「自分の舞台の活かし方」。まさに、一人一人が輝ける舞台を作って、その舞台に乗せてあげることが、社会教育の役割なんですね、きっと。
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