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カクレマショウ

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社会科の授業で行う金融教育

2008-10-06 | └キャリア教育
金融広報中央委員会(事務局:日銀本店内)では、金融教育・経済教育の普及を図るため、全国各地の学校で「金融教育公開授業」を展開しています。

青森県では、青森県金融広報委員会の主催により、10月3日に弘前大学教育学部附属中学校で開催されました。公開された授業は次の2つ。いずれも、中学校3年の「公民」の授業として実施されたものです。

・お金の機能 ~物々交換経済でのシミュレーション~
・みんなが共通の利益を受けられるために
 ~マンションの耐震改修を通して政府の経済活動を考える~

「お金の機能」の授業は、「お金」の持つ3つの機能、「交換媒介」、「価値尺度」、「価値保存」について生徒たちの「気づき」を促すような内容でした。そのために、担当の先生は、「お金のない世界」を体験してもらうというゲームを取り入れていました。大型プラズマテレビやノートパソコン、携帯電話、自動食器洗い機、傘、時計、魚沼産コシヒカリ、大間のマグロなど、身のまわりにある物が印刷された15枚の「アイテムカード」が生徒たちに配布される。アイテムカードはAグループ(7枚)とBグループ(8枚)に分けられていて、隣同士でどちらかを選ぶ。そして、「物々交換」が始まります。

この時点では、グループごとの合計金額は示されていますが、アイテム個々の「値段」は示されていないので、生徒たちはだいたいの価値基準で交換し合います。「家庭用ゲーム機」(Aグループ)と「時計」(Bグループ)を交換したり、なかには、「傘」+「ノートパソコン」を「全自動洗濯機」と交換するなど、複数のアイテムを組み合わせて取引を成立させている子もいます。

さて、ここで先生から質問。「お金を使えない不便さってどんなこと?」─生徒の答えは、「お金がないと、物の価値がわからない」、「アイテムを交換する時に、明らかに値段の差があったとしても、その"差"を埋められない」など。ここで、お金が、自分の欲しい物と相手の欲しい物を交換する際の「媒介」となっているという機能、さらに、物の価値の「尺度」になっているという機能に気づくわけです。

次に、班(4人)の中で同じように交換していく。今度は同じアイテムを複数持つことも可能になります。「ピアノ」を2台持っていてもしょうがないと思ったりもしますが、もしかしたら「資産」として集めているのかもしれません。

班内での交換が終わった時点で、それぞれのアイテムの「値段」が公表されます。大間のマグロは500万円!という先生の声に、生徒からはどよめきが…。マグロを2個持っていた生徒は、一躍大金持ちになった気分で大喜び。すべてのアイテムの値段が発表されたら、生徒たちはそれぞれ、自分の持っているアイテムの値段を合計してみます。さて、最初に所有していた資産総額との差は…?

その後さらに、クラス全体で交換会が行われました。手当たり次第に声をかけて、自分の欲しいアイテムを集めるのに躍起になる子もいれば、なぜか「魚沼産コシヒカリ」だけを必死に集めるご飯好き?の子も。こうなると、「経済的な価値」だけでは計れない、人間と「物」の関係が見えてきますね。

嵐のようなアイテムの交換が落ち着いたら、次に、「時間の経過」を考えてみる。アイテムの中で、「1年後」には価値がなくなっている物をチェックしてみます。500万円の本マグロも、1年後には価値がなくなっています。1万円のコンサートチケットを持っていても、1年後には価値はゼロです。世の中には、時間の経過によって価値が無くなっていく物がたくさんあるけど、お金の価値は基本的に変わらない。そこで、「価値保存」という3つめの機能が出てくるわけです。

この授業、楽しいゲーム的要素を、授業のねらいとうまくリンクさせていることに感心しました。

もう1つの授業は、マンションの耐震改修工事にかかる費用負担と「みんなの利益」を考える授業。4人組の班をそれぞれマンションに住む家族とみなし、各世帯に割り当てられた改修費用200万円を支払うか支払わないかを話し合う。10班(家族)すべてが支払えば、2,000万円の改修費用が得られるが、もし多くの世帯が支払を拒否すれば、改修がマンションは地震で倒壊する恐れもある…。支払う理由、支払わない理由というのが、中学生っぽくて、なかなか楽しかったです。

授業のねらいそのものは、「国民の税金で公共のサービスがまかなわれている」ことを理解するということだったと思うのですが、最後ちょっと時間が足りなくなってしまって、駆け足になってしまったのが少し残念だったかなと思いました。

午後からは、経済教育の専門家の方による「先生方に知っていただきたい経済の見方考え方」と題した講演と、日銀青森支店長を交えた「金融経済教育の役割と可能性」という鼎談。経済学の話は私なんぞにはちょっとむずかしく、あんまり頭に入ってきませんでしたが、鼎談で登場した日銀支店長さんは、ご自身が学校に行って授業をした経験を踏まえて、私のような外部の人間が学校に行って生徒に直接話をすることが、もしかしたらとても大切なことなのでは…という趣旨のご発言。いっぺんで目が覚めました。

そのとおりだと私も思います。今日の公開授業のように、先生が一人でプログラムを組み立てて授業ができるというのはたぶん例外的で、金融や経済の話はやっぱり「専門家」にお任せするという方法もあるのです。最後にそのことを指摘していただいて、とてもうれしく思いました。


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