カクレマショウ

やっぴBLOG

大人の青春小説!「下町ロケット」

2013-03-22 | ■本
今更ですが…。

2010年の直木賞受賞作、池井戸潤「下町ロケット」。絶対読みたいと思っていたのですが、今頃になってようやく読めました。で、期待通り超面白くって。これはまぎれもなく、大人の青春小説です。

東京・大田区の中小企業、佃製作所が開発したロケットエンジン。その性能の高さゆえに起こる、特許をめぐる大企業との確執、駆け引き、争いがメインストーリー。基本的に大企業が「悪」で、その横暴に立ち向かう小っちゃなヒーロー、佃製作所! どうしたって健気なヒーローに肩入れしたくなりますよね。

社長の佃航平は、かつて宇宙ロケットエンジンの開発に携わっていた研究者だったのですが、夢破れて父の経営する精密機械製造会社を継いでいます。小型動力エンジンの製造が主力ですが、彼は経験を生かしてロケットの水素エンジンの開発にも力を入れています。ほとんど受注のチャンスのないと思われる水素エンジンの研究開発に莫大な資金を投入することには、社内でも反対意見がある。

ところが、水素エンジンの根幹部分であるバルブシステムの特許に、国内屈指のロケット製造会社、帝国重工が触手を伸ばしてくる。資金繰りの厳しい佃製作所にとって、その特許料はのどから手が出るほど欲しいところ。目先の特許料を取るか、ものづくりの技術そのもので勝負するか。佃社長が選んだ道は…。

「どんな会社も設立当初から大会社であるはずはない。ソニーしかり。ホンダしかり。土壇場で資金繰りにあえいだことさえある中小企業が、誰もが認める一流企業にのしあがったのには理由がある。会社は小さくても一流の技術があり、それを支える人間たちの情熱がある。」

この物語には、日本のものづくりの原点があるような気がします。焦らずこつこつと積み上げたものづくりの技術こそが、結局日の目を見る。何よりも、ものづくりに命を賭ける男たちが決してプライドを捨てないところがいい。「佃プライド」が最終的に勝利をつかみ取るエピローグは、予定調和的とはいえ、涙なしには読めません。

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