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「よのなか科」はキャリア教育の一つの理想型

2007-11-02 | └キャリア教育
東京都杉並区立和田中学校長、藤原和博さん。リクルート社から転身し、「民間」の手法を学校教育に導入して成功を収めている好例としてマスコミでも取り上げられる機会の多い方です。

彼の教育や学校経営に対する考え方は、ネットの情報である程度知ることができますが、彼の教育方針が最も如実に表れ、しかも世間の耳目を集めているのは「よのなか科」の創設でしょうか。「社会との架け橋になる教育」を目指して作られた和田中独自のこの教科は、「世の中のすべてが教材」という考えのもと、身近なテーマを設定してそれに合わせた講師を外部から招いて討論などを行う授業です。また、授業には地域の大人も参加することができます。「よのなか科」の授業の特徴について、藤原校長は、次の3点を特徴として挙げています。

(1) ロールプレイやシミュレーションなどゲーム的手法によって子どもたちの主体的な学びを創造する。
(2) 大人も授業に参加することで、ともに学び合う力を身につける。
(3) カリキュラムの目的に沿ったゲストを迎え、生徒の思考回路を刺激し、ときに通常の授業では得られない種類の知的な感動を与える。
                       (「社会教育」2007年5月号より)

(1)については、参加型学習の手法を効果的に取り入れることで、受け身ではない能動的な学びの場を創り出すことができます。「先生が持っている正解にたどり着くこと」だけではない、自分で考える学習が保障されています。それは、言い換えれば、「考え方を学ぶ学習の場」と言ってもいいでしょう。

最近は、いつでも授業参観OK、しかも保護者だけでなく地域の方もどうぞ、という学校が増えていますが、(2)は、単なる「授業参観」ではありません。授業に大人が「参加」するのです。しかも、それは、「親」として、「地域住民」としてではなく、「世の中を知っている大人」としての参加なのだと思います。もちろん、子どもに対して「上」から指導したり、ものを教えたりという立場ではなく、ここでは、子どもと対等な、同じ目線の「学習者」としての立ち位置が求められているのでしょう。つまり、「大人」にとっての学習の場でもあります。「ともに学び合う」というところにそれが表れていますね。

(3)については、外部から講師を招く、というスタイルだけを見ると、ゲストティーチャーとか学校支援ボランティアといった形で、今やほとんどの学校で行われています。ただ、それは、外部の人が一方的に「講演」をするものだったり、特別な技能や技術を体験させたり指導したりといった形が多い。いわゆる一過性のイベントになっている場合が多いのです。たぶん、よのなか科の授業では、参加型学習の手法を巧みに使いながら、「次」につながるような授業が行われているのではないのでしょうか。

「よのなか科」には、「一人前の大人に育てる」という明確なポリシーがあります。それはまさにキャリア教育のめざすところと一致します。民間出身の校長だからできること、と言われればそれまでですが、民間出身でない校長(あるいは教員)だって、その気になれば似たような取組はできるのではないでしょうか。実際、キャリア教育を学校経営の根幹に据えて、「教科」を含めて全教育活動をキャリア教育ととらえているある小学校の校長は、キャリア教育を、「やらなければ」というレベルでとらえているのではない、と断言しています。受け身で取り組むのは簡単ですが、子どもたちを、将来世の中の役に立つ人間として育てていこうと本気で思ったら、よのなか科のような授業がもっと増えていってもいいはずですね。

「成長」というのは、「大人に近づく」ことと言ってもいいでしょう。職場社会、大人社会、市民社会を、お客さん的に体験的に学ぶだけでなく、実際にそうした社会を生きている大人たちと、実際に触れあい、議論することでこそ、子どもたちは本当の意味で「成長」できるのです。

 


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