カクレマショウ

やっぴBLOG

「闇の世界」の悲劇を防ぐために

2007-10-12 | ■テレビ/メディア
今朝(2007年10月12日付け)の各紙朝刊の一面コラム。読売の「編集手帳」、毎日の「余録」、日経の「春秋」、産経の「産経抄」がそろって取り上げていたのが、インターネットの「自殺サイト」が引き起こした川崎の殺人事件でした。

いずれも、この事件に触れる前に、古今の書物や物語の様々な逸話を引いてきています。

読売は、森村誠一の「偽造の太陽」という長編小説。強盗をするために見ず知らずの男を引き入れるために、あの手この手を使って苦労する。「未知の他人同士が犯罪で結びつくにはこれだけの手間暇を要した。今は…」という感じでこの事件につなげる。表現の自由を守ることと有害情報の取り締まりとの間にいかに「接合面」を見つけてこのような犯罪を防ぐかが大切とした上で、犯罪によって満たされる欲望を意味するこの小説の題名から、「インターネットを“偽造工場”にしてはならない」と締めています。

毎日はギリシャ神話の死に神タナトスを引き合いに出し、「この男は人の心の奥底に潜む暗い衝動を操る死の神を気取ったのだろうか」と、犯人の男の行動とネット社会の「闇空間」を非難する。「金銭目当てのあさましい死に神も大手をふってまかり通るのがネットの仮想空間だ」としています。

日経の春秋子が引くのは、石田衣良の「池袋ウェストゲートパーク」。小説に登場する「反自殺クラブ」が自殺志願者を募るサイトを追いつめる若者チームであることから、「メンバーが知ったら、これは決して許さないだろう」というつなげ方。「果てしなく広がる闇の世界を前に、立ちつくしている社会がもどかしい」。

産経は、「必殺仕掛人」の原作、池波正太郎の藤枝梅安シリーズを取り上げる。この世に生きていてはいけない奴を、いくばくかの報酬と引き替えに殺す稼業。もちろん創作ですが、「現実の闇の世界では、こんなややこしい仕組みは不要のようだ」として、掲示板サイトを使った依頼殺人に触れていく。産経は、その「仕組み」より、裏表があったという犯人の人間像を取り上げ、「人間は、よいことをしながら悪いことをし、悪いことをしながらよいことをしている」と語った池波正太郎の「洞察力に改めて舌を巻く」と結んでいます。

それぞれに読んでいて納得するのですが、いずれにしても、インターネットの「陰」の部分を象徴するような今回の事件は、ネットの登場以前にはあり得なかった新しいタイプの事件なだけに、有効な打つ手を持てないでいることに対する「もどかしさ」を感じます。大人でさえ、インターネットの持つ便利さと恐ろしさに翻弄されるのですから、子どもの場合、何をかいわんや。情報リテラシーというより、もっと直接的な「ネット・リテラシー」の教育に、それこそ「社会総ぐるみ」で取り組まない限り、「闇の世界」は今後も跋扈し続けることでしょう。


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