カクレマショウ

やっぴBLOG

スリンカチュ!

2011-10-19 | ■美術/博物
スリンカチュ。ロンドンを舞台に活躍する写真家。

これって、「マン盆栽」(家元:パラダイス山元)の世界と基本的には一緒ですね。使っているフィギュアもプライザー社のものだし。ただ、異なるのは、マン盆栽が、いわば「閉じられた空間」であるのに対し、スリンカチュの作品は都市の見慣れた光景と対になっている、開かれた世界だということか。また、スリンカチュは写真家ですから、「写真」というフレームの中で「いかに見せるか」という点に最大の力点を置いているように思えます。遠近感や光の当て方に細心の注意を払って、ミニチュアの世界を超リアルに切り取って見せてくれる。上の写真なんか、そのへんの水たまりにミニチュアのボートを浮かべてフィギュアをあしらっただけなのですが、上のほうの写りこみは本物の建物。このあたりの見せ方はさすが写真家ですね。もちろん、題材やストーリーの作り方もとっても面白くて、その点はマン盆栽と同じです。



スリンカチュの写真集やサイトで紹介されている作品を見ると、クローズアップでミニチュアの世界を見せると同時に、その背景にある引いたアングルの写真も載せてくれています。そこで、はっと気づく。一粒で二度おいしいって、こういうことなんだ。引いた写真を見る度に、頭をがつんがつんとやられる快感。ポストに手紙を投函する老人のミニチュアがあって、ぐわっと引いて見ると、それがホンモノのポストの足元に展開するというシチュエーションでがつん。新聞を読む男のミニチュアがあって、引いて見ると、電車の中で新聞を読む男の肩越し、窓枠にちょこんとフィギュアが座って新聞を読んでいることが分かり、がつん。壁にアート落書きをしているミニチュアの若者がいて、引いて見ると、その壁には大きな(普通の大きさの)落書きがしてあることがわかって、またもやがつん!



それと、もう一つの面白さは、たまに、ミニチュアの世界に、私たちの世界が入り込んでいること。たとえば、私たちが使うイヤホンそのものを、ミニチュアの男が耳に当てて音楽聴いてたり。耳というよりは、頭全体で聴いてるぞ。あるいは、写真集の表紙にもなっている、怪物(実はハエ)からわが子を守ろうとする父親がいたり、私たちの食べるスナック菓子を、ミニチュアたちが二人がかりでせっせと運んでいたり。子どもが興味深そうに入っていこうとしているのが、マルボロの空き箱だったり。道に投げ捨てられたオレンジの皮をバンクにしてスケボーしてたり。



こうなると、まるでガリバーの世界です。私たちを、「巨人」の視点にいざなってくれるスリンカチュ。面白すぎ。

それにしても、何しろ、フィギュアの体長は2センチですから、街の片隅に置かれても、ヘタすると見逃してしまう。もしかしたら、実際にこういう「小人」たちが私たちの目を盗んで本当に生きているのかもしれないですよ。こんなふうに、人間たちのマネをして生活しているのかも。こりゃきっと、もう一つのパラレルワールドなんだ!

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3 コメント

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Unknown (おこあん)
2011-10-23 08:12:57
ミニチュアの世界、好きです。
リカちゃんハウスやシルバニアファミリーなんかに子どもの頃は憧れてました。
ここ数年、盆栽鑑賞も楽しめるようになりました。子どもの頃は木を見て何がおもしろいんだ?と思っていたのですが、ある時これって大樹のミニチュアだ!って気づいたときは感動しました。盆栽観ながらそこに小さい自分をおくと、ぐっと世界が広がるんですよね。鑑賞もとい妄想の世界ですね。マン盆栽は本当に人おいちゃってるのがおもしろいです。
少し前に噂になった「緑色の小さいおっさん」も本当にいるかもしれませんねwww
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盆栽 (やっぴ)
2011-10-25 00:01:10
おこあんさん
そうそう、盆栽自体がミニチュアなんですね。そこにフィギュアをあしらうところがマン盆栽の面白さ、楽しさ、可笑しさ。

あれ?緑色の小さいおっさん…ってなんでしたっけね?
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Unknown (おこあん)
2011-10-25 04:19:24
小さいおっさん(おじさん)、去年、一昨年あたりTVで都市伝説的に流行ったものです。妖精?らしいです・・・
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