
1999年公開の映画ですが、最近ようやくDVDで見ました。監督のジョー・ジョンストンは、もともと「スター・ウォーズ」シリーズの特殊視覚効果を担当していた人。映画監督としては「ジュマンジ」があります。
原作は、映画の主人公でもあるホーマー・ヒッカムの「ロケット・ボーイズ」。映画の原題は"October Sky"ですが、実はこれ、原作のタイトル"Rocket Boys"のアナグラムになっているのですね!こりゃすごいや。邦題もなかなかいい。「オクトーバー・スカイ」でも「ロケット・ボーイズ」でもなくて本当によかったと思います。なんか別の映画になってしまいそうで。ともあれ、この映画、凝った映像もCGもどんでん返しもなく、とことん地味ですが、とてもいい。
1957年10月4日、ソ連はスプートニク1号の打ち上げに成功しました。人類初の人工衛星の誕生です。しかし、この記念すべき出来事は、米国に大きな衝撃をもたらします。冷戦下、ソ連と軍事力を競っていた米国は、人工衛星そのものというよりも、ソ連が宇宙空間まで人工衛星を打ち上げられるだけのロケットを持つことに大きなショックを受けます。いわゆる“スプートニク・ショック”です。
そして、ウエスト・ヴァージニアの小さな炭坑の町コールウッドに住む高校生、ホーマー・ヒッカム(ジェイク・ギレンホール)は、別の意味で“ショック”を受けます。星空をすり抜けるように横切っていくスプートニクの姿を見た彼は、たちまちその虜になってしまう。宇宙を飛ぶ物体。いつか自分もその中にいて宇宙を飛ぶことができたら。“物体”を宇宙空間に送り出すためにはロケットが必要。で、ホーマーは、さっそくロケット作りを始めるのです。
友だち2人と、物理学に長け、ただクラスではちょっと浮いているクエンティンも仲間に引き入れ、4人は日夜ロケット作りに精を出す。彼らは、高校生科学コンテストに自分たちのロケットを出品することを当面の目標とします。そして、ホーマーは、ロケットづくりが成功すれば、もしかしたらこの町から出て大学に進学できるかもしれないと考えるようになります。ロケットは、彼の人生を切り開く(かもしれない)重要なツールとなっていくのです。そんな彼らを暖かく見守るのは、担任のミス・ライリー(ローラ・ダーン)。
彼らの父親の多くは炭坑で働いています。ホーマーの父(クリス・クーパー)は監督として一目置かれていますが、もはや時代は石炭の時代ではありません。どの家庭も生活は苦しく、町はどう見ても衰退の方向に向かっています。父は、アメフトの選手として奨学金をもらって大学に進む予定の長男を誇りに思い、次男であるホーマーには自分の後継者として炭坑で働いてもらいたいと考えています。ところが、そのホーマーが、ロケットづくりなんかにうつつを抜かしていることを、父親は快く思っていません。ホーマーたちは、町から13kmほど離れた空き地に「基地」を設け、実験を続けます。噂を聞きつけた学校の友人や町の人たちが実験を見に来るようになっても、父親は一度も見に行こうとはしないのです。
そんな折、炭坑で事故が起こり、父は大けがを負ってしまいます。ホーマーは、家族のためにロケットづくりをやめ、高校もやめて炭坑で働くことを決意します。ようやく目が覚めた息子を見て喜びを隠しきれない父。しかも炭坑で働かせてみたら、これがけっこう父親譲りでなかなかやる。仲間の評判もすぶるいいときている。ホーマーは、ついこの前までロケットを打ち上げていた空をうつろに見上げながら、リフトに乗って地下の坑道へと運ばれていくのでした。
しかし、ホーマーのロケット熱は、決して冷めたわけではありませんでした。再びロケットに目を向けさせたのは、不治の病に冒されたミス・ライリーでした。「自分自身の内なる声に耳を傾けなさい」と語りかけるライリー先生。その一言で、ホーマーは、自分の進むべき道が炭坑ではなく、「ロケット」であることをはっきりと悟るのです。
その後に描かれる、山火事騒動の濡れ衣の証明、そして全米高校生科学コンテストでの優勝というわくわくするような展開は、もしかしたら「付け足し」なのかもしれません。ホーマーが自分自身で「志」を固めた時点でこの映画が描きたかったことは言い尽くされているのではないでしょうか。自分の一番好きなことに生涯を賭けていく決意をしたのですから。そして、それを家族や地域の人たちが応援してくれるのですから。いや、そういう意味では、もう一つ語らなければならないことが残っていますね。父親との「和解」です。
話によれば、原作ではそれほど感動的な「和解」があったわけではないようですが、映画では、優勝したロケットを町の人にお披露目するラストシーンで、じわりとさせるエピソードが待っています。10月の空に高くどこまでも上っていくロケットは、それだけでも実に感動的ですが、父親役のクリス・クーパーの表情が、なんともいえず味わいがあります。
実在のホーマーは、その後NASAの技術者となったのだそうです。夢を志という形にし、それを実現した一人。それにしても、米国の高校生って、やけに大人びて見えます。それだけ手本とできるような大人が周りに多いということなのでしょうか。ちょっとくやしいですね。
「遠い空の向こうに」>>Amazon.co.jp
原作は、映画の主人公でもあるホーマー・ヒッカムの「ロケット・ボーイズ」。映画の原題は"October Sky"ですが、実はこれ、原作のタイトル"Rocket Boys"のアナグラムになっているのですね!こりゃすごいや。邦題もなかなかいい。「オクトーバー・スカイ」でも「ロケット・ボーイズ」でもなくて本当によかったと思います。なんか別の映画になってしまいそうで。ともあれ、この映画、凝った映像もCGもどんでん返しもなく、とことん地味ですが、とてもいい。
1957年10月4日、ソ連はスプートニク1号の打ち上げに成功しました。人類初の人工衛星の誕生です。しかし、この記念すべき出来事は、米国に大きな衝撃をもたらします。冷戦下、ソ連と軍事力を競っていた米国は、人工衛星そのものというよりも、ソ連が宇宙空間まで人工衛星を打ち上げられるだけのロケットを持つことに大きなショックを受けます。いわゆる“スプートニク・ショック”です。
そして、ウエスト・ヴァージニアの小さな炭坑の町コールウッドに住む高校生、ホーマー・ヒッカム(ジェイク・ギレンホール)は、別の意味で“ショック”を受けます。星空をすり抜けるように横切っていくスプートニクの姿を見た彼は、たちまちその虜になってしまう。宇宙を飛ぶ物体。いつか自分もその中にいて宇宙を飛ぶことができたら。“物体”を宇宙空間に送り出すためにはロケットが必要。で、ホーマーは、さっそくロケット作りを始めるのです。
友だち2人と、物理学に長け、ただクラスではちょっと浮いているクエンティンも仲間に引き入れ、4人は日夜ロケット作りに精を出す。彼らは、高校生科学コンテストに自分たちのロケットを出品することを当面の目標とします。そして、ホーマーは、ロケットづくりが成功すれば、もしかしたらこの町から出て大学に進学できるかもしれないと考えるようになります。ロケットは、彼の人生を切り開く(かもしれない)重要なツールとなっていくのです。そんな彼らを暖かく見守るのは、担任のミス・ライリー(ローラ・ダーン)。
彼らの父親の多くは炭坑で働いています。ホーマーの父(クリス・クーパー)は監督として一目置かれていますが、もはや時代は石炭の時代ではありません。どの家庭も生活は苦しく、町はどう見ても衰退の方向に向かっています。父は、アメフトの選手として奨学金をもらって大学に進む予定の長男を誇りに思い、次男であるホーマーには自分の後継者として炭坑で働いてもらいたいと考えています。ところが、そのホーマーが、ロケットづくりなんかにうつつを抜かしていることを、父親は快く思っていません。ホーマーたちは、町から13kmほど離れた空き地に「基地」を設け、実験を続けます。噂を聞きつけた学校の友人や町の人たちが実験を見に来るようになっても、父親は一度も見に行こうとはしないのです。
そんな折、炭坑で事故が起こり、父は大けがを負ってしまいます。ホーマーは、家族のためにロケットづくりをやめ、高校もやめて炭坑で働くことを決意します。ようやく目が覚めた息子を見て喜びを隠しきれない父。しかも炭坑で働かせてみたら、これがけっこう父親譲りでなかなかやる。仲間の評判もすぶるいいときている。ホーマーは、ついこの前までロケットを打ち上げていた空をうつろに見上げながら、リフトに乗って地下の坑道へと運ばれていくのでした。
しかし、ホーマーのロケット熱は、決して冷めたわけではありませんでした。再びロケットに目を向けさせたのは、不治の病に冒されたミス・ライリーでした。「自分自身の内なる声に耳を傾けなさい」と語りかけるライリー先生。その一言で、ホーマーは、自分の進むべき道が炭坑ではなく、「ロケット」であることをはっきりと悟るのです。
その後に描かれる、山火事騒動の濡れ衣の証明、そして全米高校生科学コンテストでの優勝というわくわくするような展開は、もしかしたら「付け足し」なのかもしれません。ホーマーが自分自身で「志」を固めた時点でこの映画が描きたかったことは言い尽くされているのではないでしょうか。自分の一番好きなことに生涯を賭けていく決意をしたのですから。そして、それを家族や地域の人たちが応援してくれるのですから。いや、そういう意味では、もう一つ語らなければならないことが残っていますね。父親との「和解」です。
話によれば、原作ではそれほど感動的な「和解」があったわけではないようですが、映画では、優勝したロケットを町の人にお披露目するラストシーンで、じわりとさせるエピソードが待っています。10月の空に高くどこまでも上っていくロケットは、それだけでも実に感動的ですが、父親役のクリス・クーパーの表情が、なんともいえず味わいがあります。
実在のホーマーは、その後NASAの技術者となったのだそうです。夢を志という形にし、それを実現した一人。それにしても、米国の高校生って、やけに大人びて見えます。それだけ手本とできるような大人が周りに多いということなのでしょうか。ちょっとくやしいですね。
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