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やっぴBLOG

住友化学三沢工場の「化学実験教室」

2008-10-15 | └キャリア教育
住友化学株式会社三沢工場は、家庭用殺虫剤や農薬などの原体(元になる有効成分)の生産を行っている工場です。ここで作られた原体が、各メーカーに送られて、たとえば、「蚊取り線香」とか「キンチョール」とか「ムシューダ」、「タンスにゴン」、「バルサン」といった商品に使われるというわけです。

工場を訪れてみると、その広大さにまず驚きます。東京ドーム20個分の広さだとか。でも、これでも全国各地の住友化学の工場の中では決して広い方ではないというから更にびっくり。金属製のパイプが縦横無尽に張り巡らされ、いかにも化学工場といった感じの工場が何棟も建てられていますが、生産はほとんどコンピュータで集中的に管理されているので、1つ1つの建物に1人くらいの従業員しかいないのだそうです。

「化学」といえば、先日、下村脩さんのノーベル化学賞の受賞が報じられました。「緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見とその応用」というのが受賞理由で、米国の2人の化学者との共同受賞でした。下村さん自身は、医学部出身ということで、「化学賞」には驚いたというコメントもありました。素人目には、化学は基礎分野で、医学はその成果を生かした応用という感じもしますが、生命科学という観点からみれば、非常に境界が曖昧なのでしょうね。いずれにしても、人体や健康に関わる領域ですので、これからの研究成果には大いに期待したいところです。そのためには、医学の入り口あるいはベースとなる「化学の世界」に子どもたちに興味を持ってもらうことも必要で…。

というわけで、住友化学三沢工場で、小学生向けの「化学実験教室」を行っているという情報を聞きつけて、さっそく見に行ってみました。昨年度、近くにある淋代小学校の3年生を対象に、工場見学の中で初めて実施したのだそうで、今回は2回目ということでした。工場見学自体は、年間30校ほどが訪れているということでしたが、それだけでは面白くないということでしょうか、子どもたちの「化学」への関心を高めるためには、プロの手による本物の実験を見せるのが一番だということかもしれません。

淋代小学校は、3・4年生が複式学級で、今回はそのうち3年生7人だけの参加でした。社会の授業の一環で、消防署と化学工場を見学するという行程です。工場見学の前に、実験教室が行われました。

最初に、「勝手にさわらない」とか「保護具を身につける」などいくつかの注意事項を告げ、まずは「液体窒素を使った冷凍実験」から開始。「先生」(社員の方)が、パワポで窒素について簡単に説明したかと思うと、いきなりボンベを横に傾けて、液体窒素を噴き出させる! 白い煙がもくもく床を這っては消えていく! 子どもたちから思わず歓声があがりました。

安全のため、子どもたちには簡易ゴーグルと軍手を着用させて、実験台の近くに呼び寄せる。お次は、液体窒素でバラの花を凍らせてみます。一瞬にして凍りつく花びら。ちょうど人数分の花があったので、一人一人交代で花びらに触り、パラパラと砕け散る感触を味わう。



それから、ふくらませた細長い風船を取り出し、それも液体窒素に浸けていく。さて、どうなる? 割れる?? 子どもたちの目がらんらんと輝いています。液体窒素に浸けているとしぼんでしまった風船が、外に取り出すと、再びふくらみ始める。不思議だね。なぜだろうね。3年生にはちょっと難しいかもしれませんね。液体窒素実験の最後は、バナナを凍らせる。これは前にテレビCMでも見たことがありますが、実際にかちんこちんに固まったバナナを見るのは私も初めてでした。本当に釘が打てるのです! 子どもたちも、わーわー言いながら喜んで見ていました。

次に、ヨウ素を使った実験がいくつか続き、最後に、これも不思議な振動反応という実験。正直言って、ちょっと説明が足りないかなあと思いました。大人でもよくわからないままどんどん実験が進んでいくので、子どもたちにはもっとちんぷんかんぷんだったかも。要するに、ヨウ素とデンプンの化学反応で色が変わっていくという実験なのですが、「先生」もまだ子どもたちの前で実験してみせるのは2回目ということですので、徐々に要領をつかんでいくのだろうと思います。



今回は会社内での実験教室でしたが、こういう「授業」が学校で行われてもいいわけです。たとえば、理科の授業で、関連する単元でこういう実験をしてみせたら、子どもたちの理解も何倍にも深まることでしょう。学校で実施するためには、安全面などいくつかクリアしなければならない問題はありますが、ぜひ学校での出前授業も実現してほしいと思いました。

住友化学がこういう取組をしているのは、三沢という場所に立地している以上、地元の皆さんに「住友の工場があってよかった」と感じてほしいということ、そして、もちろん、子どもたちに「化学のおもしろさ」を少しでも伝えられたらという思いがあるからだということでした。

それにしても、大人が、「子どもにもわかりやすく」物事を説明するというのは本当にむずかしいものだとつくづく感じます。子どもがわかる、ということは大人にもわかってもらえるということです。子どもにはどうせわからないから、ではなくて、社会のすべてのことを子どもにもわかるように伝える努力を大人はしなけりゃいかんなあと思いました。


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