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『PLUTO』覚書その10─「僕を殺したのは… あなた…?」

2007-11-13 | └『PLUTO』覚書
先週の「プロフェッショナル 仕事の流儀」は、漫画編集者・原作者の長崎尚志さんでした。『PLUTO』の編集も担当している方というのでこれは見なくてはと思っていたのに、不覚にも見逃してしまい、昨夜の再放送をビデオに録って、ようやく1週間遅れで見ることができました。そういえば、今年1月の浦沢直樹氏の回も見逃してしまっていて、どうもいけませんな。

雑誌の編集者がここまで深く漫画づくりに関わっているとは、正直驚きました。コマわりから人物の表情まで、けっこう原稿に手を入れるのですね。しかし、長崎さんのスタンスははっきりしていて、最終的に、「考える」のはあくまで漫画家自身であり、自分は意見を言うだけ、考える方向性を示しているだけだと言う。そのへんのスタンスが徹底しているからこそ、漫画家も長崎さんの意見に耳を傾けることができるんだなと思いました。いくらいい方向性を示しても、決して長崎さんの名前がオモテに出ることはないわけですが、彼が漫画家と同じくらい、あるいは漫画家以上に漫画を愛していることは伝わってきました。

浦沢氏とは、デビュー当時から20年以上ものつきあいなのだとか。今回の番組で紹介されていた、デビュー作『パイナップル・アーミー』をめぐる秘話、なかなかいいエピソードでした。やはり、師と仰ぐ人がいて、現在の長崎さんのプロフェッショナルな仕事があるということか。

『PLUTO』は、小学館の「ビッグコミックオリジナル」に連載されています。漫画雑誌を定期的に買う習慣のない私にとっては単行本が出るのを待つしかなく、第5巻を心待ちにしているのですが、なんと、ついに、この11月30日に発売になるという朗報が入りました! ついては、この覚書も、まだ4巻最後までたどり着いていないので、さっそく取りかかりたいと…。

今回は、衝撃的な事件の起こった日本を離れ、再びドイツに目を移します。

ユーロポールのロボット刑事・ゲジヒトは、彼を「兄のかたき」と思い込むアドルフ・ハースによって命を狙われています(第2巻)。しかし、ハースにはなかなか引き金を引くことができない。彼の属する反ロボット団体の幹部は、ゲジヒトは世論の手によって殺されなければならないと考え、個人的な恨みでゲジヒトをつけ狙うハースを殺害しようとします。団長は彼の車に爆弾を仕掛けますが、ハースは危機一髪で難を逃れます。

ちょうどアトムが死んだ頃、ゲジヒトは悪夢にうなされていました。彼は、「いつもの夢」とは違っていたことに違和感を感じ、彼のメンテナンスを担当するホフマン博士のもとを訪れる。ゲジヒトの話を聞いたホフマンは、「彼には莫大な金がかかっているんだ」という、上司の意味深な言葉をふと思い出す。一抹の不安を覚えながらも、ホフマンは、休暇旅行で日本に行くというゲジヒト夫妻を見送る。

空港で、ゲジヒトはアトムの死を伝えるニュースを知り、夕べの夢が、アトムの死と関係していることを悟ると、封印していた削除ボックスを開ける。

そこには、アトムの声が記録されていました。

「ゲジヒトさん… あなたとプルートゥは…同じ… 僕を殺したのは… あなた…?」

衝撃を受けたゲジヒトは、その場に倒れ込んでしまう。

一方、殺されそうになったハースは警察の事情聴取を受けますが、彼の車から小型ミサイル砲の残骸が見つかったこと、そして、彼の兄の死をめぐる秘密を握っているらしい警察は、彼に表向きの「護衛」をつけて見張ることにします。その護衛に選ばれたのは、誰あろう、ゲジヒトだったのです。

憎むべきゲジヒトがすぐ近くにいるのに、殺すための武器を持たない。悔しさのあまり、警察が自分のことを疑っていることなんかわかっているんだと息巻くハース。調べたいなら調べてみればいいというハースに対して、ゲジヒトはこれ幸いと彼のコンピュータを調べることになります。そこでゲジヒトは、ハースが第39次中央アジア紛争後にペルシアに行っていることを知ります。ハースの貿易会社は、機密保全Aクラスの仕事を手がけていたことも。さらにハースは、彼の会社が手がけていたというペルシアの刑務所の監視カメラの映像をゲジヒトに見せる。そこに映っていたのは、旧ペルシア王国のダリウス14世だった…。しかも、彼は、これまで抹殺された科学者も含め、ボラー調査団のメンバーの名前をつぶやいているではないか! 「ランケ…オチャノミズ…ハワード…タザキ…」そして、ゲジヒトは思わず耳を疑う。「ホフマン」という名前が彼の口から出てきたからです…。

第4巻の最後、事態は再び急展開。こうなると、ますます第5巻が待ち遠しい。なんか、「プロフェッショナル」の番組では、ゲジヒトの奥さんが泣いてるシーンがちらっと出てきてましたけど…。なんと、これまでずっと主人公だと思っていたゲジヒトまでも死んでしまうのか!?…。

読者をこうもわくわくさせる物語、久しぶりです。これも長崎さんの力が加わってのことなのか。改めてすごい漫画だと思う。


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