「兄のかたき」、ゲジヒトを殺すため、ハースは、闇市場で製造も販売も禁止されている小型クラスター砲を買う。ハースがなぜそれほどまでにロボットを憎むようになったのか。その理由が、彼自身の少年時代にさかのぼって語られます。
彼の父は、「ロボット・リストラ」の犠牲者でした。つまり、ロボットの生産効率の高さのせいで、仕事を奪われた失業者。彼と兄は、収入のない父の元で育てられました。食べる物もなく、街をさまよう3人。二人は、街の子どもたちが遊ぶサッカーボールが欲しくてたまりません。父はそんな二人のためにどこからかボールを手に入れてきてくれます。ところが、そこに現れた一体のロボットが父の襟首をつかみ、「店からボールを盗んだのはこの人です」と繰り返す。やってきた警官に父は連行され、帰ってきてからすっかり酒浸りとなり、悲劇的な最期を迎えるのでした。
兄は、ロボットを異常に憎むようになり、弟ハースには「しっかり勉強してロボットのいない世界を創れ」とつぶやく。弟の勉強のためなら盗みをすることもはばからない。ハースにとって、そんな兄を殺したロボットは憎んでも憎みきれないほどなのです。
さて、この間、「史上最大のロボット」がもう一人新たに登場します。太陽の光を利用した光子エネルギーロボット、エプシロン。手塚作品では、オーストラリアの保育園で働く保父ロボットです。海底に沈んだアトムをプルートゥとともに救いに行ったエプシロンは、策略を巡らせて、プルートゥを海底の泥の中に沈めてしまおうとする。ところが、卑怯な自分への負い目もあって、プルートゥを結局は助けてしまう。しかし、最後はそれが仇になって、動力源である太陽光の得られない闇夜にやってきたプルートゥに敗れ去ってしまう。バラバラになったエプシロンの両手には、彼が助けようとした子どもがしっかり抱かれていた…。手塚作品らしい、残酷な中にもヒューマニズムあふれる場面です。
浦沢作品では、エプシロンは、長髪をなびかせる女性的な姿で描かれています。強大なエネルギーを持つロボットでありながら、「義がない戦争」という理由で第39次中東紛争への徴兵を拒否したエプシロンは、戦争孤児を引き取って育てている。「敵」との戦いをやめるよう告げるために、ギリシアのヘラクレスのもとにやってきた彼は、こんなことを言います。
「私は思うんです。人間とロボットは近づきつつある。」
「近づきすぎると…よくないことが起こる。」
「これは最初の兆し…。憎しみの連鎖を断ち切らなければならない!」
クラスター砲を手にゲジヒトを尾行していたハースは、森の中で、ゲジヒトの前に現れたエプシロンを目にします。エプシロンは、ゲジヒトにも忠告を与えにやってきたのです。ヘラクレスに「敵」との決闘をやめさせるよう。このままではまた戦争が始まると。エプシロンは、ゲジヒトにある子どもの話をします。住んでいた村が一瞬のうちに消失した経験を持つ子ども。彼の脳裏には、「砂漠に向かって動いている巨大な何か」が焼き付いています。そして、それ以来、彼が発する単語はたった一つだと言う。その時、その物体が発していた言葉、「ボラー…」。
またも登場する謎の言葉。「ボラー」とはいったい何なのか? そして、エプシロンが恐れるものとは…? まるで少女漫画の美少年のような姿のエプシロン、力強さとは程遠いイメージの彼が言う言葉は、どこか気になります。この物語の大きなキーを握っているのではないかと思わせます。
第3巻の最後に、舞台は再び日本に戻ってきます。そう、アトムとウランです。二人をめぐる「事件」の続きはまた次回に…。
彼の父は、「ロボット・リストラ」の犠牲者でした。つまり、ロボットの生産効率の高さのせいで、仕事を奪われた失業者。彼と兄は、収入のない父の元で育てられました。食べる物もなく、街をさまよう3人。二人は、街の子どもたちが遊ぶサッカーボールが欲しくてたまりません。父はそんな二人のためにどこからかボールを手に入れてきてくれます。ところが、そこに現れた一体のロボットが父の襟首をつかみ、「店からボールを盗んだのはこの人です」と繰り返す。やってきた警官に父は連行され、帰ってきてからすっかり酒浸りとなり、悲劇的な最期を迎えるのでした。
兄は、ロボットを異常に憎むようになり、弟ハースには「しっかり勉強してロボットのいない世界を創れ」とつぶやく。弟の勉強のためなら盗みをすることもはばからない。ハースにとって、そんな兄を殺したロボットは憎んでも憎みきれないほどなのです。
さて、この間、「史上最大のロボット」がもう一人新たに登場します。太陽の光を利用した光子エネルギーロボット、エプシロン。手塚作品では、オーストラリアの保育園で働く保父ロボットです。海底に沈んだアトムをプルートゥとともに救いに行ったエプシロンは、策略を巡らせて、プルートゥを海底の泥の中に沈めてしまおうとする。ところが、卑怯な自分への負い目もあって、プルートゥを結局は助けてしまう。しかし、最後はそれが仇になって、動力源である太陽光の得られない闇夜にやってきたプルートゥに敗れ去ってしまう。バラバラになったエプシロンの両手には、彼が助けようとした子どもがしっかり抱かれていた…。手塚作品らしい、残酷な中にもヒューマニズムあふれる場面です。
浦沢作品では、エプシロンは、長髪をなびかせる女性的な姿で描かれています。強大なエネルギーを持つロボットでありながら、「義がない戦争」という理由で第39次中東紛争への徴兵を拒否したエプシロンは、戦争孤児を引き取って育てている。「敵」との戦いをやめるよう告げるために、ギリシアのヘラクレスのもとにやってきた彼は、こんなことを言います。
「私は思うんです。人間とロボットは近づきつつある。」
「近づきすぎると…よくないことが起こる。」
「これは最初の兆し…。憎しみの連鎖を断ち切らなければならない!」
クラスター砲を手にゲジヒトを尾行していたハースは、森の中で、ゲジヒトの前に現れたエプシロンを目にします。エプシロンは、ゲジヒトにも忠告を与えにやってきたのです。ヘラクレスに「敵」との決闘をやめさせるよう。このままではまた戦争が始まると。エプシロンは、ゲジヒトにある子どもの話をします。住んでいた村が一瞬のうちに消失した経験を持つ子ども。彼の脳裏には、「砂漠に向かって動いている巨大な何か」が焼き付いています。そして、それ以来、彼が発する単語はたった一つだと言う。その時、その物体が発していた言葉、「ボラー…」。
またも登場する謎の言葉。「ボラー」とはいったい何なのか? そして、エプシロンが恐れるものとは…? まるで少女漫画の美少年のような姿のエプシロン、力強さとは程遠いイメージの彼が言う言葉は、どこか気になります。この物語の大きなキーを握っているのではないかと思わせます。
第3巻の最後に、舞台は再び日本に戻ってきます。そう、アトムとウランです。二人をめぐる「事件」の続きはまた次回に…。
ぼくも、浦沢さんの「PIUTO」
読みました。
エプシロンが言った言葉って
意味深なものが多いような
気がします。
久しぶりに「PLUTO」のことを思い出しました。覚書も途中で止まってました。ぜひ完結させたいと思います。「ビリーバット」も読んだので、そっちの話も書きたいのですが、まずは「PLUTO」でした。
ありがとうございました。