カクレマショウ

やっぴBLOG

体で覚えるだけでは通用しない仕事もある。

2007-12-06 | └キャリア教育
NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」、今週の放送は「仕事は体で覚えるな~文化財修理技術者・鈴木裕」。

文化財の中でも、「和紙」に墨で書かれた古文書のたぐいを専門に扱う修復師。和紙ってそもそも保存には向かない。シワ、よじれ、破れ、虫食いによる穴…。それらを修復し、元の姿にするためには、「紙」の性質を知り尽くしていなければならないということなのですね。外科医が使う顕微鏡まで駆使して、何百年も前に漉(す)かれた紙の特徴を探る。そして、同じ漉き方で作られた紙を修復に使う。もしどうしてもマッチする紙がなければ、自分で漉く!

まさか、修復師が自分で紙まで漉くとは思わなかったので、ここのところは本当に驚きました。なんという情熱でしょうか。まず、和紙を漉く道具から作ったというのですから、その徹底ぶりには敬服します。プロフェッショナルと呼ばれる人たちは、そのあたりの徹底ぶりが凡人とは違うんだよなとつくづく思いました。

世界にたった一つしかない文化財を相手にするだけに、仕事場に漂う緊張感はただものではない。さぞかし、「熟練」がモノを言うのだろうなと思っていると、鈴木さんの口からは意外な言葉。「仕事は体で覚えるな」…。こうした熟練したワザが求められる仕事では、さぞかし長年の経験に培われた勘みたいなものがモノをいうんだろうなと思っていましたが、それだけではないらしい。もちろん体で覚え込んだワザがベースにあってこそなのでしょうが、やはりたった一つの文化財を相手にする仕事ならではですね。前に使った方法が今回も通用するとは限らない。常に新しい方法が必要とされる世界。まったく関係ない分野ですが、同じ「鈴木」さんのシアトル・マリナーズ、イチロー選手を思い出しました。彼も確か、1本1本のヒットはみんな違う、といったようなことを話していました。

丹念に修復を重ねる。そうして文化財を後世に伝えていく。いい仕事ですね。

僭越ながら、この仕事って、「自分の仕事」として考えてもちょっと興味あるかも…とも思いました。でも、こんな仕事があるなんて、子どもの頃はまったく思いもつかなかったもんなあ。何度も言いますが、この番組は高校生や中学生にこそ見てもらいたい。仕事に情熱を傾けられる大人がいるということ。そういう大人によって社会が成り立っているのだということ。そして、情熱を傾けられる仕事がこんなにあるということ。そんなことがこの番組から学べます。


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2 コメント

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ケース・バイ・ケースの達人の言でしょうか。 (wata-ken)
2008-02-06 22:23:46
初めまして。あいにく、テレビの方は見ていませんでしたが、「前に使った方法が今回も通用するとは限らない。」、それなのに「熟練」と呼ばれる達人がいて、一見矛盾する方法で仕事を成立させている、という考え方に、思うところあってやって来ました。
それは、塩野七生氏のローマ人の物語によく書かれていることを連想したためです。
 「ローマ人は、ケース・バイ・ケースの達人であった。」「ローマ人ほどマニュアル完備と実施、改訂を徹底した人達はいない。」の記述です。
 おそらく、動かし難い基本は何か、を見据えてからはっきりマニュアル化し、「手と頭=多分、体の意味」に余裕を持たせてから、マニュアル外の問題に対処するようにしろ、ということと考えます。
 鈴木さんの様な人が居て、こんな番組が放映されることは元気付けられることではあります。しかし、私が知っている限りの、様々な職場では、人切りの連続、しかも40~50歳代の、他人に仕事を教えられる人が居なくなって、現場は山本七平氏のいう「急ぐ、では無く、慌てている」状況が続いて「忙しい人はいつまでも忙しく、仕事が無い人は無いままにそのままクビ:教えられないのだから、可能性もヘッタクレも在ったものじゃない:」ことになり、労働環境はますます歪になっている所がほとんどです。 
 人は誰でも始めから鈴木さんの様な熟練者であるわけではなく、またなれるわけでもありません。また、番組を見ていないのでこの点はなんともいえないのですが、製作意図が「この国の職場復興の烽火を上げる」ことにあったのならば、「凡百ではあっても、粘り抜いて目標を達成か、近付いた人々」という例を挙げた方が良かったのではないかなあ、と思います(もっともニュースにはならないでしょうけど)。
 とはいえ、「作業の標準化」を標榜する割りには、マニュアル作成、改訂など一切せず、現場には「そんな暇、金なんか無いんだ、体で仕事を覚えろ」とクビをちらつかせて仕事をさせる今の正規、派遣を問わない労働環境に心底怒りを覚えながら仕事をしている私にとっては、「よか言葉じゃなあ。」と思える一言でした。…長文すみませんでした。
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基本と創造 (やっぴ)
2008-02-08 00:12:19
wata-kenさん

コメントありがとうございました。

やっぱり、何事も「基本の上に創造性」ではないかと思います。マニュアルは確かに必要ですが、それに縛られては創造的な仕事はできませんしね。そのへんの折り合いの付け方が大事なところかと思っています。

この番組で取り上げられる人たちは、みんなそういう折り合いの付け方がうまい人たちだなと思います。
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