カクレマショウ

やっぴBLOG

高校生が挑戦するハイテク農業

2008-07-27 | └キャリア教育
青森県立柏木農業高等学校では、県と連携して、様々なハイテク技術を活用した新たな農業技術の開発・研究に取り組んでいます。昨年度から2ヶ年計画の事業(「元気あおもり柏農発ハイテク農業プロジェクト事業」)ですが、先日、その成果を地域の皆さんに披露する一般公開デーが行われました。

何といっても一番見たかったのは、「閉鎖型野菜工場」。そこで「きょうしつ野菜」が作られていると言う。つまり、普通の教室(空き教室)が、「野菜工場」に変身しているのです。教室が「教室」でなくなるのは、文化祭の模擬店の時くらいだと思っていましたが、ここでは年中、教室が野菜畑。

中に入ってみると、天井から窓から壁からすべて銀色のアルミホイルで覆われています。その下には、厚さ5cmの断熱材が敷かれているそうで、完全に外光が遮断されている。室内の温度はエアコンによって30℃に保たれており、これで夏の暑さ、冬の寒さがシャットアウトできるわけです。「閉鎖型」という意味がよくわかります。

教室には、腰の高さくらいの棚が縦に3列並んでいます。棚の下をのぞき込むと、生徒用の机が使われていました。わりと粒の大きめの砂が敷き詰められたベッドに、サラダ菜やリーフレタス、ミニトマト、セロリなどの野菜が整然と植えられています。





天井から黄色い光を放っているのは、高圧ナトリウムランプとのことでした。一部には、青と赤のLED(発光ダイオード)も使われていました。これらの人工的な光が太陽光の代わりに作物の光合成を促しているのです。外部から遮断されているので、農薬や殺菌剤は一切使う必要がない。肥料は、タンクから半自動的に適量が砂のベッドにしみこむようになっています。水洗トイレの原理を応用しているのだとか。レタスやミニトマトの試食もしてみましたが、外で育てたのと同じくらい、ちゃんとした味がしました。

県内では、同様の屋内野菜栽培システムとして、建設会社による取組(野菜テラス)がありますが、安定した作物の供給という意味では、こうした方法も必要なんだろうなと思いました。

近未来的な「野菜工場」をあとにして外に出てみると、温室でもLEDを利用した「四季獲りイチゴ」の栽培が行われていました。LEDの電力は、太陽光発電でまかなっています。夏場はイチゴの生産量が落ちて価格が高騰するため、夏場の安定した出荷をめざしての取組だとか。ここではもう一つ画期的な試みが行われていました。温室の横に、シートに覆われた巨大な「雪山」があって、そこから溶け出してくる4℃前後の冷水をビニールハウス内に流して冷熱としているのです。冬の間に積み上げた雪山は、10月ぐらいまで持つのだと生徒が教えてくれました。





この日は、担当する生徒たちが各所に控えていて、訪れた農家の方々などのお客さんを案内したり質問に答えたりしていました。ズボンの腰履きどころか、「太もも履き」している生徒もいて、思わず苦笑いしてしまいましたが、こういう取組を高校生たちが楽しんでいることがとてもよくわかりました。これからの農業には、こうしたハイテク技術を駆使することも求められていくのでしょう。卒業後に実際に農業に就く生徒がどのくらいいるのか尋ねるのを忘れましたが、もし就農したならば、学校でのこういう取組をベースにしながら、また新たな技術開発をしていくんだろうなと思いました。

現在県教委が提案している高校の「再編」計画をめぐっては、様々な住民の動きがありますが、ある工業高校の廃校案に対して、どうせなら工業、農業、商業高校のそれぞれの特色を生かした「産業高校」の設立を、という意見がようやく表に出てきているようです。柏木農業高校の取組を見ても明らかなように、もはや「農業」と「工業」はドッキングしていくのが当たり前だし、さらには「農業経営」に関する知識やIT活用能力も、よりいっそう求められることでしょう。将来の人材育成に向けては、「産業高校」こそがその鍵を握っているのではと思いますね。


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2 コメント

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Unknown (鈴木輝一)
2008-07-30 19:47:46
こちらは馬路村大好き・鈴木輝一です。紀州の農業高校が作った「南高梅」の成功は、今は昔。バイオ技術等があっても刮目する商品等を高校が開発成功したという話を聞いたことがない。生徒の幼児化、保護者の過保護ともに責任がある。柏木高校、見学に行きたいです。テレビで見たことあるが、この眼で見たい。
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産学農 (やっぴ)
2008-08-02 23:13:26
鈴木さん

「南高梅」は、全国に名をはせる「商品名」になった先駆的な事例ですが、確かにそれに続くヒットがないかもしれませんね。
この日は、農家の方がたくさん見学に来ていました。高校生のアイディアや研究成果を実際に商品化していくためには、「産学農」の連携と、そのためのきちんとした組織も必要ですね。
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