夜の職場はサラリーマンたちであふれかえる。

会社は景気が悪くなると、人員削減に走る。まして、人員増など夢のまた夢の話となる。だから、決められた仕事を限られた人達でこなさなければならなくなるのである。そして、それが進むと、一人のサラリーマンが一人に課せられた仕事を一人でこなさなければならなくなる。これが通常化すると、私がサラリーマン時代がそうだったのだが、多くの人が恐ろしいほどの残業を繰り返すことになる。会社の規則によれば、十分な休暇も取得できるはずなのだが、実際には休むどころではない。他人から責任感の強い男だと思われたい野心もあろうが、残業を繰り返す理由は大雑把に言って、二つある。ひとつは人間が弱くなったということだ。自分の畑を荒らされたくないという思いだ。下手をすれば、自分のミス、あるいは改善余地までも指摘されるのを恐れて、仕事を抱え込む。二つ目は他人に仕事を代わってもらうシステムがないことだ。だから、残業を減らすには仕事の内容を説明しなければならないのだが、これが実にめんどうくさい。同僚も自分と同じように忙しそうに見える。だから、こんなサラリーマンたちが集まって、残業が日常茶飯事となる。誰も文句を言わなくなる。当たり前のように繰り返される。だから、夜の職場は残業をするサラリーマンたちであふれかえる。そして、ますます仕事の質は低下し、さらに残業をしなければならなくなる。

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