風塵社的業務日誌

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ヒダキュウへ(2)

2019年04月30日 | 出版
ようやく座席に腰を下ろせば、早々にビールを売り子のオネーチャンがアピールしている。小生の隣りのおじさんがビールを求めるので、小生もついでにビールを買うことにした(ロング缶550円也)。ビールを飲みつつ妻に、「わし、こういうところ来るの初めてやけん、こういう場のお作法を知らないからね」とは伝えておく。東京ドームならば、1塁側から大きな声でカープに声援を送るのが小生の作法なのではあるけれど、その意味においても、味の素スタジアムは完全アウェイなのだ。なにが正しいふるまい方なのかを知らないし、そもそもが、山雅の選手のことも知らない。そういうただのニワカにすぎない。そもそもが、小生が安曇野の出身ということだけで松本山雅の試合でも観にいこうかと思い立っただけであり、Jリーグにそれ以上の思い入れなどなかった。
そうこうするうちに試合開始のセレモニーが始まる。どこからどういう指示が出ているのかを理解していないうちに、ビジター席では『信濃の国』の合唱が始まった。これには小生も歌わないわけにはいかないだろう。「信濃~の国は~十州に~、境連ぬる国にして~」と大声で歌い始めると、妻が「なん歌っとうと?」なるマヌケな博多弁で質問してきやがった。歌っているあいだは、とりあえず無視。歌い終えてから、「これはなん『信濃の国』いう、信州人にしてみればなにものにも替えがたか歌ばい」と説明しておく。そう偉そうに説明はしてみたものの、もしかして小生にしてみれば『信濃の国』よりも『自治を叫びて』の方がなにものにも替えがたいものなのかもなあという疑念も湧いてくる。しかし、後者はあまりに内輪なものにしかすぎないし、あまりにもくだらない田舎のエリート臭が漂う部分もある。それならば、『信濃の国』を高唱して信州人としてのアイデンティティに浸っておいたほうが、松本山雅のゲームのオープニングにはふさわしいことだろう。
そうすると、次の歌のイントロでビジター席のほとんどが立ち上がり、緑色のタオルを前に突き出して松本山雅の歌を歌いだすではないか。そもそも、小生はその歌を知らない。また、全員が一斉に同じ行動をとるというスタイルには本能的に嫌悪を覚えるタイプでもある。したがって、こいつらなにやってんの?とあたりを眺めつつも、席から腰など上げるつもりは起きない。すると妻が、「あんた帰りがけに松本山雅のグッズ買って帰ろうよ」なる寝ぼけたことを言いやがる。「とりあえず回りのみんなに合わせてハンカチでも振ろうかと思うたばってんね、これって赤やん。相手チームの色なんやろ」まさにそのとおり、よく気がついてくれましたと花丸でもあげておくことにしよう。
作法を知らないので文脈理解にズレがあるのかもしれないが、キックオフ前の時間帯というのは双方の応援タイムなのだろう。フィールドをはさんでトイメンに陣取っているFC東京側の応援団からは「You'll Never Walk Alone」が流れてくる。なんだよ、おまえらPink Floydになんの敬意もないくせにと思った瞬間、山雅にはFC東京を叩き潰してくれという願望が生じてしまった。しかし、彼我の戦力差は明らかなことだろう。そこに珍しくもタイミングよく妻が「ねえ、どっちが強かと?」と聞いてくる。「向こうに決まってるじゃん」と答えると、妻はしょうもないことをググり始めた。その結果、「ああ本当やねえ。FC東京っていま1位やん」おまえは死ねという気分に陥りつつ、FC東京のメンバー発表を見ていると、久保建英がスターティングメンバーに入っている。ヘーッてな気分だ。
久保選手はニュースでしか見たことがないけれど(中継では見たことがないの意)、バルセロナのジュニア出身ですでに日本代表に選ばれているんだっけ?将来はナショナルチームの屋台骨となることを嘱望されているのだろう。スピードのあるテクニシャンなんだと勝手に想像するが、どの選手が久保なのかがあまりに遠くてわからない。そして、応援団の太鼓がさらに鳴り響き、うるせえなあと思っているうちに、ゲームは始まっていた。テレビ中継とちがって、観客席にいると審判のホイッスルなんて聞えないんだ。1Fの応援席を眺めている妻は、ゲームが始まったことにも気がついていない。
それにしても、始まったとたんから、相手に主導権を握られているようだ。山雅の中盤がすぐに崩されてしまい、最終ラインが体を張ってゴールを守っているという感じである。「感じ」というのは、スタジアムが広いので、小生側の反対での攻防というのがよく見えないのだ。山雅の試合をまた観戦するときは、双眼鏡を持っていこうと思う。その防戦一方のなか、相手がパスミスなどすると、思わず拍手してしまう。おいおい、そんなことで拍手させるなよという気分に浸っていると、前半折り返しを過ぎた時間帯からようやく山雅もボールを支配できてくるようになった。
ところが、左のオフェンスが相手のディフェンスを抜けないのだ。ハリルホジッチがさかんにデュエルと言っていたと思うが、その決闘にことごとく負けてしまっている。これではゴール前にクロスの出しようもない。したがって、左サイドのオフェンスにボールが渡っても、またバックパスとなってしまい、いくらボールを支配しているからといっても、相手のゴールを脅かすほどではない。

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