風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

自己抑制

2016年11月07日 | 出版
カープが日本一を逃した晩、帰り道にラーメンをやけ食いしたのがいけなかった。以来、夜になると飢えを抑えきれない。つまらないスナック菓子をコンビニで買ってきては、ポリポリ食べてしまう。こんなことをしていては、せっかく小さくなりつつある胃が、再び成長してしまうではないか。食費を削るうえでも、夕方以降に食べのはなるべく控えたいのだけれど、目の前に食べ物があると、ついつい箸が動いてしまう。自己を抑制するとはまことに難しいものだ。
10月某日、LしゃN氏のご尊父様が亡くなられたそうだ。朝刊の訃報欄にも掲載されていた。11月某日その通夜があり、F社社長と向かうことにする。9月にSさんのご母堂様の葬儀に行ったばかりなので、葬式が続くなあというのが、正直な感想である。みなさん80を越えられている方々なので、遺族の方が悲しみに打ちひしがれるという場ではないから、こちらもいささか気が楽である。参列者が泣き伏しているような修羅場のようなところでは、こちらも息が詰まりそうになることだろう。
N氏ご尊父様の場合は、お通夜の参列者200名前後というところだろうか。小生としては懐かしい顔に出会うこともできた。大井競馬場近くの大きな葬儀場だったので、F社社長と二人してモノレールに乗って山手線に乗り換えて有楽町まで出て、ガード下でお清めをすることになる。なぜ有楽町なのかといえば、その方が小生は帰宅しやすいからだ。二人して話すこととなると、どうしても会社のことになってしまう。F社はともかく、こちらはどうやって年を越すか、いま最大の難問を抱えているのだ。そして、われわれのお清めによって、故人は安らかに成仏されたことだろう。
翌日、妻と高尾山に行くことにした。高尾山は観光客が多くなりすぎて、ここ数年は敬遠していたのである。しかも、いろいろと事情があって、歩いて山頂まで登ろうなどという意欲はない。昼過ぎに、ようやく京王高尾山口駅に到着。まずは髙橋家でそばを食べて腹ごしらえしてからと思っていたのに、お店の前はまさに長蛇の列。これだから、人気観光スポットはいやなんだよ。しょうがないからそこはパスして、リフト乗り場へと向かうことになる。山のうえの方でなにか食べようという作戦に切り替えたわけだ。
リフト乗り場も込んでいたけれど、10分ほど待ってようやく乗り込む。あ~ぁ、リフトなんかよりどこか山歩きしたいなあというのが、小生の正直なところであるけれど、いまだその段階にはない。ガタコト揺られているうちに、上の方に到着。すると、降りに向かうリフト客も長蛇の列である。困ったなあ、並ばずに入れるお店がどこかにあるのだろうか。こんなことなら、高尾あたりでなにか食べてから向かえばよかったと思っても、あとの祭り也。
お昼時である、団子だなんだとちょっとしたものを買うにしても列になっている。その後ろに並ぶ気もしないので、薬王院に向かって妻と歩いていくことにする。すると、さる園の向かいで日本酒の試飲をやっているのに出くわした。飢餓状態に陥っているのだから、とにかくカロリー摂取をしなければならない。地元の酒蔵が地酒を販売していて、枡酒1杯500円、枡があれば(要するにお代わり)200円ということである。そして、塩はサービス。
妻に500円払ってもらって、親指の付け根に塩を乗せる。すきっ腹の冷酒、効くねえ。味なんてわかんないけれど、腹に染み渡る。妻にも一口だけ試飲させておいてやる。自分の小銭入れから200円を出してお代わりしようかと思ったけれど、目の前の団体さんは酔っ払ってずいぶんと盛り上がっているようだ。それを見て、自己抑制が作動した。ここまで来た目的は、酒を飲むことにあらずして、山を堪能することにあるのだ、と。
LしゃN氏ではなく、別の旧友のN氏にしつこく勧められた真木悠介著『気流の鳴る音』によると、「心のある道を歩くこと」が大切なのであるらしい。「心のある道」とはどういう状態(または境地)を意味するのか、小生には皆目見当もつかない。しかし、酔眼とはいえ目の前に道はある。それが心のない道であろうとなんだろうと、とにかくその道を歩まずしてどうするというのだろうか。煙とバカは高いところに上るのであるのだから、おのれの存在を賭けてバカであることを証明してみせよう。
な~んて、思うわけがないよね。結局は腹が減っているのだ。もう少し上の方まで歩いていって、どこかの茶店に入ってなにか食べたい、その一心だけである。ただの餓鬼にすぎない。タラタラ歩いていったら、権現茶屋なるラーメン屋さんがあった。人も並んでいないようだ。早速入ったら、崖下に向かった奥のカウンター席に案内される。「なんだか江ノ島に来たみたい」と妻が腑抜けたことをぬかしている。確かに以前、似たようなシチュエーションに遭遇したことがあった。しかし、こちとら腹が減っているんだ。そこに出てきた天狗ラーメン、あまりにガツガツ食べ過ぎて、美味しかったという印象以外はなにも覚えていない。

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