風塵社的業務日誌

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板橋大山へ(01)

2020年02月04日 | 出版
日曜日の午後、NHK杯囲碁の熱戦を見終えたあと、妻と散歩に出かけることにした。その日はまだ家から出ていなかったので、ほとんど歩いていない。どうせブラブラ歩くのならば、1万歩くらいは歩きたいものだ。どこに行きたいのかを妻にたずねると、「池袋にはさっき行ってきたから、それ以外のところ」げな。「ほな、久しぶりに大山にでも行ってみるか」となった。板橋・大山は以前、テレ東の『アド街ック天国』で採り上げられたことがある街である。突然、近場のあまりに庶民的な街が登場するから、事前情報なしに番組を見ていて思わずのけぞってしまった記憶がある。確かそのときは、大山の西側しか紹介されなかったように思う。小生の見ていない回では東側も放送したのだろうか。
そして、その番組で仕込んだ知識だと思うが、板橋大山の地名の由来は、阿夫利神社で有名な相州大山に向かう街道筋にあったことによる、とのことであった。板橋大山の近くに大谷口(おおやぐち)という地名がある。そこは地名どおりに、急な下り坂がかなりな範囲にわたって広がっている。ところが、大山には大きな山などない。そげんしてなして大山いうんやろとは長年の疑問であったので、番組を見ていてそれが氷解したというわけであった(記憶ちがいだったらご容赦を)。
また一方、小生の家から大山までは、先ほど少し触れたようにそこそこ距離はある。そのため、足しげく向かうようなところでもなかった。ところがある事情が発生してしまい、大山方面に通うことが日課となってしまった時期もあり、以来、大山に親しみが生じている。なにせ安いお店が多いのだ。大山で飲んだことはないのだけれども、格安げな立ち飲みの居酒屋もそこかしこで目に付く。将来大山に引っ越してもいいなあと、思うようにもなっている。ジョギング通勤ならば、いまの自宅とでそれほどの時間差も生じないことだろう。
ところで、東が西武で西、東武という池袋系の不思議さを大山も抱えていて、東武東上線の大山駅の北口側が大山東町で、南口側が大山西口という町名になる。大山という町名もあるのかな。町名はさておき、基本的には暮らしやすい住宅地であるのに、そのへんには医療系の施設がなぜか数多くあるという、別の不思議さも兼ね備えている。それだけ住みやすいところなのだ、ということなのだろう。
ところが、大山駅西側にあるハッピーロード商店街というアーケード街に行き着いてみると、休業しているお店がやけに目立つ。あれぇ、日曜なのになんで閉めてんの、と違和が生じた。大山はいわゆるシャッター街とはほど遠い、地元住民の台所としてにぎわっている商店街である。それなのに、店を閉めているところが目立つ。そしてあるお店の前に張り紙がされていたので、近寄って眺めてみたら、「大山商店街の再開発に伴い、小店は某月某日をもって閉店することにしました」とある。ヘー、大山にもそんな波が来ているんだ。時代の流れとはいえ、なんとなく淋しい。
旧態依然とした古臭いお店を更地にした跡地に近代的な高層ショッピングビルを建設し、その街をより一層活性化させようというプランそのものは小生にもなんとなく理解できる。おそらくは、行政とディベロッパーとでほくそえみながら、密室でプランが作成されたことだろう。それが悪いと言いたいのではない。いま、近代とか旧態という語を無邪気に持ち出してしまったのだけれども、旧態という響きの持つレトロ感が失われるのが、とても残念なことのように思えて仕方がないのだ。生活感に基づく活気があって、いいものを廉価で提供してくれるお店があるからこそ、売り手よし買い手よし世間よしという空間が生じるのだと思っている。しかしそこが、チェーン店ばかりに覆われる空間となったとしたら、そこは売り手と買い手とが互いに疎外する関係にしかない場所となることだろう(その疎外云々については、稿を改めて考えてみたい)。正直なところ、大手資本が提供する品々に、小生はどこか飽き飽きし始めているところがある。
先ほどすでに使ってしまった形容詞をまた重ねてしまうのだけれども、大山のハッピーロード商店街とは不思議なところで、手作り感満載のお店が目立つ。その地元密着的な感じが、小生は好きである。例えば、サンドウィッチ屋さんとかクレープ屋さんとかに、そこそこ人気が集まっているようだ。その通りの賑わいが多くなればなるほど、短期的には、そうしたお店の収益も上がることだろう。しかし小生の危惧しているのはそこにはなく、中長期的に見れば、チェーン店を展開している大資本のお店ばかりが集まった商店街にいずれなっていくんじゃないのか、ということである。
その傾向はすでに現れていて、アーケード街でチェーンのお店はめずらしくなどない。特に、東上線の駅前などは、ソフトバンクにはじまりチェーンのお店ばかりだ。地元の個人事業主の手作り系よりも、チェーン系の方が資本的にも、イメージ的に圧倒しているのは仕方がない。そこで、この事象をどう受け止めればいいのかと、いう疑問は小生のうちに生じた。

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