風塵社的業務日誌

日本で下から258番目に大きな出版社の日常業務案内(風塵社非公認ブログ)

マニュアル

2018年02月26日 | 出版
某日曜日、囲碁を見てから近くのドトールに出かけ、某原稿をようやく読み終える。そのなかに、「最近の接客は客に向き合っているのではなく、マニュアルに向き合っている」なる主旨の一節がある。この問題は著者のKさんと酒を飲みながら何度か話をしたものだけれど、そもそもが、小生はマニュアルを覚えるという行為からして面倒で苦手なのである。それはともかく、1時間ほどで帰宅すると、妻が池袋に買い物に出かけたいと言うので、その後ろにトボトボついていく羽目となった。
歩いて池袋まで出て、ごった返している駅の構内を抜けてから、サンシャイン通りの人ごみをさけるように道を選んで東急ハンズへ。池袋もオタクの街度が高くなり、ハンズでもオタクグッズの扱い量も増えてきた。小生もマンガは読むしアニメもよく観るけれど、なんだかなあ、グッズまではほしくない。要するに、オタク魂のわからないただのおじさんということなのだろう。妻の用事がとりあえずすんだので、お次は東武百貨店へ。
歩いていたら、太ももが重く感じてきた。疲労がたまっているのだろうか。そう妻に訴えるものの、「じゃあ、どうしたいの?」とたずねられて、すでにドトールには行ったし、そういえば腹も減ってきたなあと考える。しかし、晩飯にはいささか早い時間だ。どうしようかと考えても答えはない。なにも案が出てこないというのは情けないけれど、仕方なく、そのまま東武デパートまで行くことにした。それにしても池袋は気楽でいい街だ。小生なんてジャージ姿なんだけれど、それでもなんの気兼ねもなくデパートに入れる。
そして東武の某階に上がれば、そこは現在ワンフロアに某家具店が入っている。エスカレーターの上がり口の前はちょうどソファ売り場だ。これはよかったと、疲れた小生は見本のソファにどっかり腰をおろし、妻の用件が終わるのを待つことにした。ところが妻は売り場案内をながめつつ、「行きたいお店がなくなっている」と言う。「なんだそりゃ」とたずねれば、「前はこのソファ売り場に目的のお店が入っていた」そうだ。そこで「デパートの全店ガイドを見てくる」とのことで、小生はソファにくつろいだまま待つことになる。再び妻がもどってくる。「行きたいお店がなくなっちゃったみたい」「それって本店はどこにあるの?」「イギリス」「それじゃあ、しょうがないなあ」とデパートをあとにすることになる。
歩きつつ、本格的に腹が減ってきた。歩いていて妻も腹が減ったようだ。「来るときに見た、あさりうどんでも食べてく?」と妻に言うと、そうしようということで、某うどんチェーン店に入る。そして、妻があさりうどんの小を頼み、小生は中を注文する。アルバイトの若いオニーチャンが手際よく小から作り始めた。そして最後に、トッピングでわかめを一つまみうどんのうえにのせて完成だ。
ところで、小生はあまりわかめが好きではない。わかめの隣りには刻んだネギが箱に入っている。そこで、「すみませんけど、中の方はわかめじゃなくて、そっちのネギをのせてもらえますか」と頼んだ。すると、「いえ、決まりであさりうどんにはわかめをのせることになっています」と決然と答えたのだ。それに小生思わず腹が立ち、「バカか」とつい口に出てしまった。隣りで妻のほおがひきつくのが眼に入る。
バイトのオニーチャンが一生懸命に仕事をしていることは理解している。しかし、トッピングにわかめをのせようがネギをのせようが、原価がさして変わるわけもない。ましてや、その両方を要求しているわけでもない。その程度の融通も効かせられないとはまさにマニュアルバカではあるけれど、それを口に出してまで相手を貶めることもない話だ。そんなことはわかっているけれど、ついつい口に出てしまったものをいまさら引っ込めようがない。
彼もこちらの剣幕に押されたのか、困惑した表情を浮かべている。そこで、彼がこれからどのように振る舞うのか観察してみようという、意地悪い根性ももたげてくる。すると彼は、「そういう決まりなんですよねえ」と口にしつつも、わかめの替わりにネギを選択した。こちらは口にすべきではないことを口にしてしまったという負い目があるから、「どうもすみません」と言いながらうどんをいただくことになる。
席に着くなり、「どうしてあんたはあんなこと言うの!若い人がかわいそうじゃない」と妻の叱責を受けるものの、そういうことを理解していないのではない。人間というものはときとして理不尽な行動をとるものであり、そして一度犯してしまった間違いは覆水盆に返らずである。いまさら彼に謝罪したら、彼も気まずいことだろう。それならば、こちらはいやな客として振る舞えばいいのだ。
それにしても、そのうどん屋さんで、机にうっぷして寝ている若いネーチャンがいたのはおかしかった。昔の深夜のマクドナルドのような光景である。さすがは池袋ということなのか、それとも若年低所得層のよくある姿ということなのか、それはわからない。

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