風塵社的業務日誌

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『モズライトの真実』(鹿砦社)

2010年10月23日 | 出版
8月の末くらいから、R社さんのDTPの仕事に追われていて結構忙しい日々が続いていたのであったけれど、ようやくひと段落がつきそうなところまできた。計5本をM社長から言いつかっており、そのうちの3本はY印刷に入稿済み、もう1本も入稿寸前、残りの1本は原稿自体が遅れてしまったので、これは来月中旬にぶち込めばいいということである。
そこで、すでに入稿してしまったものから紹介することにしよう。
◎『モズライトの真実』(岩堀典明著、鹿砦社、口絵数ページ、本文208P、46上製)
これは、ベンチャーズの使用でも有名なモズライトギターの真正版はどこから出ているのか、という物語である。ちなみに、本書に出会うまで、小生はモズライトギターというものを知らなかった。ある日、通勤途中に版元MのF氏に遭遇したので、「モズライトって知ってる?」とたずねたら、さすがはF氏である。「あぁ、ベンチャーズの使ってたやつでしょ。確か、リッケンバッカーから出た職人が始めたんだっけ」「そうなの?全然知らないんだけど、その辺のいなかのオッチャンが作ったんじゃないの」なんて答えてしまった。そこで原稿を確認してみたら、モズライトの創業者であるセミー・モズレーはリッケンバッカーの出身であった。F氏がなんでも詳しいことに感心してしまったものである。
そのモズライトギターであるが、日本では3社が正規だと謳っているそうだ。一つは、フィルモアなる会社。もう一つは、黒雲製作所なる会社。そして、モズライトUSカスタムショップである。
本書では、セミー・モズレーの生涯を追うとともに、その「モズライトUSカスタムショップ」が、セミーの最後の奥さんであるロレッタさんと共に、いかにしてその正統性を継承し、商標を守ったかを伝える内容となっている。フィルモアと黒雲には、モズライトの商標権がないことが、本年2月に日本の最高裁判所でも確認されているのだ。
ところが困ったことに、そういうことに無頓着な有名人もおり、広告塔として活躍してしまっている。その代表が加山雄三氏であった。しかも、そのことが『週刊新潮』(2010年9月23日号)誌上にも取り上げられてしまい、「『モズライト』から詐欺と訴えられたエレキの若大将『加山雄三』」と報道されてしまうことになってしまった。軽はずみな行動で、かえって墓穴を掘ることになってしまったので、ご愁傷様としか言いようもない。
商標権を巡る法律的な争いが中心になってしまうので、本書を読んでも、その全容がすぐにおいそれとわかるような性格のものではないが、しかし、加山雄三氏の行いは指弾されてしかるべきであることは伝わってくるだろう。そのうえ、小倉智昭氏もフィルモア側の広告塔として使われてきたようだ。ニセモノと認定されているものが、ここまで大手を振ってしまうのもいかがなものかと思う。
ということで、モズライトギターなるものがどういうものかを知りたい人は、本書を手にしてみよう。ついでに、DTP技術の素晴らしさも堪能することにしましょう。そろそろ、製本も終わり、書店店頭に並び始めることだと思います。
ついでに、余計なお世話だとは承知しているけれど、Wikipediaの「モズライト」および「モズライトギター」の項目は、本書に合わせて修正した方がいいだろうなあ。新しい情報が反映されていない憾みがある。

と、ここまで書いたら疲れちゃったので、他の4本はまた別の機会に。


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