小説では 算哲みずから付けた 渋川春海 という名が多く
使われているのですが 映画では 碁打ちとしての名の
安井算哲 で語られます。
『おくりびと』 の滝田洋二郎監督作。
目に強い力のある 主役の岡田准一さんを始め キャスティングが見事です。
北極立地に赴く時の 隊の頭取と御殿医の 長年の夢が叶った少年の
ようなやりとり。 笹野高史さんと 岸部一徳さん 劇中の安井算哲だけでなく
見ている私まで わくわくしました。
算哲を宿敵と勝負を挑み続ける 本因坊道策に ちょっと NHK大河ドラマの
『平清盛』 の後白河法皇役の松田翔に似た 関ジャニの横山裕、 妻となる
えんの兄 村瀬義益に 佐藤隆太。 関孝和に 市川猿之助 と若い人も
いい。
前半に比べ 後半がだれるのは 演技が全部読めてしまう妻役の宮崎あおい
のせいかもしれない。 ちょっと眠くなった。
本を読んだだけでは想像もつかなかった 算盤とか 映像で見られてよかったと
思います。
ナレーションは 真田広之さん、 主役の岡田准一さんは ちょっと真田さんに
似ておられますね。 世界に通用するかもしれない。
風呼 でした
800年に及び 中国の宣明暦を用いてきた暦に 2日のずれを
見出した幕府の要職者が 改暦のため日本各地の北極立地を図る。
その一人に選ばれた 囲碁棋士にして算術家・神道家の渋川春海の
23才から46才に及ぶ奮闘ぶりを描いた小説です。
時は4代将軍家綱(1651~1680)の頃。
宣明暦よりより正確な 同じく中国の授持暦に変えようとするのですが
暦の販売で巨額の利益を得ている 神社・寺などの猛反対にあいます。
月食の日を予測する事で 授持暦の正しさを証明しようとしたのですが
惜しくも最後をわずかに外してしまい 改暦はなされませんでした。
その後も 合点のいかない渋川春海は 今度は幕府の援助もなく 解明
に努めます。 それを個人的に支える 保科正之、 水戸光圀、
関孝和らが 魅力的に描かれます。
わずかな差が 中国との経度の差にある と気付き 天地明察となります。
が、 改暦には その権限を持つ天皇側近の 形骸化した公家たちをも
納得させねばならず 一時は春海も支持した授時暦に決まった暦を春海は
大芝居を打ち 大和暦(貞享暦)と名付けたそれを 大どんでん返しで 朝廷に
認めさせるのです。
1685年に改訂された 貞享暦は 1873年から用いられる太陽暦になるまで
その後3度にわたって改暦された和暦よりも 実際は一番正確だったそうです。
真と信
渾天(こんてん)に罫(けい)を引き
碁盤の目にたとえ
天元を打つ
違っているのに
それが何だかわからない
春分から秋分まで186日余
秋分から春分まで179日弱
等分ではないのは
地球の軌道が楕円だから
それでも一つづつ
明察とは言い切れないが
答えは出てくる
ーー明察と言い切れないのはその楕円も動いているから
迷いの中に存在していた真を
信じ続けてくれた人たち
棋道の正道ではないという常識を破り
あえて初手は天元に
北極星を打つ
図は 若き日の渋川春海が 関孝和に出題した問題です。
明察は無 ありません。
風呼 でした
ウルグァイの人里離れた広大な土地に住む 拳銃自殺をした作家の
妻と 作家の愛人とその娘、 作家の兄とその同性のパートナーの
生活が描かれ 作家の伝記を書く許可を貰いに来たイラン系アメリカ人
の出現を契機に それぞれの最終目的地を目指すという物語です。
作家の両親は ナチスに追われて亡命してきた 裕福なユダヤ人で
その母親の残した宝石を手に 作家の妻はこの家を出、 愛人は残る。
アメリカ人は伝記は書かずに 作家の愛人とウルグァイで暮らす事を
選ぶ。
アンソニー・ホプキンス演じる作家の兄は 25年前からパートナーの
ピート(真田広之)を 老いた自分から独立させようとするのですが
ピートはそれを望まない。 この二人の情愛がとてもいい。
宝石の代わりに土地所有権を作家の妻から得た作家の兄は 自らを
社長に ピートと事業を起こすのです。 一緒に生活できるように。
亡き夫の愛人とその娘と同居する妻、 男性同志の同居婚、 とか
尋常ではない世界が 雰囲気たっぷり 嫌悪感なく描かれています。
『眺めのいい部屋』 『モーリス』 『日の名残り』 のジェームズ・アイボリー
監督作。
作家の愛人役に女優陣でひとり化粧っ気のない シャルロット・ゲンズブール。
作家の兄がピアノを弾く場面があるのですが 作曲家でもあるアンソニー・
ホプキンス本人の演奏だそうです。
原題 ”The City of Your Final Destination”
まんまなんだけど 何か違った邦題にならなかったのかなあ。
『最終目的地』 じゃあ味気ないよねぇ~
風呼 でした
エンジンは engine ではなく 猿人 もしくは 厭人。
ミライと言う娘の 生まれる前に消息を絶った父親探しの話です。
公害を摘発する 1970年代の画期的なTV番組『スペクトルマン』
の悪役 異星人 ゴリ を巡って 話は展開されます。
ミライの父親は ゴリ と呼ばれていたらしい。
学生活動家で 爆弾作りの天才、 が 浅間山荘事件の前に
すべてを捨てて 山中に一人で住んでいた 厭人。
風貌が 猿人。 指名手配されていた。
逃亡の初期に 母親と再会し匿われ ミライが生まれた。
当時 ミライの母親は 新しい女性像を求めて模索していた。
戦後日本の折り返し点と云われる70年代が描かれます。
『スペクトルマン』 は 『巨人の星』 の 裏番組だった。
始めは 『宇宙猿人ゴリ』 のタイトルで 悪役が主人公だった。
中島京子さんの小説には いつも小さく意表をつかれます。
久々に 面白い本を読んだと思いますが、 今の男女は
あんなに簡単に深い仲になるんだろうか。
スペクトルマン を 知らなかった
風呼 でした