1959年11月に アメリカ カンザス州で起こった 一家四人惨殺事件を扱った 話です。
ノンフィクションノベルの草分けといわれます。
アメリカの物語は 人種、宗教を認識しないと良くわかりません。
広大な面積の 国なので 舞台となる州の位置や気候なども重要です。
カンザス州は 西隣がコロラド、南隣はオクラホマ、 アメリカ合衆国のほぼ中央に位置します。
年間雨量の極端に少ない 開拓民の多い州です。
鍵を掛けなくても大丈夫な のどかなホルカムという カンザス州西部の町で 殺人事件が起きます。
被害者は 人望篤い熱心なメソジスト教の信者のクラッタ―一家。
クラッタ―氏は現金を持たないで小切手を切るのは近隣では知られていた。
家には大金があるはずがなかったのです。
散弾銃での惨殺は 恨みからなのか? 近隣住民の不安は募ります。
メソジストとは 18世紀にイギリスでウェズレーによって提唱された禁煙・禁酒の 文字通りメソッドに従い規則正しい生活をする プロテスタントの一派です。
日本では 青山学院、関西学院がそうだそうです。
同じ刑務所にいた男の 懸賞金と恩赦目当ての密告で 犯人二人は年末に捕まるのですが 全く接点のなかった被告と犯人、それを取り巻く人々が丁寧に描かれています。
交通事故で顔の左右が歪んでいるそうですが 笑うと人懐こい ヒコック。
愛情ある家庭に育った。
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母はインディアンのチェロキー族、父はアイルランド人の ぺリー。
極端な短足で その足は単車事故での後遺症に悩まされていた。
密告した囚人が牢内でヒコックに語った 以前働いたことのあるクラッタ―家の裕福な暮らしに誘発された犯行だった。
先に出所していたぺリーに計画を打ち明け 金を手にしたら二人でメキシコに逃げる算段だった。
計画はヒコックが立て、ぺリーが実行した。ヒコックは現場で 怖気づいてしまったのだ。
ぺリーは貧しさ故 朝鮮戦争勃発から休戦まで陸軍に従軍し 青銅星章(ブロンズスター)を貰っていました。
証人、捜査官に至るまで 作者は丁寧に描きます。
両親は離婚、母はアル中死、姉は転落死、兄は自死、別れた父は放浪癖がある。
小さいころから施設をたらい回しにされ 夜尿症のため虐待を受け続けた 。
そんなぺリーは音楽性に優れ ラスベガスで歌うことが夢でした。
ジェイムス・ブラウン、ティナ・ターナー、アーサーキッド、リタ・クーリック、そして エルビス・プレスリー にも チェロキーの血が混ざっているそうです。
タランティーノ、ケビン・コスナー、キム・ベイジンガー、キャメロン・ディアス にも。
1965年6月の同じ日に 二人は絞首刑になりました。
6000ページにも及ぶ取材をした作者はそれに立ち会うのです。
”冷血”なのは 数えきれないほどインタビュ―し、親しんだ二人が 刑を執行されなければ小説が完成しない、それを見届けた作者本人が自分の事を言っているのではないかと思うのです。
ぺリーは朝鮮戦争でどんな戦果をあげたのか? は 書いてありません。
by 風呼 ![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_thank.gif)