映画『ティファニーで朝食を』の原作(1958)で知られる トルーマン・カポーティは 1924年9月30日、アメリカ南部で生まれた。
Oヘンリー賞を受賞した短編 『ミリアム 』 で 十代で作家ビュー。
1948年の 『遠い声 遠い部屋 』では その実力を評価されるが 自らをゲイとカミングアウトして スキャンダルを巻き起こす。
『クリスマスの思い出』等、優れた短編を幾つも残し、1959年、カンザス州の信仰深い人々の暮らす平和な田舎町で起こった 人望篤い一家四人の惨殺事件の顛末をリアルタイムで書いた 『冷血』(1966) で ノンフィクション小説の先駆者としての絶大な名声と富を得る。
ヴェトナム戦争に従軍した二人が犯人だったが うち一人の恵まれない生い立ちに自身を重ね 同情するも 死刑執行を見届ける。
カポーティの母親は十代で自分を生み 遠い親戚に預けていなくなったのだ。
『冷血』を書きあげたことで 彼の心は蝕まれる。
浴びるように酒を飲み ニューヨークの社交界を闊歩する。
背が低くゲイである安心感があったからか 社交界の 彼が”スワン”と呼ぶ女性たちに気に入られ 彼女たちの裕福ではあるが夫の乱行の悩みを聞くようになる。
長いスランプを打ち破るように そのスキャンダルを暴く 『叶えられた祈り』(未完)を出版、社交界から総スカンを喰らう。
一番のお気に入りだったスワン。 愛称 ベイブ。
彼女も夫の不実を暴露され 彼から離れる。
彼女の中に 母親の面影を見ていたのか。
十代で家出をし、金持ちのカポーティ氏と再婚した母。
『ティファニーで朝食を』は 母親をモデルとしたという。
NYで作家となったカポーティと暮らすようになるが彼女は息子のゲイが容認できず自殺を図り カポーティの腕の中で息絶える。
カポーティはアラバマの遠い親戚に預けられていた時 スックという祖母はどの年齢の従兄妹と仲良くなる。発達障害のあった彼女もまた その家の居候だった。
『クリスマスの思い出』は 純真無垢の彼女との交流を描いたもの。
私はこの作品が一番好きだ。
隣家に 『アラバマ物語』の作者 ハーバー・リーが住んでおり 二人は幼馴染でカポーティの『冷血』の取材にもゲイのカムフラージュとして同行、生涯にわたってのよき友人だった。
一時期カポーティのマネジャーであり愛人でもあったジョン・オーシェイの娘、ケイト・ハミルトンを養女に迎える。
アルコールと薬物に頼り奇行が目に余る人生になったカポーティを彼女は理解し愛した。カポーティは見る目があったんですね。
カポーティが死ぬまで大切に持っていた スックの作った干からびたジンジャークッキーと缶。
映画の『カポーティ』では カポーティが理解出来なかったのですが、この本人版のドキュメンタリーを見て 少し解った気がしました。
彼は スックを探し続けていたのですね。
by 風呼