第149回直木賞を取られた 『ホテルローヤル』 より少し前に書かれた
作品集です。
農業研修という名目で北海道にやってきた 中国女性と結婚した主人公の追
い求めた小さな幸せ ”波に咲く”
身体を売って 男に貢ぐ女の 男たちとの決別を描いた ”海へ”
ヒモ状態の男が 自分の若い愛人を殺してしまった ”プリズム”
引退する若いストリッパーとの つかの間のふれあい ”フィナーレ”
17才で家出し消息不明になり 28年後に 遺骨となって帰ってきた姉と
シンクロさえしていた日々 ”風の女”
40才で結婚する 15才の時の交際相手。 その若い花嫁の着付けを
担当する ”絹日和”
再婚した元夫との子を孕む ”根無草”
の 7編の短編集です。
桜木さんの文章には 詩的な表現が沢山あり どの作品にも 余韻が残ります。
男女間のさまざまを 容赦なく描かれているのに拘わらずです。
読後は 気持ちが落ち込むのですが。
『光圀伝』 に続いて 電子書籍で読みました。
半分 電子書籍で読んだ 『ホテルローヤル』 で思ったのですが 紙の本の
方が 落ち込み度が激しい気がする
風呼 でした
同著者による 『天地明察』 の最後の方に大変魅力的に
登場した 水戸光圀 伝 です。
事実上の二男である自分が 何故長男をさしおいて世継ぎと
なったのか、 儒学の ”義” に 教えを乞う。
父頼房は 家康の十一男、 烈しい気性は 兄弟一で 光圀は
それを受け継ぎ やりたい放題。
18才で ”史記” の伯夷伝に出会い 己の成すべき道を悟る。
日本にも ”史記” のような本が必要と考え その編纂を始める。
250年を要し "大日本史” として 1906年に完成。
この 『光圀伝』 は 自身が 少年の頃から取り立て 大老にまで
重用した 藤井紋太夫を 隠居の身で 何故 殺めなければならな
かったかを語る 光圀の独白を織り交ぜながら 書かれています。
まず 父頼房の 壮絶ともいえる 幼い光圀への 世継ぎ教育に度肝
を抜かれます。
”義” の前に 将軍をも恐れぬ 光圀に 読み惚れてしまいます。
のっけから 宮本武蔵も出てきます。
登場人物も バラエティに富んでいて もう これはNHKさんの大河
ドラマにして貰うっきゃないでしょう と思っていたら すでに茨城から
22万人の署名が集まり NHKに提出済みだそう。
光圀役には 海老蔵さんでしょうか。
品よく美しく あの烈しさを表現できるのは。
でも 歌舞伎界は ただ今人材不足、 一年もの拘束は無理かなぁ~
風呼 でした
世界不思議発見 1300回記念企画です。
3人のミステリーハンターが オーディションで選ばれ
それぞれの謎に迫りました。
二人目に登場の ミステリーハンターの謎です。
昨 12月14日放映。
インド北部で 一年に一度の 一万頭が集結するラクダ祭りで
その謎の解明にいどみます。
ラクダは何故同じ方を向くのか
ある飼い主は言う
「ふるさとの方を
向いているのさ」
ある飼い主は言う
「生まれた スリランカを
見ているのさ」
本当さ 休憩時
ラクダはみんな太陽に頭を向け
垂直に坐る
頸の後ろにある 延髄が暑さを感じるので そこを陽に当てないようにする
為だそうです。
身体を太陽に向かって垂直にするのは 陽に当たる表面積を最小限に
するため。
ラクダだって 暑いのですね。
このミステリーハンターさんは 大好きなラクダを追って 世界中を旅され
ているそうで 乗車率200%の列車の最小スペースに座ったり タクシー
を値切ったり いかにもの旅慣れで 堂にいったもの。
下品になりすぎないところが いい。
元 美容師とかで ラクダの毛を日本から持参したバリカンを器用に使い
模様を見事に描いても見せました。
今までのミステリーハンターにない 気取りのなさが 好感を持てます。
風呼 でした
追悼 ネルソン・マンデラさん
これは2010年 7月25日に書いたものの 再掲です。
’64は ネルソン・マンデラが収監された年、 466はその年の 466番目の囚人を表します。
466-64(フォー・ダブルシックス・シックス・フォー)
監獄島と呼ばれる
ロベン島の
剥き出しの窓に鉄格子の
2メートル四方の独房
南極に近い極寒の冬
ベッドすらない地べたに
4まいの毛布を与えられ
英国人の看守を観察(み)ながら
27年間考えた
白人と黒人との
共存世界を
絶望と死の恐怖におびえながら
神が自分を生かし給う
意義を
報復は連鎖する
怒りからは何も生まれない
何処かで何かを断ち切らねば
笑顔で赦そう 全てを
神がそなたを赦し給うたように
1990年2月11日 ネルソン・マンデラは世界中が見守るなか 釈放されます。
71才になっていました。
大統領になってからの言動は 私たちの見知っている通り 白人をそれまで通り重用し、徐々に融和を図っていきます。
1993年、 前大統領のデクラーク(白人 マンデラ政権では副大統領)と共に ノーベル平和賞を受賞。
大統領就任翌年の ラグビー南ア開催で 南アの奇蹟の優勝を描いた クリント・イーストウッド監督の映画 インビクタス(負けざる者) でモーガン・フリーマンが 品性良く淡々と演じていて しみじみ感動させられました。
(クリント・イーストウッドって 普通の女性を描くのもお上手ですよね)
現在『46664』は 南アのエイズ撲滅の支援団体の名称として 使われています。
風呼r でした
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2010年 7月25日の 再掲です。
追悼 ネルソン・マンデラさん
クリント・イーストウッド監督の 映画から。
ネルソン・マンデラの詩に感動して 書き取りました。
インビクタス(負けざる者)
私を覆う漆黒の夜
鉄格子に潜む奈落の闇
どんな神であれ感謝する
我が負けざる魂に
無残な状況においてさえ
私はひるみも叫びもしなかった
運命に打ちのめされて
血を流そうと
決して頭(こうべ)は垂れまい
激しい怒りと涙の彼方には
恐ろしい死だけが迫る
だが
長きに亘る脅しを受けてなお
私は何一つ恐れはしない
門がいかに狭かろうと
27年にも及ぶ ロベン島での監獄生活での 不屈の魂。
風呼r でした
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第149回直木賞受賞作です。
アイスホッケーの英雄で 怪我で挫折した中学時代の同級生の求め
に応じて廃墟と化したラブホテルの一室で投稿用に 裸でポーズをとる
33才の女の 心情を顕わにする 『シャッターチャンス』
さびれた寺の大黒(妻)さんが 毎月の檀家代表のお布施に 身体を張って
奉仕する 『本日開店』
ラブホテルを閉めるにあたって 備品を引き取りに来た10年来の出入り業者
との 起こらなかった アクシデント 『えっち屋』
腕はあるのに使い道のない 大型家電店に呑み込まれた元電気屋の
つましい生活の中で見つけた夫婦の歓び 『バブルバス』
両親に棄てられた教え子の高2女子と 妻の結婚前からの不倫現場目撃の
高校教師との 行きがかり上の死への道行を描いた 『せんせぇ』
消息の知れない3人の子供たち。 10才年下の 怪我を理由に働かない夫。
60才を越えてラブホテルの清掃で生計をたてている女の これも愛
『星を見ていた』
20才年下の愛人のつわりに 季節外れのみかんを買ってくる
『ギフト』
の7つの短編 からなっています。
7編は どこかで ホテルローヤルと係わり
登場人物も微妙に重なっていたりします。
どの物語にも 希望なんて甘っちょろいものはなく 読後は非常に重い。
鬱になりそうなくらい 重い。
けれど 読まずにいられないのは 文章に詩情が溢れているからです。
桜木紫乃さんは 詩人でもあられるそうです。
初めて電子書籍で読んだ
風呼 でした