ピカソ・マニマニア

ピカソの91年を 詩にしました。
カテゴリーのピカソを クリックして下さると 嬉しいです。

” 狐忠信 ”  絵本

2023-05-09 15:52:44 | 

歌舞伎『義経千本桜』の 鳥居前より 狐忠信 が絵本になりました。

登場人物は 
   
   左より 義経四天王の一・亀井六郎、
   静御前、ご存じ源義経、義経の臣・佐藤忠信
   実は子ぎつねの精 の 四人です。


文は 中村壱太郎(かずたろう)さん。
歌舞伎役者ならではの リズミカルさ。

巻末には
    
バーコードがついていて 尾上松也さんの朗読が聞かれます。

昨今の絵本事情も 進化しているのですね。


         by   風呼


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『 破軍の星 』  北方謙三著

2023-03-02 16:37:43 | 

南北朝時代、後醍醐天皇の命で 十六才で陸奥守に任じられた 公家出身の北畠顕家の短くも潔い生涯が描かれています。

1318年、北畠親房の長男として生まれ、幼少時からまれにみる天才とうたわれた。奥州をまとめ、任を全うしかけるも 度々の後醍醐天皇の無理難題な要請で足利尊氏と戦うことになる。

     

わずか80騎を7万の敵に囲まれ20才で討ち死にします。

死を決意した1週間前に 後醍醐天皇宛に 新政の失敗を諫める ”北畠顕家上奏文” をしたためています。


南北朝時代は良く分かっていなかったので 読了に苦労しました。

北畠顕家以外の武将も敵味方を問わず魅力的に描かれていますが 新田義貞だけは良く分からなかった。



破軍の星とは 北斗七星の七番目の星で 柄杓の柄の先端に位置することから
陰陽道ではこの星の指す方角を凶とするそうです。


尊氏の擁した北朝の天皇は 歴代天皇にカウントされないのね。


     by   風呼
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『 弥勒の月 』  あさのあつこ著

2023-02-01 22:02:13 | 

小間物屋の若女将が川で水死した。

婿との夫婦仲も良く 自殺とは考えにくい。

気鋭の同心 信次郎は 婿の清之介に捜査を頼まれる。

信次郎は 清之介のただならぬ気配を感じる。

信次郎は父親の代からの岡っ引き 伊佐治と共に その後縄張りで次々と起こる殺人の解決にまい進する。

どの事件にも 清之介の過去に関係があるらしい。


信次郎、清之介、伊佐治と その人となりが良く描かれていて 惹きこまれました。

この後 10巻まで出ているそうです。

取り敢えず2巻も読みたいと思います。


      by   風呼
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『 われら闇より天を見る 』  クリス・ウィタカ―著

2023-01-25 15:23:26 | 

30年前、誤って恋人の妹を轢き殺してしまった15才のヴィンセントが30年の刑期を終えて出所してくる。
本来の刑期は10年だったのだが 刑務所内で正当防衛とはいえ殺人を犯してしまったので20年延びたのだ。

カリフォルニアの別荘地が建ち並ぶ 小さな保守的な町ケイプ・ヘイブン。

長年警察署長を務める(警官は彼一人)ウオークはヴィンセントの幼馴染で
ヴィンセントが事故を起こして逃げた時 自首を促さず通報した。
彼の正義感がそうさせたのだが  ヴィンセントが15才にして成人刑務所に入れられるきっかけにもなった事が 今では負い目になっている。

ヴィンセントの出所後、かつての恋人 スターが殺されその現場に彼がいた。

再び逮捕されるが  彼は何も語らず弁護士も拒絶する。
このままでは彼は死刑になる。

ウオークの度重なる説得に マーサなら弁護してもらいたいと伝える。

マーサはかつてのウオークの恋人で 今は他州で主に離婚や親権を扱っている弁護士だ。

30年前、ヴィンセントとスター、ウオークとマーサはつるんで行動していた。
事故さえなかったら 今では家族ぐるみのつきあいだっただろう。

殺されたスターは2人の子供があるシングルマザーだった。
怪しげな店で歌手まがいの事をしながらそれでも大切に子供を育てていた。
言いよる男は数知らず。 容疑者は他にいるとウオークは確信している。

群像劇のようなもう一人の主人公は 母親の美貌を受け継いだスターの娘、13才のダッチェスだ。

狭い世間でさまざまな差別を受けて彼女は5才の弟ロビンをいつも守っている。 悪態をつき暴力を振るい自らを無法者と名乗って。

母の死で モンタナに住む祖父に引き取られ 農場で暮らしていたが その祖父が何者かに撃たれて死んだ。

施設に預けられた姉と弟。

ある日祖父の農場から銃を持ち出し ダッチェスは一人 はるばるケープ・ヘイブンに向かう。

原題が「WE BEGIN AT  THE END」 とあるように物語は終始暗い。
それでも先を急いで読んだ。

最後はそう来たか。
思わぬ人が犯人で ダッチェス姉弟の父親も判明する。

熱読したのに ご都合主義の結末にちょっと落胆。


14才になったダッチェスが 無法者であり続ける事に期待して



     by   風呼



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『 営繕かるかや怪異譚 』 その参   小野不由美著

2023-01-09 21:51:17 | 

営繕は 傷んだ家等を修理すること。

尾端(おばな)という若い大工が対処した 怪異な話です。


  ヨーロッパの古城風のレストラン、窓の三枚のうち一枚だけ
  嵌められた古いガラスが起こす怪異の  「待ち伏せの岩」

  夫亡き後 誰をも受け入れない義母と暮らす 子供のいない主
  人公。亡き後もする義母の動きまわる音  「火焔」

  自身が得られなかった暖かい家庭を追い求めるように作る
  ドールハウスに起こった惨状  「歪む家」

  跡取りの最初の嫁とその長男が死ぬ その業から逃れるように
  転居するも 不気味についてくる影  「誰(た)が袖」

  幽霊屋敷と近所の人から忌み嫌われている 河口と海に面した
  家に一人住み続ける若い女性。 海に浚われ行方不明の人の
  亡霊におびえる  「骸(むくろ)の浜」

  あからさまに姉ばかり可愛がる母親に愛想をつかし大学進学  
  を期に家を出た妹が 職を得て帰京し 誰も住まなくなった家に
  住むことに。離れで そこで自殺した姉を感じる  「茨姫」 

の6編からなっています。

海に面した城下町に起こる不思議を 原因を追究するでなく 得体のしれない物と時に共存しながら的確に 尾端は営繕します。


作者の小野不由美さんは 大分県中津市出身。
怪異の多い土地柄で 作者は好んでその話を聞いて育ったそうです。



      by   風呼
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『 花と火の帝 』  隆慶一郎著

2022-12-26 18:48:24 | 

京都洛北に 八瀬とい村落があるそうだ。

楠木正成に追われた 後醍醐天皇の輿を担いで逃げ延びたので 以後、天皇の神輿を担ぐのを生業とした駕輿丁と呼ばれる人々が住んでいる。
彼らは他者を受け入れず 延々とその役目をになってきた。

後水尾天皇の駕輿丁のひとりに 岩介という若者がいた。
彼は幼少時に天狗にさらわれ、様々な妖霊術を身に着け、隠密としても働き 天皇の絶大の信頼を受けていた。

この物語は 天皇の権力を剥奪したい 家康・秀忠の 徳川幕府と後水尾天皇との丁々発止が描かれています。

108代 後水尾天皇は 幕府と対抗するため早々と退位しますが 51年にわたり院政を敷き84才まで生きます。
女性天皇を擁立したり、秀忠の娘和子(まさこ)を中宮にしたり 数えきれない側室に20数人の子を産ませたり、とてつもない精力家だった。

残念ながらこの物語途中で作者は没してしまいます。

天皇と秀忠の軋轢の行く末はいかに?



     by   風呼



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『 藤田嗣治 』   近藤史人著

2022-10-31 18:27:52 | 
副題は 異邦人の生涯。

1913年、27才でパリに渡り ピカソやモジリアーニ等。綺羅星のごとき画家たちとも交流、島崎藤村から金子光晴など日本人とも パリで交友を持った藤田嗣治の伝記です。

著者はNHKディレクターとして 藤田嗣治の番組を作った事もある方だそう。
第34回、大宅壮一ノンフィクション賞受賞作品。

夏堀全弘という人の藤田嗣治論に 藤田自身が手を加えた 未発表の作品が軸になっているようです。

画法や戦争画を描いたこととか フジタの一生の軌跡は良く分かるのですが 人物像は分かりにくい。

作者はフジタをどう思っているのか分からない。

フジタは反論はしないで逃げる いい人振るタイプだったらしい。

交友関係が凄い人ばかりなので 面白く読みましたが フジタのやったことは分かっても フジタの心は分かりませんでした。

40センチほどのフランス人形を愛し、数十体と一緒に寝ていたとか、箱に入れられた 古びた日本人形にレジオン・ドヌール勲章が付けられていたとか ますます分かりません。

本は面白かったけれど インスピレーションは沸かないという 奇妙な読後感でした。


    
    by   風呼 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『 炎環 』  永井路子著

2022-10-15 16:12:07 | 

1964年の直木賞受賞作です。

鎌倉時代の 4人を題材にしています。

阿野全成を扱った 『悪禅師』、梶原景時の 『黒雪賦』、北条政子の妹で 阿野全成の妻の保子を描いた 『いもうと』、北条義時の 『覇樹』 です。

1979年の NHKの大河ドラマ 『草燃ゆる』 の原作になったそう。

ちなむに『草燃ゆる』のキャスティングは
 頼朝に 石坂浩二
 政子に 岩下志麻
 北条義時に 松平健
 北条時政は 金田龍之介
 保子に 真野響子
 源頼家に 郷ひろみ
 安達盛長は 武田鉄矢
 大江広元に 岸田森(いい役者さんでした)
 後白川法皇に 尾上松緑 
 後醍醐天皇に 尾上辰之助
 文覚に 観世栄夫
 駒若丸は 京本政樹  さん だったそうです。


小説としては 先に読んだ 1969年作の(炎環の5年後) 『北条政子』の方が面白かったと思います。


     by  風呼


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『 北条政子 』  永井路子著

2022-10-03 14:52:47 | 

四人の子をすべて失いながら 鎌倉幕府を牽引することになる 北条政子の心情を見事に描いた小説です。 

女性の視線で語られているので 同性として物語に入りやすく 面白く読みました。

NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を欠かさず見ていて 女性が生き生きと描かれているのに感心していましたが 脚本の三谷幸喜さんは この作品を参考にされたのではないかと思われるほどです。

二代将軍頼家の気性の荒さと 繊細な三代将軍の実朝との差が 同父母なのにと考えさせられる。

園城寺に預けていた公暁を呼び戻し 鶴岡八幡宮の別当にする。
しおらしく千日行に励んでいると見せかけた公暁の本性が父頼家のこれでもかと描かれた乱行と重なります。

物語は 実朝暗殺・公暁殺害 の後、鎌倉幕府を(北条を)守り抜く政子の決意で終わっています。



作者、永井路子さんは 他の作家があまり取り上げない人を小説にされているそうです。

こんな描き方があるのだと いい意味で驚きました。



     by   風呼





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『 吉原御免状 』  隆慶一郎著

2022-06-01 19:17:58 | 

後水尾天皇の子として生まれるも 生後すぐに宮本武蔵に預けられ 肥後の山奥で剣を仕込まれた松永誠一郎は 武蔵亡き後、その遺言により26才で江戸吉原へ赴かされる。

何故吉原なのか。

吉原では丁重に扱われながらも柳生の裏忍者に命を狙われ続ける。

伝奇小説というジャンルらしい。
妖術を使ったりの 傀儡子を始めとする 道々の輩の物語とも言えます。

65才で家康に登用され108才まで生きたという 天海僧正が実は 明智光秀だったとか
家康は関ヶ原の戦いで死に、その後は影武者だった とか、内容も盛りだくさんです。

面白いのですが 残虐な描写が多く 暫くは隆さんはいいかな。


     by  風呼









コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

” 捨て童子 松平忠輝 』  隆慶一郎 著

2022-05-19 14:21:24 | 

松平忠輝は 徳川家康の 六男として生まれた。
母親は 天皇にしか仕えないという自由人、道々のものと呼ばれた鋳物師の元妻。

その怪異な風貌を嫌った家康に「捨てよ」と言われ  家臣の下野長沼(栃木県)城主の元に預けられる。
天才的な武将だったため織田信長に恐れられ 21才で自害を強いられた嫡嗣信康に余りに似ていたためだとも言われている。

野山を自由に駆け回り忠輝は 類まれなる身体能力を身に着け、その能力を見抜いた剣術の達人にしこまれ 知性をも身に着ける。

やがて家康にその才を認められるが 二代将軍秀忠の激しい嫉妬ににあい 執拗に命を狙われるようになる。

一斉の偏見を持たない忠輝は 道々の者とも交わり、宣教師から医術を学んだりした。

伊達政宗の息女 五郎八姫(いろはひめ)を妻に迎え 政宗とも信頼関係をを結ぶ。
やがて五郎八姫が信仰するようになったように 全国に70万人はいたというキリシタンの篤い信頼を得ていた。

たびたび襲われた秀忠が送った柳生の刺客との闘いとか まるで時代劇全盛期の東映映画を見ているよう。

伊達政宗のイスパニア派遣は 家康と図った忠輝国外脱出作戦だった(未遂)とか、
大坂夏の陣に傀儡姿で紛れ込み 千姫を逃がし、秀頼と別れの盃を交わしたとか。

史料も織り込まれる話の展開に 何処までが本当なのかと思います。


自分亡き後、秀忠に殺されることを惜しんだ家康は 忠輝を勘当、その死の床からも排した。

が、忠輝の母阿茶の方に 野風の笛を 忠輝にと託す。
野風の笛は 信長・秀吉・家康と伝わった 名笛だった。

家康の死後に忠輝の高田75万石を廃された25才までが描かれています。
諸国を流されるも92才、五代将軍まで見届けます。


作者、隆慶一郎氏は 還暦を迎えてから小説を書かれました。
それまでは「にあんちゃん」等を書かれた脚本家だったそうです。

東大で小林秀雄に師事、師の評が怖くて 亡くなられてから執筆を始められたとか。

喧嘩と酒に溺れた、学徒動員世代だそうです。

1989年、第二回柴田錬三郎賞受賞式の直前に66才で死去。



文字通り 血沸き肉躍る傑作です



      by  風呼
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『 銭売り賽蔵 』  山本一力著

2022-03-19 23:08:04 | 
享保八年(1723年)の大川の鉄砲水で 孤児となった主人公は 銭屋に拾われ賽蔵と名づけられて育てられた。

養父の後を継ぎ 銭屋となった賽蔵42才の 明和二年(1765年)から三年の物語です。

  

江戸時代の貨幣は 一両小判が現在にして10万円、一両は銀で60匁、一文銭にすると 4000文です。 

賃料は銀で支払われ それを一文銭に両替するのが 賽蔵たちの仕事でした。
それまで 銀は量りで計量、手間暇がかかるので この年に五文匁とか形が統一されたりした。

銅が極端に少なくなったので一文銭に鉄が混ぜられる混乱が舞台になっています。

一文銭は両替商によって 100文に束ねられた。これは一クシと呼ばれバラさなければ100文で通用しました。
実ははぼ96枚で 4枚分が両替の手数料なのです。

江戸、深川が舞台、賽蔵の幼馴染との遅すぎたが成就する春も絡んで 読ませてくれました。



     by  風呼
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『 だいこん 』  山本一力著

2022-02-21 00:06:43 | 
明和元年(1764)浅草並木町生まれの つばき の 26才までが描かれています。

10代将軍家治(1760~1786)の時代は天災が多く 元号が 宝暦、明和、安永、天明 と変えられて厄を払おうとしました。
田沼意次が権勢を振るった時でもあります。

つばき 9才の時に江戸で1万人以上が焼け死んだ 明和の大火災が起きます。
炊き出しに母親と参加した つばき はここで飯炊きのうまさを認められ、母親と共に吾妻橋火の見番小屋の賄に雇われます。 つばきの父親は腕のいい大工でしたが酒の上の賭場で10両もの借金をし その利息を払うのにいっぱいいっぱいだったのです。母娘の稼ぎとしては破格でしたが 暮らしはつましいまま 給金はそっくり蓄えます。

1780年、17才になったつばきは 貯えをもとに2人の妹も一緒に 安くてうまい一善飯屋を始めます。 その屋号が  ” だいこん ”  なのです。

       

その大事な ” だいこん ” が 下町を襲った洪水(1781年)の被害にあいますが 幸いなことに店は大繁盛だったので蓄えはたっぷりありました。

父の采配により再建なった ” だいこん ” はやがて夜は酒を出すようになり 商売敵にそれを揶揄された つばきが 深川に店を構えるところで終わります。 深川の方が土地の格が上らしい。

つばきの職人型の父親譲りのきっぷのよさ が小気味いい。
商売の筋もいい。
真っすぐな人柄と器量の良さが 多くの人を魅了します。

吉原の新築なったばかりの大籬(おおまがき)が全焼、など 中後期の江戸が感じ取れます。  江戸時代って長いんですよね。

600ぺージ以上の長編でしたが 久しぶりに先を急いだ傑作です。


     by   風呼



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

カンタベリ物語  ジェフリー・チョーサー著

2022-01-23 19:09:58 | 
復活祭の頃、ロンドンからカンタベリの巡礼に向かう 同宿の30人がかわるがわる逸話を話す設定です。

イギリスの冬は長く、木の芽時のこのころは巡礼の名においての 物見遊山の旅だった。

    

14世紀末の話なので 物語は口承されたものを聞くという形でした。
チョーサ―も聴衆の反応を見ながら物語っていたそうです。

30人の面々は 聖職者が一番多く10人ほど。 騎士が3人、商人・大工・医師・コック・バースから来たおかみさん 等々。

   

話の内容はというと バーレスク と呼ばれる滑稽話が殆どです。

バーレスク とは パロディとか カリカチュアとか 食い違いから笑いを醸し出すもの。
ファブリオと呼ばれる滑稽詩の形をとられたりものもあるそうです。

額を出してはいけない修道女の 見事に広いおでこを賞賛したり、一人の娘を巡って決闘、勝った男がその後すぐ落馬して死んだ とか。

粉屋もただの教会との連絡員も みんな金をだまし取っているとか 騎士も僧も間男しているとか。


チョーサーは 10人が10日にわたって一人ずつ物語る デカメロン にならったそうです。


14世紀が身近に感じられます。
大学の面白い講義を聞いているような 斎藤勇(1929年生) という方の著。

同志社大学教授だったそう。

講義を聞いてみたかったと思います。



      by   風呼


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

" 夜たちの手帖 ”  マリイ・ロオランサン 著

2021-12-10 15:43:49 | 

石村幹子(1900~1986)さん訳の散文集です。
わずか58ぺージの こんなに小さな函入り。


    
普通本100部のうち 第42番とあります。
1960年12月25日発行。 定価300円。


内扉には何故か 三井ふたばこさんからの贈呈の署名が。

      

三井ふたばこさんは 詩人で仏文学者の 西條八十さんの長女、 詩人として有名。  石邨幹子さんとお知り合いだったのでしょうか。


ロオランサンの詩は 短く、一枚の小さな絵画のよう。 
訳者によって 読み手の心の入り方が違うと気づき  ”夜の手帖” (大島辰雄訳)の方が有名なのですが、石井幹子さんの訳で読んでみたいと思いました。
私には 石井さんの訳の方がしっくりきます。


一枚だけ挿入された 絵。
彼女独得の色彩がないのに 創作欲を掻き立てられます。

     


珠玉の本を手に入れました。

それにしても 石邨幹子さんって どんな方だったのでしょう。


     by  風呼






    
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする