1980年頃の英国 労働党政権下 低賃金とストと失業に溢れる『英国病』から 徹底して組合い潰しにかかり 鉄の女と呼ばれた サッチャー首相の時代の物語。
このポスターの中央の 寺嶋しのぶさん演じるマーリーンという女性が 人材派遣会社の重役になる。
その昇進祝賀会に呼ばれたのは ポスター左上より時計回りで 麻美れい演じる19世紀末の女性旅行家 イザベラ・バード。 彼女は当然日本にも来ていて 息子ほどの年齢差の通訳との恋を描いた 中島京子作『イトウの恋』(2010.11.26 当ブログに読後感を載せています) のモデルにもなっています。
小泉今日子さん演じる 13世紀末『とはずがたリ』を著した二条。
性の手ほどきを受けた二条の母親に恋した後深草院に 母の代わりのように 4才から入内して性のおもちゃになりながら 数々の男に弄ばれ 晩年 諸国を巡礼した人です。
次は ウエートレス役の 池谷のぶえさん。
鈴木杏さん演じる 貧農民の娘が見初められ 夫となった侯爵に これでもかこれでもかと 愛と忠誠を試される 「カンタベリー物語」のグリゼルダ。
渡辺えりさんは 果敢に侵略と性差別に立ち向かう 1562年オランダのブリューゲルが描いた絵の中の 「悪女フリート」
圧巻は9世紀 男装してローマ法王となった ヨハンナ。 神野三鈴(かんのみすず)さんが演じられます。 聖列行進中に 子を産み落とし 即 馬引き投石の刑で死にました。
5人の猛女が これでもかと自分を語ります。 人の話を聞いているようでいて 自分の話の続きしか喋らない 同時に何人でも喋る 女性独得の会話です。
それぞれ喋るだけ喋ったら 場面転換 人材派遣会社のオフィスです。
有能なワーキングウーマンが描かれます。
寺嶋しのぶさん以外は 何役もやります。
労働者階級出身の 寺嶋しのぶさん演じるマーリーンには秘密がありました。
17才の時に産んだ娘がいたのです。 子に恵まれない姉に引き取られていましたが
普通の子とは少しずれている。
夫にも去られ貧困の中でその子を育てている姉は マーリーンからの仕送りを拒否している。 一風変わった子を 姉は姉なりに愛しているのですが 妹との生活のギャップ、 アル中の父と父の暴力に苦しんでいた母親を見捨てられなくて 抜け出せなかった自分の境遇への苛立ちを その子にぶつける。
この舞台に 結末はありません。 優しい叔母さんを頼ってロンドンに母親に内緒で一人で出て行く子も その叔母(実は母親)に 「レジ打ちがせいぜいでしょう」 と言わせる。
劇の最後は マーリーンの子が 「母親がマーリーンに会いたがっている」 と嘘の電話をして マーリーンを実家に呼ぶ ロンドンに家出をするきっかけになった夜の場面に時間を戻して 突然終わります。
渡辺えり扮するアンジーに 「怖いよ」 と言わせて。 (このアンジーには 人と違った能力があり やがてやってくるIT時代の寵児となる予感が私にはしました)
なぜトップガールが この5人なのか、 なぜこの5人がこの劇に必要だったのか。
(作家 キャリル・チャーチル(1938~)の興味深い感性です)
女の社会進出には かくも長き年月と私生活の犠牲が必要だったと知らしめたいのか。
3役を完璧に演じ分けた 麻美れいさん、 アンジー役に存在感を発揮した 渡辺えりさん、 清楚なグリゼルダも 男役のタカラジェンヌのようなワーキングウーマンも
将来を感じさせた 鈴木杏さん、 何をやっても許せちゃう キョンキョン。
寺嶋しのぶさんは ほっそりと手足が長く スタイルが良すぎて 表情の豊かさを見落としてしまいそう。
法王役を熱演 神野三鈴さん、 芸達者の見本 池谷のぶえさん 有難う。
難しい劇でしたが 楽しめました。
風呼r でした
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