ご存じ歌舞伎十八番の内 『勧進帳』です。
大河内伝次郎の弁慶、志村功、森雅之、強力にエノケン(榎本健一 昭和の喜劇王)というので 見てみました。
勧進帳の強力(ごうりき)といえば 源義経のこと。
深編笠の義経をエノケンがどう演じるのか興味津々だったのです。
が、エノケンは正真正銘の 義経一行にやとわれた強力役で 私の知っているひょうきんなエノケンそのもの。
土地の事情に詳しい強力は 七人の山伏が義経一行で 安宅の関でうち捉えるられると知っていました。
弁慶は七尺(二メートル余)もある乱暴な大男だと思っていましたので 自分が案内しているのが そのお尋ね者だと暫く気づかなかったのです。
七人 ?
はて 数えてみるに 義経と弁慶、あら 四天王ではなく五天王です。
歌舞伎ではきっちり四天王なのですが。
もともと能の『安宅』では 一行は十二、三人と 謡われているそう。
実際舞台に登場するのは 七、八人らしい。
この映画に登場するのは 亀井六郎、伊勢三郎、片岡八郎、駿河次郎、常盤坊海尊 です。
歌舞伎では 伊勢三郎か常盤坊海尊が ないらしい。
私が見た歌舞伎での勧進帳では 常陸坊海尊で いつも白髪の老人でした。
四人のうちひとりが老人だと バランスがいい。
志村喬は 片岡八郎、 森雅之が 亀井六郎です。
常陸坊海尊は 老人ではありませんでした。
1945年9月制作と タイトルにあります。
GHQを恐れた 東宝が 実際に公開したのは 1952年の 4月だったそうです。
大河内伝次郎が圧倒的な弁慶です。
志村喬も 森雅之も 義経役の岩井半四郎も 何処? というくらい霞んで見えます。
何で唐突に エノケンなのかな? スクリーンでも エノケンはエノケンにしか見えないし。
冨樫の振る舞い酒に促されて 弁慶より前に踊ったりして。
どじょう掬いのようだったりして。
大河内伝次郎の重厚さに 勝っているのは エノケンだけ。
ミスマッチそのもののキャスティングに思えるが 黒澤監督はそれが狙いだったのかも。
題名の ” 虎の尾を踏む男達 ” は 謡曲『安宅』のキリ(最後の部分)に 「関守の人々、暇申してさらばよとて、笈をおっ取り肩にうちかけ、虎の尾を踏み毒蛇の口を逃れたる心地して、陸奥の国へぞ下りつる」 から来ているらしい。
by 風呼
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