男の子は 不思議な生き物だ。
日常生活では 女の子の比ではない幼さを見せるが 大事なところで
大人たちをはっとさせる 選択をする。
特に10才、 小学4年生が鍵で この時期に目覚めた子は どんどん
大人びていく。
この小説は 父親を6才の時に亡くし 懸命に働いて少年を育てる 母親と
夫を失くし 舅の介護をする祖母と 少年の話です。
寝たきりの曽祖父と祖母 少年の母と祖母、少年で繋がっている関係が
曽祖父の死により リセットされようとします。
10才は又 中学受験をするものが 熟に行き始める年でもあります。
少年の住む山口県でも クラスの半分は塾通いをするようになります。
一緒に釣りをした仲良しも塾に行き始めますが 少年は行きません。
”第三紀層” とは 地球が出来た6500万年から180万年前の 日本列島が
出来たころの地層で 石炭を発掘する800メートル地下の層。
96才の曽祖父との会話は 戦争と炭鉱と 唯一の共通の 釣りの話でした。
チヌ(黒鯛)
第三紀層の魚
曾じいちゃんが死んで暫くして
僕は いつもの海峡に釣りに行った
とうとう曾じいちゃんに
チヌは見せられなかったけれど
40センチはある
今までで一番大きいコチを釣ったんだ
クーラーボックスに入れて家に持ち帰っても
そいつは暴れていた
黒くて大きくて
曾じいちゃん
きっとこいつは第三紀層の
石炭だったんだろうよ
何だか涙が出てきた
吊り上げた魚が
チヌではなかったから
コチがあまりにも大きくて
驚いたから
それが 時季外れだから
いつも対岸で 僕に嫌味ばかり言っている
男が 網で掬ってくれたから
曽祖父が死んだから
東京へ 引っ越すから
苗字が 変わるかも
知れないから
苗字が変わると
どう呼ばれるか 分らないから
東京では 塾に
通わなければならないかもしれないから。
コチ
by 風呼