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坂本龍一/Life in Progress(Disc.1)

2005年10月17日 23時42分14秒 | クラシック(20世紀~)
 坂本龍一のサントラを何枚か聴いていたら、何故だかアート・オブ・ノイズの「ドビュッシーの誘惑」を思いだし、それについて昔書いたレビュウを読み返してもたら、これと同じコンセプトで、本作が作られていたことを思い出したので、これまた久々に聴いてみた。ご存じのとおり、本作は彼が1999年につくり、それなりに話題にもなった例の現代オペラ「ライフ」のシンセ版である。おそらく、制作ブロセスで本番前にとりあえず譜面をシンセで演奏してみました....みたいなものだと思うが、とりあえず、箱庭的に20世紀の音楽を振り返るというコンセプトからすると、シンセを使った疑似本物的なチープな音色の方が、個人的にはあっていると思う。もっともオペラの方はほとんど聴いていないので、あまり胸を張って断言はできるものでもないのだがいのだが。

 アルバムは2枚組で、前述の通りこの作品には「20世紀の歴史を音楽の変遷と共にに振り返り、後半でその未来を展望する」みたいなコンセプトがあったように思うのだが、今回聴いても素晴らしいのはディスク1の「20世紀の歴史を音楽の変遷と共に振り返る」である。このディスクは大きく分けて3部に分かれていて、一曲目は19世紀末の音楽的革新のひとつである無調音楽を再現したと思われる「Door Open」かなら始まる。ほとんどピアノ・ソロだが、もろにベルク風な退廃的ムードが充満した曲調で、ここで一気に20世紀初頭のウィーンかなにかに連れていかれような気になる。
 2曲目の「序曲」はドビュッシー的な香りのするピアノ・ソロに始まり、それがオケに引き継がれる序盤から、ストラヴィンスキーの「春の祭典」のパロディみたいな音楽になり、そのまま新古典派風に音楽の温度を下げたところで、お次はヴァレーズ的な音響となったところで終わる。時代的には第二次大戦前といったところだろう。
 3曲目の「戦争と革命」では、モノローグ風なSEをコラージュしつつ、ブーレーズやノーノを思わせる12音音楽、バルトーク風に沈痛な音楽やトーンクラスター風な表現が続く、このあたりは戦争の負のダイナミズムを象徴しているのかもしれない。その後、けっこう長目のフランス語のSEが続くとコラール風というか鎮魂歌のような旋律が登場、これは終戦を意味しているだろうか。
 4曲目「科学と技術」では、SEとチェロが奏でる物憂げな旋律をバックにした、タイトルとは裏腹なちょいとロマンティックな曲調だ。やがて、曲は再び12音風な音楽となる。ミュージック・セリエルとかああいったスタイルに近い音楽かもしれない。お次はいわゆるケルン放送局でお馴染み?の「電子音楽」となり、シュトックハウゼンみたいなトーンクラスターも登場し、それが矢継ぎ早にミニマム・ミュージックに変移したところで終了。時代は戦後をどんどん進んでいったところで終わる。

 というワケで、このティスク1、いろいろな解釈は可能だと思うが、やっぱこれはどう聴いても20世紀の音楽のレトロスペクティブだ。おそらくこれは坂本の意図もそうだったのであろう。その意味でこれは「現代音楽図鑑」なのだろうと思う。

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