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BILL CHARLAP Trio / Live at the Village Vanguard

2009年12月09日 23時59分28秒 | JAZZ-Piano Trio
 一昨年出たビル・チャーラップのレギュラー・トリオによる目下の最新作、しかもヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ盤である。ジャケットは斜め前方からピアノを弾いているチャーラップを、ブラウンを基調としたトーンで渋く捉えたもので、いかにもジャズ的な気取りとカッコ良さを感じさせるものになっている。まぁ、これだけのいいお膳立てがそろっていると、なんだか聴く前から「これは名盤です」的なオーラを感じてしまうくらいだが(笑)、実際聴いてみると、これが期待どおりの素晴らしい内容になっている。お世辞でもなんでもなく、「ひょっとして、これチャーラップの最高傑作?」などと思ってしまったくらいだ。
 いや、ジャズに関しては若年寄なチャーラップだからして、本作もライブだからといって、特段エキサイトしてみたり、長大なインプロを展開してみたりという訳ではない。表向きはいつも通り、渋い選曲で、落ち着きすぎるほど落ち着き払った演奏に終始しているといってもいい。だが、ライブ・レコーディングという環境が作用したのだろうか、いつもよりほんの少しトリオ全体の緊張感が高く、曲毎の緩急の差もいくらか大きくとっているのが、実にいいムードを醸しだしているのである。

 1曲目の「Rocker」はこのトリオ初期の「All Through The Night」を思わせる(ちなみにこの演奏は私がチャーラップに惚れ込んだ最初の演奏でもある)、端正なスポーティーさと豪快なスウィング感をブレンドしたアップ・テンポの作品で、このトリオのもっともベーシックな良さをまずは楽しませてくれるし、続く「ニューヨークの秋」はビアノ・ソロに続いて、これまた彼ららしい「普通よりかなり遅いバラード演奏」を展開、弛緩するすれすれのところで手綱がしまっているのは、このトリオらしい律儀さ、端正さがあって思わず聴き惚れてしまう(両ワシントンのリズムがなんともシックだ)。
 数年前はチャーラップといえば、良くドライブするアップテンポの作品にばかり耳がいってしまったものだが、改めて聴くとこの手のスローバラードにある、ぽってりとした温度感のようなものが、やけに魅力的だ(自分も歳をとったというとこか-笑)。この曲などお馴染みの曲ということもあって、このアルバムでそうした魅力を感じる最たるものといえそうだ。うーん、実にいい。4曲目の「Lady Is a Tramp」もよくスウィングした演奏だが、ここでは原曲の崩し方がいかにもチャーラップらしく洒落ていていいし、彼らにしては多少羽目を外したような自由度の高いインプロ(ケニー・ワシントンのベースがいつになく遊んでいる)もライブらしい。

 「It's Only a Paper Moon」「My Shining Hour」は、ヴィーナスに残したこのトリオ唯一のアルバム「スワンダフル」でも演奏していたもの。前者はほぼあの時の同じ趣向で、後者はあれをさらに極限まで速くしたような、実にスポーティー極まりない演奏になっている。 7曲目の「All Across the City」は、少しビル・エヴァンスを思わせる詩的なバラード演奏でじっくりと聴かせてくれる。8曲目の「While We're Young」はラテンのリズムをデフォルメしたおもしろい演奏で、チャーラップがごく初期の頃に見せていた、音楽主義的な実験精神が見え隠れしている感じだ。ラストの「Last Night When We Were Young」は再び「普通よりかなり遅いバラード演奏」で締めくくる。
 という訳で、前作の「プレイス・ガーシュウィン」が多少他流試合だったようなところがあったのに比べると、こちらは久々にトリオ・スタイルによる正統派のチャーラップを見せた傑作といえるかもしれない。前々作のバーンスタイン集がちと地味だっただけに、なおさらである。ちなみに録音はライブとは思えないほど整ったバランスだ。スタジオに比べるとほんの少しレンジが狭いように思えないでもないが、拍手以外の会場ノイズは僅少、SN比もよく、ぱっと聴きスタジオ録音と思えるほどだ。

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1 コメント

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TBお願いします (kumac)
2011-02-06 11:00:13
 本当に録音がいいですね。必要以上に弾かない、チャーラップの演奏も良いですね。トラバ、お願いします。
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