Blogout

音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

The BILL EVANS Trio / Moon Beams

2006年02月24日 23時10分56秒 | JAZZ-Piano Trio
夭折したスコット・ラファロの後任としてチャック・イスラエルが参加したビル・エヴァンス・トリオによる確か最初の録音。同時期の録音としては「ハウ・マイ・ハート・シングス」があって、あれが比較的明るいスウィンギーな曲を集めていたに対して、こちらは全編ほぼバラードで構成されているのが特徴です。また、物憂げな女性が逆さまに写っている、ちょっと退廃的なジャケットも印象深くて、個人的には最もよく聴くビル・エヴァンスのアルバムになっています。

 音楽的には前述のとおり、ほぼミディアム~スローのバラード系の作品ばかり集められていて、ともすれば瞑想的な音楽になる寸前のところで、かろうじてトリオ・ミュージック的なインタープレイを成立させているところが印象的で、よくも悪しくも抑制された美しさを感じさせるのが特徴となっています。このあたりはレコーディング・セッションからバラード集めたからそうなったのか、新加入のチャック・イスラエルのせいなのか、それともラファロを失ったエヴァンスの虚脱感なのか、はたまたジャケの暗示効果なのか、私自身よくわからないところもあるのですが、とにかく数あるビル・エヴァンスのアルバムでも、一種独特の感触を感じさせるアルバムになっていることだけは確かでしょう。

 ビル・エヴァンスの音楽を称して、よく「耽美的」とか「詩的リリシズム」とかいう形容詞が使われますけど、このアルバムの場合、まさに「耽美的」という言葉がもっとも相応しい仕上がりではないでしょうか。このアルバムの場合、渋目とはいえ比較的有名なスタンダード・ナンバーが並んではいますが、聴いていて不思議と「へぇ、こう解釈しますかぁ」とか「誰々の演奏に比べて、エヴァンスの場合....」などという思いがほとんどよぎらないんですね。いってしまえば、スタンダード・ナンバーはたんなるきっかけに過ぎなくて、ひたすら自己の世界に沈み込んでいるという感じといったらいいか。

 ちなみにドラムスのモティアンは全編に渡ってブラッシュ・ワークに徹していますし、イスラエルもエヴァンスに楚々と寄り添っているかの如きサポート振りで、そうしたところもこのアルバムの耽美な印象を倍加しているといえるかもしれません。BGMとして軽く流していたつもりが、ふと気がつくと作業を止めて、陶然と聴き惚れている....そんなアルバムです。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« キース・ジャレット・トリオ... | トップ | R.シュトラウス 家庭交響曲/... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

JAZZ-Piano Trio」カテゴリの最新記事