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とりあげている曲は、ジョビンやカルロス・リラ、イヴァン・リンスなど新旧とりまぜたブラジリアン・ソングとオリジナル数曲。トリオ・フォーマットはこれまでのディショネット+ゴメスと、前作から登場したアースキン+ジョンソンのふたつのトリオがほぼ均等に配分されているのが注目されます。これが何を意味するかというと、早い話が彼女のもうひとつの路線であるフュージョン的なサウンドが、こちらのピアノ・トリオ路線に浸食してきたことを伺わせるということで、実際このアルバムではシンセサイザーも何曲かで使用されたり、コンテンポラリーなリズム・パターンが出てきたりします。前作でちらっとみせた音楽的な広がりが更に大きくなっているともいえるでしょう。ちなみにこうした要素はアースキン+ジョンソン組の曲で顕著であり、彼らがそもそも彼女のフュージョン・アルバムに参加してきたメンツであることも考えれば、このアルバムで彼女がふたつの路線をひとつに収束させようと目論んでいたことも想像に難くありません。
とはいえ、昨日レビュウした「ロング・ストーリー」のようなひたすらスポーツ的快感を追求したフュージョンに比べれば、まだまだピアノ・トリオ然とした作品ではありますが、とりあえずふたつのトリオを使い分け、多彩な楽曲を収録しつつ、イリアーヌ・エリアス色に全体を染め抜いているのは見事。前作まで見られたちょっと秀才臭さが出たトリッキーなアレンジも姿を消し、女性らしくエレガントで控えめ、あくまでも自然体ながら、独特の流動感を感じさせるピアノも、このアルバムあたりでいよいよその個性を確立したような気もします。そのあたりは冒頭の「ブラジル」や「ジェット・サンバ」あたりに歴然としていますし、「黒いオルフェ」や「ソー・イン・ラブ」の歌い回しも前作より精妙さを増し、なおかつそこそこにかとない情緒を漂わせているあたりに、彼女の成長を感じさせるに充分の出来といえましょう。
という訳で、個人的にはこの路線だとこれが一番好き。選曲としては第1作目がいいんですけどね....。このくらい熟成したピアノでもう1回ジョビン集やってくれないもんでしょうか。
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