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ニューヨーク・トリオ/ビギン・ザ・ビギン

2009年11月09日 01時04分08秒 | JAZZ-Piano Trio
 先日取り上げた「ラブ・ユー・マッドリィ」の二作あとのアルバム。もっともこの間に入る「星へのきざはし」はリクエストに応えて作られた一種の「企画物的なお仕事」っぽいから(同じ2005年に発売されているし)、これがニューヨーク・トリオの第4作というべきなのかもしれない。で、こちらはチャーラップお得意の作曲家シリーズで、前作のエリントンに対し、今度はコール・ポーターである(ちなみにこのあとはリチャード・ロジャース、ブルーノートの方ではガーシュウィンをとりあげることなる)。コール・ポーターといえばジャズ・ミュージシャンに好んで取り上げられるスタンダード・ナンバーの大御所であり、当方もかつてエラ・フィッツジェラルドのソング・ブック集をけっこう聴き込んでいるおかげか、聴き染みのあるナンバーがずらりと並んでいるせいで、こちらは気負いなく素直に楽しめた。

 冒頭は特に有名な-とりわけ日本で好まれていそうな-「帰ってくれたらうれしいわ」にはじまる。ニューヨーク・トリオとしては「過ぎし夏の想い出」以来の再演となるが、長目のピアノ・ソロからシャレたフックを経由してトリオへと移行するプロセスや後半のピアノとドラム8バース・チェンジなど前とほぼ同じパターンであるものの、前回に演奏に目立ったテクニカルなメリハリを後退させ、落ち着きやムーディーさ表にだしたでかなり深みを感じさせるのが、このトリオのほどよい熟成を感じさせる。チャーラップらしくゆったりとしたテンポで解釈された「ソー・イン・ラブ」もいい。この曲はコール・ポーターの作品でも個人的に特に好みの曲なのだが、ミディアム~アップ・テンポで演奏されることが多いこの作品をぐっとスローに演奏してしまう手管はチャーラップらしいところだし、また中間部移行の変幻自在なテンポの変更も楽しいところだ。前作のバラード路線を再現したようなムーディーな「ビギン・ザ・ビギン」もじっくり楽しめる。

 また後半はスウィンギーな「フロム・ジス・モーメント・オン 」、「イー・ジー・トゥ・ラブ」がフィチャーされ、その間にはピアノ・ソロでたっぶりと歌った「ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングス」も聴かれる。ラストは私の大好きな「エブリタイム・ウイ・セイ・グッバイ」 で、これまた星空を見るようなきらめくような感覚としっとりしたムーディーさがあって、実に「聴かせてくれる」。
 そんな訳で、このアルバムはとても楽しめる内容だと思う。また、以前のアルバムに比べて個々の曲のクウォリティが一段上がっているような気もしないでもない。かつてはチャーラップのスウィンギーなところに惹かれたものだが、気がついてみたら彼のバラード演奏の巧みさに聴き惚れてしまっているというのも、そういうところが作用しているのかもしれない。

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