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ショスタコーヴィチ ヴァイオリン協奏曲第1番/バティアシュヴィリ、ジンマン&N響

2009年02月26日 23時15分45秒 | クラシック(20世紀~)
 スゲー、凄すぎる....ショスタコのヴァイオリン協奏曲第1番が、かくも素晴らしい名曲だったとは、3日ほど前に私は録画してあった第1637回N響定期公演を何気なく拾い読みならぬ拾い観をしていたのだが、デビッド・ジンマン指揮、ソリスト、リサ・バティアシュヴィリによる演奏を聴いて、「なんだ、なんだ、この曲は!」と目をむいたのだった。ただ、その日は夜も遅かったので、翌日、仕事から帰って、今度は最初からじっくりと観てみたのだが、それはもう冒頭から興奮状態で、すっかりこの曲に魅了されてしまったのであった。もともと私はソロ・ヴァイオリンというが苦手で、ヴァイオリン協奏曲もせいぜいブラームスとベルクを除けば、ほとんど楽しめたためしがないのだが、この曲はそういう観念を吹き飛ばすほどの興奮を感じた。
 だいたい私の音楽的な感性は至って鈍感な方なので、ことにクラシックなどともなれば、一聴して魅了されるなどということは、ほとんど皆無、あったとすればほとんど僥倖に等しい出来事なのだが、今回実に久々にそうしたわくわくするような感覚を味わったといえる。個人的にはまさに何年に一度のイベントである。

 ざっくりと各楽章をさらってみたい。まず第一楽章では私の大好きなバルトークの「弦チェレ」と気分的に共通するような沈痛だが思索的で、なにやら深く沈み込んでいくような瞑想的な味わいに引き込まれ、続くスケルツォである第二楽章ではどう見ても、どう聴いても(笑)、やたらと難易度の高そうなヴァイオリンのフレーズが、ショスタコらしい諧謔的でぐるぐる回るようなめまぐるしさの中にこれでもかというほどに展開されていて、ある種スポーツ的な爽快感とともに最近あまり感じたことのない音楽的な興奮を感じた。
 また、第三楽章はパッサカリアで重厚な雰囲気の中で進んでいくが、凄いのはこれと切れ目なしに進む長大なカデンツァで、理知的な怜悧なムードを保ちつつ次第に高調していく展開が文句なく素晴らしい。私はヴァイオリンの奏法のことなどさっぱりわからないが、このカデンツァはおそらく古今のあらゆる難易度の高い奏法が駆使されているような感じであり、名技性という点でもある種突き抜けた凄みを感じさせる。
 最終楽章は第二楽章のムードに戻って、華やいだムードの中でソロもオケもそのテンションが最高潮に達する賑々しい楽章だが、ここでもヴァイオリン・ソロが天馬空を行く的な奔放さで暴れまくって壮絶な展開となり、聴いているこちらの興奮状態もすごいことなってしまう。まさに「スゲー、スゲー」の連発なのだ。

 なんだが、あまりに興奮してほとんど訳の分からない文章になっているが(笑)、とにかくそのくらい凄かったということである。「なんだ、ショスタコのヴァイオリン協奏曲の一番なんざ、昔から有名な曲じゃん」といわれるかもしれないが、ショスタコに関しては交響曲の方を何曲かかじって、そのあまりにシニカルな味わいに何度も玉砕してきたところなので、個人的にはまさかショスタコのカタログ中、よりによってヴァイオリン協奏曲がこんなになっているとは思いもしなかったといったところなのである。
 ちなみに私が観た演奏だが、リサ・バティアシュヴィリというロシア系(?)の女流ヴァイオリニストの魅力も大きかったと思う。すっくと伸びた長身の体をダイナミックに使い、技術的には最高難度に違いないこの曲をこともなげに(汗一つかかない-笑)ねじ伏せていく様は壮観で、ヴィジュアル的にもいうことなしのものがあった。また伴奏がジンマンとN響というどちらかといわずともロシア風味とはほとんど対極にあるような淡彩なサウンドだったのも、彼女の特性をいやおうなく際だたせていたように思う。

 ちなみに掲載したジャケはリサ・バティアシュヴィリではなくて、サラ・チャンの同曲のものである。翌日、ショップに彼女の演奏がないものかと探してみたのだが、どうもバティアシュヴィリまだそれほど大スターでもないらしく、めぼしいものがこれくらいしかなかったので、とりあえずこれを購入して昨日今日と聞いているところである。ちなみにこの演奏だが、チャンのヴァイオリンは美音で繊細、淡麗ないかにも女性らしい趣なのはありがちとはいえ、とにかくテクニックが恐ろしいくらいに完璧で、ラトルとベルリンの共々、水も漏らさぬパーフェクトな演奏といったところで、こちらも十分に楽しんでいるところなのだが、やはりバティアシュヴィリの演奏から感じた、パワーだとか推進力みたいなものはイマイチといったところか。
 では、ここまで書いたところで、今さっき届いていたばかりのヒラリー・ハーンの同曲を次に聴いてみることするか。はてさて、こちらはどんなもんだろう?。

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2 コメント

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セルゲイ・ハチャトリアン (角皆優人)
2009-10-30 10:57:19
 ぜひセルゲイ・ハチャトリアンをお聴き下さい。素晴らしい演奏です。
返信する
re:セルゲイ・ハチャトリアン (BlogOut)
2009-11-07 23:14:09
コメントありがとうございます。
セルゲイ・ハチャトゥリアンのショスタコは聴いたことがありません。
調べてみたらマズアとフランス国立管弦楽団を従えたCDがあるようですね。
早速購入してみたいと思います。情報ありがとうございました。
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