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内容的には、バックにドラムやパーカスが入っておらず(実は一部入るのだが)、坂本のピアノ+J.モレレンバウムのチェロだけでシンプルかつスタティックに演奏されているため、ボサノバのリズムにほとんどこだわりを見せず、隙間だらけアンサンブルの中、淡々とジョビンの世界を歌い上げる佇まいは、ラウンジ風な軽薄さ、おしゃれさを通り過ぎて、もはやクラシック室内楽か歌曲を聴いているような格調高さがあり、もちろん坂本のピアノも非常にクラシカルである。
坂本は1990年代の中盤あたりから生楽器によるサウンドに傾注していた時期にあたり、本作などもそれにの一環として捉えることができる作品といえないこともないだろう。本作のアレンジも随所に「1996」と共通する雰囲気が感じられる。ただし、ここではジョビンの作品、そしてモレレンバウム夫妻の得も云われぬ存在感のせいか、坂本的な体臭、アクは良い意味で隠し味となり、全体としては非常にスタティックなボサノバとして楽しめる(いささか気取りが鼻につくというムキもあると思うが…)。
パウラ・モレレンバウムのボーカルは、しっとりとして物憂げ、そして軽やかさも不足しない…という、まさにブラジルからでしか生まれ得ないようなボーカルで、本作の大きな魅力となっている。こういうクラシカルなアレンジで歌っても素晴らしいのだから、もう少しオーソドックスなバックによる演奏だと、どんな表情を見せるか興味深いところでもある。本作に続いて次にリリースされたライブや坂本抜きの演奏というのも聴いてみたいものだ。
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