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ウィントン・マルサリス/シンク・オブ・ワン

2009年11月27日 00時45分38秒 | JAZZ
 こちらは82年の第2作。諸先輩方に招いて多少顔見せ的なところがないでもなかった前作の内容からすれば、こちらが実質的なデビュー作といえるかもしれない。出来の方も前作より数段良い仕上がりだ。メンツはブランフォード・マルサリス(サックス)、ケニー・カークランド(ピアノ)、ジェフ・ワッツ(ドラムス)、レイ・ドラモンド、フィル・ボウラー(ベース)という、第一期マルサリス・バンドの面々だが、おそらく当時はマルサリスを筆頭に「60年代の新主流派の後継者」たらんとして、音楽的な理念を共有していたのだろう。マルサリスの音楽だからあくまで理知的だが、それでも今このアルバムを聴くと、当時のこの世代の持っていた意気軒昂さがけっこう伝わってきたりして、実にフレッシュである。

 1曲目の「ノーズ・モウ・キング」は久々に聴いたが改めて圧倒的された。短いモチーフをテーマに即座にインプロに移行、ここでのマルサリスの超高速フレーズ、バンド全体のスピード感、パワーは凄さまじく、この時期のマルサリスの音楽の持つ「無敵な人」ぶりが良く伝わってくる。音楽はいったんテンポを落としブランフォードがソロを担当、その最後にピアノが入ってくると、再びテンポを上げて本格的なカークランドのソロへと雪崩れ込んでいくテクニカルな構成もいうことなしだ。2曲目「フューシャ」はトランペットとサックスが微妙なハーモニーを織りなすまさに新主流派的作品で、カークランドの印象派風なピアノがいい。3曲目「マイ・アイディアル」は比較的オーソドックスでリラックスした4ビート作品。4曲目「ホワット・イズ・ハプニング・ヒア」も「フューシャ」同様新主流派的作品、ピアノ~ベースとソロが続くと一旦テーマが回帰して、ウィントンとブランフォードなソロを同時進行しつつフェイドアウトするちょっと変わった構成だが、このままあと2分くらい続けてもよかったかな。

 5曲目のタイトル・チューンはその後マルサリスが折りにつけ開陳することになるブルース、ルーツ系(ディキシー)の音楽的要素を見せた曲。どことなくユーモラスでハードボイルドな表情はマルサリス独特なものだが、個人的にはこういう作品のおもしろ味を未だに感じることができないのは残念だ。6曲目「ザ・ベル・リンガー」は、新主流派的作品で、どことなくトロピカルな曲調のせいか、「処女航海」の頃のハンコックの影響がちらつく。ベースがやけにオールドスタイルな8ビートやボサノバに接近したりするポップな感触は60年代のジャズロックの線だろうか。7曲目「レイター」はイントロこそルーツ系な感じだが、本編はばりばりとソロが展開する正統派の作品。 ラストの「メランコリア」はもろにマイルス風のミュートをフィチャーしたバラード作品。こういう曲でのマルサリスはほぼ文句のつけようがないソロを展開する。

 という訳で、こちらは久しぶりに聴いたらこちらの作品は実によく楽しめた。ひょっとすると十数年前より楽しめたかもしれない。きっと、あの当時はこちらが求めている「マルサリスのジャズ」が、例えば「ノーズ・モウ・キング」みたいなテクニカルでスピード感ある4ビート作品ばかりだったのがいけなかったのだろう。今ではこちらジジイになって(笑)、彼がやっている音楽にもう少し寛容になったのが幸いしているのかもしれない。ともあれ、しばらくウォークマンにでも入れて、繰り返し聴いてみようと思う。

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