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バーバー ヴァイオリン協奏曲/ハーン、ウォルフ&セントポールCO

2010年03月19日 23時24分47秒 | クラシック(20世紀~)
 さて、バーバーのヴァイオリン協奏曲の真打ちと、個人的に睨んで購入してきたのが、このヒラリー・ハーンによる演奏だ。彼女の個性といったら、まずは機械の様に正確無比なテクニック、ある種アメリカ的といってもいいような屈託していない明るさのようなもの、そして情緒面ではむしろストイックともいえる端正な表情を見せるあたりにある思う。こうした個性を考える、バーバーの温度感の低い、自然主義的なおおらかさに繊細なリリシズムが混ざり込んだよう音楽は、まさに彼女にうってつけではないか....と考えた訳である。
 で、実際に聴いてみると、これが頭で描いていた以上にぴったりなのであった。ヒラリー・ハーンといえば、しばらく前にエルガーの協奏曲を聴いたけれど、彼女のクールな情緒は、あの重厚な曲を前にしてそれがいささか裏目に出たところが感じられないでもなかったけれど、バーバーのようなら音楽なら、そういう不足感は全くなく、まさに知情意が全て揃った理想的な演奏のように感じられる。第一楽章では冒頭の歌い出しから、例によって、粒立ちがパーフェクトに揃った均質なフレージングから、この曲の早春のような風情を、実に女性らしい優美さでもって表現している。

 第二楽章では、彼女のコントロールの効いたストイックな情緒が際だった美しさを発揮している。この楽章はなんなら映画音楽のように情緒たっぷりに演奏することだって、ひとつの解釈としてはありえるとは思うのだが、ハーンの場合、中間部の比較的情感的に昂ぶるようなところも、そのプロポーションを乱すことなく、まるでアポロのように均整のとれた演奏に終始している。こうした演奏の所作が楽曲キャラクターを全く裏切っていない点は、まさにこの演奏の妙なる部分であろうと思う。
 第三楽章はある意味、この演奏のハイライトだ。この無調で作られた、やや捉えどころがない楽章を彼女は、その輝かしいテクニックでまるでメンデルゾーンのそれの最終楽章のような名技性たっぷり、極上のエンターテイメントにしてしまっている。この曲の演奏も既に何種類か聴いてきた訳だけれど、この最終楽章の音楽的おもしろさ、あるいは音楽としてのハイライトや魅力をこれほど解き明かした演奏もないのではないか。そのくらいこの演奏はハーンの独壇場である。これまで最終楽章の「座りの悪さ」のようなものは何度か書いてきたところだが、この演奏についてはそうした違和感はほぼ雲散霧消である。という訳で、この演奏、全編に渡って素晴らしいとしか云いようがないもので、ますますヒラリー・ファンが昂じてしまいそうである。

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