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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

ヘンリー・マンシーニ/酒とバラの日々

2007年02月18日 01時11分00秒 | サウンドトラック
 10年くらい前に出たヘンリー・マンシーニの3枚組のボックス・セットです。マンシーニという人の作った映画音楽を私は大好きなのですが、当時から市場に出回っているのはマンシーニが自らオケを指揮したイージー・リスニング風にまとめたものか、超有名どころのサントラばかりで(これは多少好転したとはいえ現在でも変わっていない)、彼が担当した膨大なサントラ群の大半はCD化されておらず、いつも欲求不満に感じていたところに、全曲オリジナル音源、リマスター、あの頃、流行していた豪華なボックス・セットという形でこのアルバムがリリースされた訳ですから、マンシーニ好きとしては、もちろん飛びつきました。

 しかし、実際聴いてみると、どうも選曲にいささか不満があったんですね。私はマンシーニというと、イタリア的な優美な旋律+オシャレなジャジーっぽさ+エレガントなコーラスみたいなところに彼の真骨頂があると思っていたのですが、このアルバムが出た頃は、「ピーターガン」とか「ピンクパンサー」といった、ジャジーといってもぐっとアーシーな、例えていえばギャング映画のサントラみたいなビッグ・バンドをフィーチャーした作品に人気が集中していたようで、このアルバムもどちらかというとそういった作品に焦点が当たっていたのでした。もちろん、そうのうも悪くはないのですが、個人的にはそういうのはメロディックな作品を大方漁り尽くした後にでも聴けばいいや、と思っていたので、このアルバムに大量にこうした作品が収められていたのは、なんか「この選曲は続編向きじゃないの?」とった具合に、少なからず違和感を覚えたという訳です。

 なので、このアルバム買ったはいいが、あんまり通して聴くということはなくて、たまに好きな映画作品の曲をつまみ食いするといった感じだったのですが、先ほどふと気が向いてディスク1をBGMがわりに流していたのですが、この10年間でこちらのこだわりが後退したのか、非常に心地よく聴けました。「ピーターガンのテーマ」は今でもあまり好きじゃないですが、その他の曲はラウンジ風なオシャレなムードがいっぱいで、ジャジーなサウンドにストリングスがさらりと絡むあたりは、リラックスした土曜の夜に酒でも飲みながら聴くにはなかなかでした。だけど、20曲目で「ムーンリバー」が出てくると、やっぱこれがマンシーニだよなぁ....と目がうるうるしちゃいましたけどね。あぁ、酔っぱらってるな(笑)。
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John Williams / JAWS

2006年12月25日 00時32分44秒 | サウンドトラック
 「ジョーズ」は映画も傑作ですが、音楽もジョン・ウィリアムスの大傑作というぺき仕上がりです。ジョン・ウィリアムスといえば「スターウォーズ」ということになるのかもしれませんが、あまりにも有名なジョーズのモチーフはさておいても、この作品、実は非旋律的というかほとんど音響的なサウンドでもって、この映画を怖さを盛り上げているのことが、こうして音楽のみを聴くとはっきり理解できるんですね。基本的にはストラヴィンスキーの「春の祭典」をベースに、時に新ウィーン風な無調、プロコやショスタコ風なリズムを取り入れた音楽でもって全編を盛り上げています。

 ちなみに、この音楽全体に人間が表に出てくる部分は全音階風に明るく、ジョーズを描写する部分では無調や春の祭典風な感じで設計しているようですが、個人的には一番好きな部分は、ジョーズが船の横を通り過ぎ始めて全容を明らかにする部分の音楽、マーラーの6番第4楽章の冒頭を思わせる幻惑的なサウンドですが、異形な怪物に遭遇した人間の驚きおそれをよく表現しています。たとはおっかっけこのシーン、ショー舵取りの指示の的確に他のふたりが思わずほほえんで敬意を表してしまう部分、ここはスターウォーズのような明るい行進曲調で壮麗さ、ジョーズ不気味さ好対照をなしています。
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デビッド・アーノルド/007 トゥモロー・ネバー・ダイ

2006年04月18日 23時13分51秒 | サウンドトラック
 これも98年頃、書いた文章みたいです。007の音楽はこの作品をきっかけにデビッド・アーノルドがジョン・バリーのり後釜に座ったような形で継続して担当にするようになる訳ですけど、やはりこの作品の音楽が良かったからでしょう。作品仕上がりもそうでしたけど、いかにも007な雰囲気が濃厚で、この作品でピアース・ブロスナンのちょいと悪ガキ風なジェームス・ボンドも一気にハマったという感じでした。もうすぐ公開されるであろう、第21作「カジノ・ロワイヤル」でジェームス・ボンドを演じるダニエル・クレイグはどんな感じなんだろう?。

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 007シリーズの最新作のサントラ、最近、米版「ゴジラ」などを担当して売り出し中のデビッド・アーノルドがこのシリーズの音楽を手がけるのは初めてだが、かなり若いロック世代らしく、明らかにニュー・ウェイブ以降の感覚が横溢している点がおもしろい。大分前にバリー・アダムソンというマガジンの元キーボード奏者がやけにドロドロしたアシッドな仮想サントラを作ったことがあったけれど、割とそれに近い雰囲気もあるし、ハウスっぽいテクノ・サウンドも007のお馴染みのテーマも今風なカッコ良さ満開で楽しめる。

 ともあれ、例の007のテーマをやたらとアシッド・テクノな感覚で現代に蘇生させているがおもしろいし、近年いろいろなところでパクられはじめた007風な金管の咆哮をこれでもかと使うサマも、ジョン・バリー以上にジョン・バリーらしいって感じで痛快。007の音楽はバリー以外の人材はあくまでも変化を出すための薬味みたいな感じで、正直なところあまり記憶に残らないことが多いのだが、この人の場合、ご本尊ジョン・バリーが引退同然のためなのか、正統派007を継承するということがコンセプトになっているのかもしれない。とにかくツボを突きまくったという007サウンドで、これは間違いなく近年の傑作。主題歌はシェリル・クロウ(むろん、プロデュースはミッチェル・フレーム!)で、この人に起用が意外なんだか、順当な線なのかよくわからないところはあるけれど、なかなか感じは出ている。

 ちなみにほぼ同時期に発売され、イギー・ポップ、エイミー・マン、マーティン・フライなどを起用した007シリーズのカバー集 "Shaken And Strred" のプロデュースもデビッド・アーノルドでバックのサウンドはオリジナルの解釈ではなく、ほとんど「ゴージャズな再現」になっているあたりに彼の「好き者」振りを伺わせるに十分。「サンダーボール作戦」なんざ、ヴォーカルがマーティン・フライ(ABC)だもんなぁ。うー、たまんない(トム・ジョーンズが歌ったらもっといいに決ってるけれど-笑)。
 
 というワケで、007は現代にも生きてます。

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すぎやまこういち/交響組曲「ドラゴンクエスト」ライブ・ベスト

2006年04月15日 22時18分15秒 | サウンドトラック
 ちょいと前にアマゾンのマーケット・プレイスで安かったもので他のドラクエ関連と一緒に購入したものです。それにしてもこんなのまで出ているのですね。ドラゴンクエスト関連の音楽アイテムって、生オケを使った交響組曲だけでも、N響、ロンドン・フィルとあり、現在都響の再々録音が進行中となる訳で、このシリーズの人気がわかろうというものです。このアルバムは、指揮はすぎやま自身、演奏は東京交響楽団(都がつかない方)による94年の演奏で、タイトルから分かるとおり、ドラクエ1から5までの曲がまんべんなく選ばれています。ドラクエ5の曲が多いのはおそらく発売直後のこのゲームにあやかった演奏会だったからでしょう。

 演奏ですが、ライブらしくやや荒っぽいところが散見しますし、ちょいとリハ不足というか、一応、きちんと演奏はしているのですが、細部でリズムが乱れたり、金管のとちり、歌い回しにコクがなかったりしているように感じました。ちなみにこのアルバムでは拍手が一切カットされているので、一聴してライブという印象がほとんどないため、どうしてもスタジオ録音と比べてしまうと分が悪いです。
 分が悪いといえは、更に問題なのは録音、なんともそっけない音で、天井マイクから録りっぱなしみたいな、調度FM放送で聴くオーケストラ・ライブみたいな感じの音で、低音の迫力はそれなりにあるものの、全体に立体感や潤いのなさが気になりました。

 それにしても、すぎやまこういちのドラクエ・ミュージックって、バロック風なところ、映画音楽風な叙情的旋律などいろいろな要素がありますけれど、ダンジョンや戦闘の曲になると一気にバルトーク色が濃厚になりますよね。ついでにストランヴィンスキーとかヤナーチェックあたりもちらほらしたりもする。ちょうどすぎやまこういちの世代だと、バルトークがべートーべンの後塵を拝する「20世紀の楽聖」としてもてはやされた50年代あたりに音楽を学んだのかもしれず、こういうところに影響が出たりするのかな....などと思ったりもしています。ナクソスの日本作曲家選輯シリーズなどを聴いても、戦後の作品はモロにバルトークの影響下ある作品が多く、当時の日本のバルトーク・フィーバーぶりがよくわかったりしますから....。
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すぎやまこういち/交響組曲「ドラゴンクエストI・II」

2006年04月02日 15時10分02秒 | サウンドトラック
先日取り上げた「ドラクエVIII」のサントラと一緒に購入したもので、「I」と「II」の収録曲を交響組曲として、ロンドン・フィルが演奏したものだ。実はこれもまた先に取り上げたベスト盤の3枚にはここに収録された曲の6~7割方は収録されていたのであるが、このところにわかにドラクエ・ミュージックに入れ込んでいるので、きちんとまとめられた形で聴きたいという思いから購入した。最近だとブラームスのピアノ協奏曲の一番もそうだったが、またまた悪いパターンにハマっていると、我ながら思う(笑)。

 ちなみに収録曲は「I」が7曲、「II」が11曲なんだけど、ただ今「II」をケータイで攻略中なので、こっちを重点的に聴いているところ。ゲーム自体は「ロンダルキアのほこら」を超えて、「ハーゴンの神殿」に入ろうかというところで、なにしろ、このほこらはやたらと複雑で落とし穴なども多く、こんなもの昔はなんの情報もなく、よくやっていたのかと感心するくらいなのだが、もちろん今回は攻略情報を片手にサクっとくぐり抜けてしまった(笑)。それでも外の世界へ出て「果てしなき世界」が聴こえてきた時はうれしくなるんだよね。きっと、昔はきっとこの数十倍はうれしい気分になったに違いない。
 
 その時、流れる「果てしなき世界」は、このアルバムでは「遥かなる旅路」や「広野を行く」と一緒にメドレーで演奏されているんだけど、オーケストラで演奏すると原曲のハネた感じがちょいとスポイルされる感じもする。「果てしなき世界」とか「街の賑わい」といった明るい楽曲は、なぜかファンキーなリズムを多用していて(「戦い」もそう)、とてもポップな趣があるけれど、おしなべてこういうリズミックな曲はオケだとエレガント過ぎて、ポップさが今一歩出ていないという感じ。なので生オケの演奏する曲としては、「レクイエム」とか「海原を行く」みたいな壮麗な曲の方があっている感じ。うーん、やはりこういうポップさって「II」だけの世界だったのかもしれないなぁ。「魔の塔」なんて、クラフトワークの「ヨーロッパ特急」だし(笑)。

 それにしても、このほこらを抜け出たところに出没するモンスターはやたらと強い。相当に余裕をもったレベルでここに到達したにもかかわらず、力でねじ伏せようととするとしばしば全滅し、20年前からちっとも巧くならない、己のゲーム・センスの欠如を呪ったりしている訳だが、早いところフィナーレの「この道我が旅」を早く聴きたいものだ。
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すぎやまこういち/ドラゴンクエストVIII (OST)

2006年03月31日 23時48分38秒 | サウンドトラック
こちらは先ほど届いた「ドラゴンクエストVIII -空と海と大地と呪われし姫君-」のサントラ盤。今回のゲームは前作にあたるPS2版「ドラゴンクエストV」とは異なり音楽は、ほぼ全編PS2の内蔵音源を使ったものが使用されていたから、このサントラも当然の如く生オケではなくて、内蔵音源の音、つまりシンセ・サウンドになっている。ライナーを読むと、作曲者であるすぎやまこういち氏はこの作品でもって「PS2の音源のスペックをフルに引き出した」旨のことを主張しており、確かにたかだか2万円くらいのゲーム機に内蔵された音源とは思えない充実したサウンドだ。

 それにしてもPS2の内蔵音源というのは、一体どのくらいのスペックのものなのだろうか。音源そのものはもおそらく波形を合成していく、いわゆる昔ながらのシンセサイザーではなく、各種生音が基になったサンプリング音源と思われるが、バスドラの音圧とか、トライアングルなど各種金物の高域や残留ノイズからして、それほど高い周波数、ビットレートで収録されたものとも思えないが、このサントラを聴いても、アコピ、エレピ、教会オルガン、弦、金管、パッド&ヴォイス系、各種パーカスなどの音が登場することから、かなりバリエーションに富んだ音色がプリセットされていることは確かで、各種リバーブによる残響処理も入っていることから、空間系のエフェクターも何系統か搭載されているような気がする。

 ともあれバカに出来ない音源が入っている訳だ。2年ほど前「真・女神転生」のサントラを聴いた時も、内蔵音源とは思えないクウォリティーにけっこう驚いた覚えがあるけれど、「真・女神転生」の方がいわゆるロック・サウンドだったのに比べると、こちらはほぼ生オケのシミュレーションな訳で、いくら高性能といえどもローランドのSC88にすら負けるような音源一台で、ここまでやるには、かなり緻密なアレンジとブログラミングがされたのだろう。生オケに匹敵するとはいえないが、その箱庭風にカラフルでサウンドは、むしろゲームの世界に相応しいような仕上がりで、すぎやまこういち氏が胸を張って、オーケストラ版に先立ってリリースしたのも納得できる仕上がりである。

 さて音楽だが、なにしろ先週までやっていたゲームなので、どの曲も記憶は鮮明。ゲームの世界を回顧するにはこれ以上のソースはない。曲としては「この想いを」の哀しげな旋律、ミーティア姫のテーマともいえる「つらい時を乗り越えて」の気高いムード、「海の記憶」の幻想味、「対話」で甦るはつらつとした街の風景、バルトーク風な「闇の遺跡」あたりが良かったが、あと、なにしろよかったのはラストバトルの音楽である「大空に戦う」、「おおぞらをまう」の音楽をベースにバルトーク風なオーケスレーションした仕上げた曲なんだけど、実は私これを聴きたくてこのディスク購入してきたのであった....。でも、この多彩なオーケストレーションを聴いていたら、今度はこの曲の生オラ・ヴァージョンも聴きたくなってしまった。やれやれ、また、出費か(笑)。
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すぎやまこういち/交響組曲「ドラゴンクエストV」(N響版)

2006年03月29日 20時04分29秒 | サウンドトラック
 まだまだ続くドラクエ・ミュージック、今日のディスクは元々自宅にあったのではなく、先日オークションで格安にて購入したもの(1000円)。ドラクエ5の音楽を交響組曲として編曲したもので、指揮はもちろんすぎやまこういち、演奏はNHK交響楽団で、92年の収録となっている。このあたりの盤歴を僕はあまり詳しく知らないのだけれど、おそらくこの種の交響組曲としては一番最初のシリーズにあたるものがこの演奏なんだろうと思う。で、次が先日も取り上げたロンドン・フィルとの演奏によるシリーズになり、現在は東京都交響楽団との再々録音が進行中ということになるのだろうから、結局ドラクエの主要作品は作曲者によって、この15年の間に計3回も録音していることになる訳だ。

 さて、「ドラクエ5/天空の花嫁」といえば、PS2版を調度去年の今頃やっていたから、音楽の方もかなり鮮明に覚えているのだが、PS2版での音楽は内蔵音源ではなく生オケの演奏だったから、一聴してなんのひっかかりもなくゲームのことが思い出される。4曲目の「大海原」はゲームのオープニングでまさに大海原を船が行くシーンで、鮮やかな絵本の如き色彩の画面に思わず魅了されたことや(なにしろその前にやったのが陰惨な「シャドウハーツ」だったからなぁ-笑)、6曲目の「洞窟に魔物の....」では、少年時代の主人公が、ビアンカと一緒に夜のレヌール城を冒険するところに、なんだかこちらも子供に戻ったような気分でわくわくしながらやった時の気分、「愛の旋律」では結婚した夜、ビアンカが主人公に話す妙に甘酸っぱいシーンなどが鮮明に甦るという訳。

 ついでゲーム中何回となく聴くことになった音楽「戦火を交えて」を聴いたら、PS2版「ドラクエ5」独特のバトルシーンを思い出した。PS2版って相手をやっつけると、モンスターが後方に飛ばされるようなアクションになって、そのままフェイドアウトして消えるような演出になっていたんだけど、あれが妙なスピード感と爽快感があってけっこうよかったと思うんだよな。ただ、先日の「ドラクエ8」ではこの演出は全く引き継がれなかったんで、あのテンポの良さってやっぱあの作品限りだったのかなぁと改めて思ったりもしたのだが....。

 という訳で、実に懐かしく聴けたアルバムなんだけど、記憶によればPS2版の音楽って、このN響の演奏を流用していたとかいう話をどっかで読んだ気もするのだが、真相はどうなのだろう。そういえば独立サントラというのも出ていないような気もする。ちなみにN響の演奏は律儀で堅実そのものだけど、ロンドン・フィルの演奏に比べると、やや録音で損をしている気もする(逆に録音で得しているのは昨日の「ドラクエ伝説」での神奈川フィルかな)。N響というともう少し冴えた弦が特徴だったように思うのだけれど、全体にナロウで寝ぼけ気味な音なのだ。
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すぎやまこういち/バレエ音楽「ドラゴンクエスト伝説」

2006年03月28日 23時14分14秒 | サウンドトラック
 ドラクエ絡みで、こんなアルバムも発見した。小松一彦指揮、神奈川フィルハーモニー管弦楽団によるバレエ音楽ということだが、聴いてみると音楽はゲーム・ドラクエそのものである。もうちょっと詳しく書いておこう、このバレエ音楽はドラクエの1から5までの収録された約40曲(ほぼ2時間)をバレエの筋書きにのっとって、元のゲームの進行とは関係なく再構成したもので、一部バレエ用のアレンジなされているようだし、新曲も2曲ほど入っているものの、バレエはあまり意識しなくとも、単にドラクエのベスト盤としても楽しめるものとなっている。

 特筆すべきはその録音の良さ、ホールトーンを重視したクラシック録音を思わせる録音で、繊細な弦の動き、立体的な定位、そしてマッシブな迫力を感じさせる低音部の響きなど、なにやらアメリカのテラーク・レーベルを彷彿とさせる音質になっている。ことに大太鼓の腰の据わった迫力はオーディオ・ソースとしてもなかなか優秀なのではないかと思わせるものがあって、メイン・テーマとなるマーチや戦闘シーンの音楽では、これまでのN響やLPOでの録音とは味わえなかったハイファイ・ソースとしてのオーケストラの音が堪能できる。まぁ、その分、再生するハードにある程度のグレードがないと、単にもやもやした音のように聴こえてしまうかもしれないが....。

 ちなみにバレエのストーリーは城を抜け出した王女様、伝説の勇者、悪の魔王などが入れ乱れるいかにもドラクエ風なものらしく、第2幕ではどうやら私の大好きな「おおぞらをとぶ」が音楽的なハイライトになっているようで2回も登場するのはうれしいところだが、そもそも出典がゲームのための音楽ということで、音楽だけを聴いてバレエの筋書きを思い浮かべるというより、それぞれのゲームのシーンを思い浮かべてしまうのは、まぁ、致し方ないところだろう。
 あと、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の演奏だが、最近は日本のオーケストラも技術的にはかなりレベルにあるようで、N響やLPOの演奏と比べてもさして遜色はない。全体にN響と共通するようなさっぱりした淡彩な音色はやはり日本のオーケストラの特徴というべきなんだろうか
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すぎやまこういち/交響組曲「ドラゴンクエスト」ザ・ベスト

2006年03月27日 23時45分13秒 | サウンドトラック
 ここでも頻繁に書いているとおり、このところ自宅(PS2)でも出先(ケータイ)でも、ドラクエばかりやっている毎日なのだが、昨日終わったドラクエ8の音楽で神鳥にのって空を飛ぶ場面の音楽がとても良かったので、なんとなくドラクエの音楽そのものが聴きたくなってしまい探したところ、「へぇ、オレってこんなの買ってたっけ?」と思うくらいにいろいろなアルバムが出てきたので、さっきから聴いているところなんだけど、中でも重宝しているのがこのアルバム。90年代にロンドン・フィルを振ってドラクエ全作品の音楽をオーケストラで演奏した7枚のアルバムからベスト選曲で作ったコンピレーションで、最初の方が1枚、2が2枚組で計3枚となっている。曲順もクロノジカルだし、このセットおおよそ半数の作品が聴け、全体をかんたんに俯瞰できるから便利なのである。

 で、いろいろ調べているうちに前述の「ドラクエ8」で、空を飛ぶときに使用されとても印象的だった音楽は、ドラクエ3で使われた「おおぞらをとぶ」であったことが判明した。どうりで聴き覚えていたはずだ。今、まさに聴いているところなんだけど、単独で聴いても素晴らしくいい。壮麗さの中に哀しい叙情があって、なんとも心うたれる名旋律でけだし絶品だ。おそらくすぎやまこういちのドラクエ・ミュージックの傑作のひとつではないか?。そういえば最終決戦ではこの旋律が編曲されたものが使われていたと思う。
 ついでに、これらのアルバムからケータイでやっている1と2に加え、「おおぞらをとぶ」が入っている3からの作品を抜き出してベスト盤を作ってみた。さっき現在聴いたところなんだけど、1や2もいいが、やはりゲーム的にも音楽だけをとってみても3は傑作。私の記憶がタコのせいで、3で「おおぞらをとぶ」がどういう風に使われたか、さっぱり記憶にないのだけれど、3の「戦闘のテーマ」など歴代のそれの中でも傑作だし、ゲームの記憶が薄れてしまっても音楽が魅力的に響くのは、それだけ音楽が自立していたということだろうとも思う。

 演奏はロンドン・フィルということで、なかなか重量感ある演奏になっているが、このオケの特徴であるもっさりした感じが、この種の音楽だとちょいと気になるところもある。どうせ、英国産のオケを使う贅沢をするならば、ロンドン・フィルではなく、ロンドン・シンフォニーの機動力だとか、ロイヤル・フィルの明るい響きの方がこれら曲には相応しかったのではないか。そういえば、最近、すぎやまこういちは都響を使って、ドラクエの諸作を再び再録をしているみたいだけれど、さっぱりした音色を持つ日本のオケの演奏は、むしろロンドン・フィルより期待できるかもしれないな。
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ミクロス・ローザ三部作 (Score)

2006年03月16日 22時58分28秒 | サウンドトラック
 先日レビュウしたローザの「3つの合唱組曲」のところで、ちらっと話題に出したリヒャルト・ミュラー・ランペルツ指揮ハンブルク・コンサート交響楽団、同合唱団によるローザのエピック・フィルム3作品の組曲を収めたアルバムです。62年といえばこれらの作品は、ほぼリアル・タイムといってもいい時期の録音でしょうから、どのような経緯でこれが録音されたのかはわかりませんが、この時期に早くもこうしたスコア盤が録音されたというのは、当時の人気振りがわかろうというものです。

 当時は史劇映画(エピック・フィルム)が第何次目かのブームだったようですが、その火付け役となったのがもちろん「ベン・ハー」であり(起源としては「クウォ・デバイス」あたりでしょうが)、その音楽を担当したのがローザだったというのは周知のとおり。ユダヤ人のベン・ハーとキリストの最期を6年半のドラマを交錯させながら壮大なスケールで描いたこの作品はそれ自体映画史上の傑作といえるものでしたが、ローザはそれをワーグナー的なスケール感とハンガリー的な鋭角的なリズムやある種エキゾチックな雰囲気でもって、もはや以上ないというくらい見事に映像を音楽化をし、これまた映画音楽史上に残る傑作と評価されました。ローザは一躍のこの分野の巨匠として有名になり、61年には実に三本ものエピック映画の音楽を担当しているほどです。

 このアルバムには「ベンハー」に加え、61年に担当した三本のエピック・フィルムの内の「エルシド」と「キング・オブ・キングス」が加え、合計3つの組曲が収録されています。当時としてはさながらエピック・フィルム・グレイテスト・ヒッツという感じだったんでしょうね。どれも多少ハリウッド落日の輝きとでもいえる派手な豪華さと多少えげつないほどのスケール感を持った音楽となっています。先日の「3つの合唱組曲」はそういう意味からいうと、やや落ち着き過ぎ、枯れ過ぎな感もなくはなかったですから、当時の勢いというかハリウッド的な金ぴか感のようなものは。むしろこちらの方がよく伝わってきます(いかにも60年代初頭という感じの荒っぽい高域の音質もそれっぽくいし)。
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MIKLOS ROZSA / Three Choral Suites [SACD]

2006年03月13日 21時47分06秒 | サウンドトラック
 ミクロス・ローザが手がけたエピック・フィルムの音楽の中から「ベン・ハー」「クオ・バディス」「キング・オブ・キングス」を各々20分程度の組曲にまとめたアルバムです。ローザのエピック物の映画音楽というのは、その昔にランペルツ指揮のハンブルク・コンサート交響楽団で収録した62年のアルバム(「エルシド」「ベン・ハー」「キング・オブ・キングス」)やデッカからローザ自身の指揮による「ベン・ハー」のスコア盤があったせいか、バレーズサラバンデからもまとまった形で出ていなかった(と思う)ので、カンゼル指揮によるシンシナティ・ポップスの最新録音はまさに待望という他はないでしょう。おまけにここに収録されている組曲は、生前のローザがこれらの映画音楽から「コーラス付きのオーケストラ組曲」にすべく着手したものの(タイトルの「Three Choral Suites」はそれに由来するんでしょう)、彼の死によって未完に終わったものを、改めて完成させたものらしいですから、その意味でも貴重です。

 実際聴いてみると、いつもミクロス・ローザ流のバタ臭い壮大さみたいなところは控えめで、どちらかといえば、メロディックな部分を中心になだらかに広がるスケール感のようなものを重点が置かれた選曲、編曲という感じがします。例えば「ベン・ハー」の序曲など、ランペルツ盤ではファンファーレの後、ガツンと最強奏があってそこから、壮麗なテーマが始まる訳ですが、こちらはファンファーレの後、割とのどかな民衆風な音楽がしばらく続き、その後なだからに例のメインテーマが登場するという感じで、あるゆったりと印象があります。一方、これらの作品の静の部分、宗教的な場面や愛の場面で流れた音楽は、今回の「売り」である合唱も大々的にフィーチャーしじっくりと歌い込まれているという感じです。
 どうしてこういう結果になったのかといえば、構想されたのが作曲者の晩年ということが関係しているのかもしれません。ローザはとても長生きしたので70年代後半くらいまで元気に作曲を続けましたけど、その頃の作品は「プロビデンス」であれ、「悲愁」であれ、かなり枯れた音楽になってましたから、かつてエピック・フィルムにつけたそびえ立つような音楽には、作曲者自身あまりリアリティーを感ぜず、むしろこれらの作品につけた宗教的な部分になんらかの再発見をしたのかもしれないからです。
 私は昔からミクロス・ローザっての作品って、40~50年代のロマンティックな曲を書いていた時とそれ以降のエピック・フィルムを頻繁に担当する時では作風がかなり違うような気がしていたのですが、この作品を聴くと「白い恐怖」と「ベン・ハー」が実にしっくりと繋がるようにも感じるので、ある意味エピック・フィルムといえども、実はこのあたりがミクロス・ローザの本音であったのかもしれませんね。以上、邪推ではありますが。

 最後にSACDの音質ですが、これは素晴らしいとしかいいようがないです。カンゼルとシンシナティ・ポップスの音はこれまで沢山聴いてきましたけど、こんな上品で丁寧な質感の音を聴かせてくれるのは、ひょっとして初めてじゃないですかね。これがDSD録音故なのかどうかはわかりませんけど、ゆったりとした音場に展開されるオケと合唱団が自然に溶け合って、まさに極上のサウンドを形成しています。念のためCD層も聴いてみましたが、さすがにSACD層を聴いた後だと、全体に明度が下がったような、やや見通しが悪いような音に感じます。それだけレンジの広い、明晰な音ということなんでしょうが、こういう大規模な管弦楽になると、やはりSACDの基本性能の良さがモロに出ているとったところです。
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伊福部昭 女中っ子 (Soundtrack)

2006年02月27日 23時39分09秒 | サウンドトラック
忙しい一日だった。母親の四十九日に法要もようやく昨日終わり、今日は一日、行政書士や市役所、あと銀行とか、とにかくいろいろな事務的な手続きにあけくれていたという訳。私はこういう手続きが大の苦手というか、おっくうなこと極まりないという人間なもので、あれこれ回れるのはけっこうなストレスです。結局、午前から午後にかけて半日かけた訳だけど、半分も終わらなかった。家に帰ってからも、あちこち片づけたたり、整理している間にすっかり夜になってしまったという感じ。

 そんな中、移動中の車で聴いていたのが、先日作った先生の映画音楽「ビルマの竪琴」「女中っ子」「二人の兄弟」を集めたサントラ。「ビルマの竪琴」をメインに作ったものだけど、今回、印象深かったのは「女中っ子」の方。先生の作品という土俗的パワーだとか、押し寄せる律動とかといういう面でばかり語りがちですが、この作品は先生のリリカルな面が出ていて、後半に出てくる途中に半音階で上昇するピアノのアルペシオにのって展開する楽曲など、もう涙が出てくるくらい叙情的な美しさが泣けました。また、続けて聴いて分かったのですが、この作品「二人の兄弟」とほとんど同じテーマが出てくるんですね。「二人の兄弟」のテーマはちょっと悲愴感のあって、それを慈しんでいるような印象深い旋律ですが、それが「女中っ子」に出てきたのは意外でした。意外といえば運動会のシーンの音楽とおぼしき楽曲に「宇宙大戦争」で有名なアレが出てくるのも驚きましたが。

 ところでこれらの音楽聴きながら思ったのですが、うちの場合、母親の残したものなど大したことはないですが、それでもこれだけとあれやこれやとやらなきゃいけないとすると。資産だの、人脈だのをたくさん残した(であろう)、先生の遺族はこういった諸々の後始末はさぞや大変なことになっているんだろうなぁ....と不遜にもぼんやりと考えてしまいした。
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伊福部昭 ビルマの竪琴 (Soundtrack)

2006年02月23日 00時31分40秒 | サウンドトラック
 先生の映画音楽は多数のサントラが出ていますが、特撮関係の作品は1作品=1アルバム単位で出ているものも多いものの、一般映画となるとシリーズ物の一貫としてダイジェスト収録、企画が複数のレコード会社から出されていることが影響なのか、同じ作品が分散していることが多いのは、いかにも惜しまれます。贅沢な望みかもしれませんが、どこかのレコード会社で先生追悼企画として、もう少しきっちりと筋の通った伊福部昭映画音楽選集でもやってもらえんでしょうか。

 例えば「ビルマの竪琴」ですが、私のもっているCDだと収録曲が見事に2枚に分散しています。とっかえひっかえ聴けばいいでしょうが、それぞれ抜粋された曲が入り組んでいるために、仮にこっちを聴いたから、次はこっち....という形で聴いたとしても、映画に登場した順番とは全く違う形になってしまうから、どうも居心地が悪い。そういう訳なので、先ほど2枚のCDに分散している「ビルマの竪琴」と「女中っ子」の音楽をリッピングして、ひとつのトラックにまとまったものは、波形編集ソフトで元の形で切り分けて、改めて映画の順番にそった形で再構成し、それをCDに焼くという作業をしてみました。けっこう面倒でしたが、これでようやく両作品の音楽が心安らかに聴けるようになったという感じです(もっとも、どちらも全曲の半分にも満たないマテリアルでの話ではあるんですけど)。

 この2作品には、有名なレクイエムの旋律が使われています。特撮映画ファンには第一作のゴジラで、芹沢がゴジラととも海底に没する場面その他で使われた、荘重で身を切られるような悲しみに満ちた音楽ですが、これが「ビルマの竪琴」にはメインタイトルで使用され、「女中っ子」ではラストで使われています。個人的にはレイクエム的であると同時に「自己犠牲のテーマ」と呼びたいような気もするこの旋律は、やはり先生の傑作だと常々思っていたものの、先の理由であまりきちんと聴けた試しがなかったので、手間はかかりましたが、これからは安心してこの旋律を楽しめます。
 でも本当にどこかのレコード会社さん、企画してくれないかなぁ>決定版「伊福部昭映画音楽全集」。
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伊福部昭 ゴジラ伝説/井上誠

2006年02月12日 12時42分06秒 | サウンドトラック
 1984年に生オケによる「SF特撮映画音楽の夕べ」が開催されたのは、伊福部ファンにとっては80年代のひとつのハイライトだった訳ですが、結果的にこれの露払いのように現れた作品がこれだったといえるでしょう。当時、ニュー・ウェイブ系のバンドとして知る人ぞ知るという存在だったヒカシューのキーボード奏者が、シンセサイザーのオーバー・ダビングによるオーケストレーションでもって再現したゴジラ関連の音楽ばかり集めた作品だった訳ですが、井上自身が伊福部先生のほとんど殉教者のような愛情をもったファンだったことが幸いし、伊福部ファンにって、選曲、アレンジ、サウンドなどなど、「かゆいところに手がとどくようなアルバム」になっていたことが画期的でした。

 選曲はほぼ満点、「ゴジラ」の始まり「キング・コング対ゴジラ」3曲、「モスラ対ゴジラ」「地球最大の決戦」2曲、「怪獣大戦争」、「怪獣総進撃」等、おおそよ伊福部先生の作ったゴジラ関連のメインタイトルやマーチ系の名曲が網羅されていることに加え、「コング輸送作戦」、「黒部谷のテーマ」、「キングギドラ出現」といった通好みの作品も収録されいたことはファンにとっては感涙モノ....というか、はっきりしませんが、おそらくこれらの作品は「ゴジラ伝説」によって、改めてファンに伊福部作品の名曲として認知されたという気すらします。いずれにしても昭和40年代を前後数年くらいのスパンに制作され、それを観ながら少年時代を過ごした人達が記憶しているであろう曲を選び抜いた見事な選曲であり、これによりこのアルバムは成功はもう半分約束されていたようなものでした。
 加えて、これは井上の先生に対する愛情のなせる技だったと思いますが、とにもかくにも徹底的な原典重視の姿勢を貫いたことも、ファンに絶大に受けた原因となっていたと思います。先生の譜面にない音は極力を付け加えず、シンセのよるオケのシミュレートに徹するその潔い姿勢が、ほとんど誰が聴いても納得できる「伊福部音楽のシンセ化」という、簡単そうでいておそらく難しい壁をクリアに導いたのでしょう。
 もちろん、まったく先生の譜面に対して、何も付け加えていない訳ではありませんが、各種SEの付加にせよ、ベースとドラムをプラスしてロック風なリズムに解釈している場面にしているところでも、本末転倒にならない程度に抑制してあって、「主役はあくまでオリジナル・スコア」を堅持しているあたり、しつこいようですが、井上の先生に対する愛情としかいいようがないもので、そのあたりがまた共感を呼んだ訳です。

 ついでに書けば、ここで用いられてシンセはどちらかといえば、アナログ・シンセ主体で当時爆発的勢いで普及しかけていたデジタル・シンセにはあえて背を向けて(全く使っていない訳ではないですが)、ジュピター8等の重厚な音のするシンセをメインに使い、場合によっては当時陳腐化していたメロトロンも併せて使うなど、ここでも重厚な伊福部サウンドに忠誠を誓っているあたり井上のこだわりを感ぜずにはいらません。
 最後に前段の物言いとは矛盾するかもしれませんが、これを一聴し「ゴジラのテーマ」が「怪獣大戦争のテーマ」がロック・ビート風なドラムをともない、緻密なシンセ・オーケストレーションで聴こえてきた時、「いやぁ、ゴジラの音楽って今でも生きているんだな」は感動したものです。モノラルの貧弱な音質だったせいもありますが、既に「過去のモノ」となっていたこれらの音楽を、控えめながら現代に蘇生させてくれたこのアルバムに、今もって愛着を感じている人もけっこう多いのではないでしょうか。もちろん私もそのひとりでありますが。
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伊福部昭 モスラ対ゴジラ (Soundtrack)

2006年02月12日 02時44分05秒 | サウンドトラック
 先生が作った特撮映画関係の音楽でもっとも好きなの作品のひとつががこれ。この作品はゴジラ映画としても最高傑作の部類ですが、昭和39年という先生の映画音楽の全盛期ということもあって、スケールの大きなオーケストレーション、魅力的な旋律の数々、縦横に張り巡らされたモチーフの完璧な配置などなど、まさに先生が映画という土俵でとった横綱相撲といった趣の作品であります。

 冒頭の「メインタイトル」は、いきなりピアノをひっかく音なども取り入れた衝撃的な音響によるショッキングなサウンドに始まり、すぐさまゴジラ出現のテーマををメインにしつつ、わずかに2分間にこの映画にちりばめられた印象的なモチーフを凝縮しています。なにしろこのメインタイトルがいいです。この映画で実は前半30分過ぎまでゴジラは全く登場しない訳ですが、その分、このメインタイトルでもってゴジラが暴れさせている訳で、音楽面でゴジラ映画として見事にバランスさせているあたり、さすがであります。
 映画の前半では「モスラ受難のテーマ」と僕が勝手に読んでいるモチーフと「聖なる泉」に連なるモチーフが印象に残ります。前者はモスラの卵が漂着する場面等に、後者はザ・ピーナッツが演じる小美人が登場する場面に使用される訳ですが、いずれもこの映画のヒューマンなタッチを盛り上げています。また「マハラ・モスラ」のテーマの変形である「モスラ去る」の哀愁に満ちたメロディーも忘れがたいものがあります。

 中盤ではなんといっても倉田浜干拓地でゴジラが土中から登場する名シーンで使用された「ゴジラ出現のテーマ」でしょう。このモチーフは第1作から現れているものですが、第1作ではまだ萌芽のように形があまり定まっておらず、前作の「キング・コング対ゴジラ」でようやくはっきりとした形をとった訳ですが、名実共にゴジラのテーマとなったのはやはりこの場面からでしょう。そういう訳でここからしばらくはこのテーマが音楽面でも支配的です。
 そして後半になると、このゴジラのテーマとモスラ関連のモチーフを縦横に組み合わせた圧巻の音楽となります。ことに有名な8分にも及ぶ「幼虫モスラ対ゴジラ」の音楽は、その気宇壮大なスケール感はもちろんですが、同時に表現される一種の悲愴感が素晴らしく。ワンアンドオンリーな伊福部ワールドをたっぷり堪能させてくれるのです。

 ちなみに作品は私の音楽的ルーツのひとつであります。私は5歳の時、この映画を愚兄に連れられて映画館でリアル・タイムで観ていますが、その時の印象はかなり強烈なものがあったにせよ、まさかそれが音楽的ルーツになっているとは思いもよりませんでした。同じ年に私はもうひとりの愚兄がビートルズに熱中していたおかげてビートルズという音楽的洗礼を受けたおかげてルーツはそれだとばかり思っていたのです。ところが80年代になって久しぶりにこの映画を観て、私はこれらの特撮映画に実は伊福部音楽を聴いていたことを知ったのでした。
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