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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

アルティメイト・マンシーニ/various

2006年02月07日 23時55分14秒 | サウンドトラック
 一昨年出たマンシーニのトリビュート・アルバム。ジャズ・フュージョン界を中心に有名どころを集めて、とても豪華な仕上がりになっています。どうやらマンシーニの娘でボーカリストであるモニカ・マンシーニがキーパースンになっているらしく、何曲かで彼女がヴォーカルをとっている他、娘である彼女の意向なのか、はたまた制作サイドが彼女をかつぎだしてマンシーニお墨付き的な箔を演出したかったのか定かではありませんが、ともあれ基本的にオリジナル・スコアを尊重したアレンジをベースにして、そこに豪華なゲスト陣がソロやヴォーカルで彩りを添えるという趣向になっています。では、ゲスト絡みで曲を拾ってみましょう。

 1曲目の「ピンク・パンサーのテーマ」は、サックスにオリジナル・ヴァージョンと同じプラス・ジョンソンを起用して、ほぼスコア通りの演奏で、中間部のソロにゲイリー・バートンのヴァイブとジョーイ・デフランコのオルガンが登場します。前者はこの曲の都会的ムードを、後者はアーシーさをそれぞれ表現しているあたりがミソですね。しかも、もの凄い優秀録音なのが、オーディオ・ファンの私としてはうれしいところ。2曲目の「シャレード」はマンシーニの曲で、私がもっとも好きなもののひとつですが、ここではオリジナルの雰囲気を再現しつつも、サンバのリズムとフュージョン的な弾力感あるサウンドを強調しているあたりがいいです。オーケストラも色彩的。4曲目は問答無用の名曲「ムーン・リヴァー」ですが、ここでハーモニカで参加しているのがスティービー・ワンダーで、コーラスを担当するのがTAKE6という組み合わせ、それにしても前半のハーモニカですがオリジナルと同じ趣向と思わせつつ、もうスティービー・ワンダーとしかいいようがない、こぶし回りまくりハーモニカなのがちょいと驚きます。しかも、これがぴたりと「ムーン・リヴァー」のムードにハマっているが妙なんですね。TAKE6もゴスペル風なコーラスでこれもいい、いやぁ、泣けます。

 5曲目の「その日その時」はヴォーカルにモニカ・マンシーニ、サックスにトム・スコットをフィーチャーした渋いAOR風なアレンジ。7,8曲目は「ピーター・ガン」収録曲、前者はメイン・テーマを演奏した後、珍しくトム・スコットのアーシーなサックスをフィーチャー、後者はモニカとケニー・ランキンのデュエットで構成、マンシーニって割とリゾートっぽい曲もつくったりしましたが、ここではそれを強調したAOR風な仕上がり。12曲目の「ミスター・ラッキー」はテーマの部分はほとんどオリジナルのままですが、真ん中でデフランコの黒いなオルガンがフィーチャーされ、この曲のラウンジ風なところを今風に拡大したという感じの演奏になっています。
14~16曲目はマンシーニの比較的晩年の地味ですが、味わい深い曲をメドレーにしています。ここでマンシーニ役となってピアノを弾いているのはマイケル・ラング、彼がどんな人なのか私はよく知らないのですが、おそらくフュージョン系の人なんでしょう。とてもソフトでメロディック、そしてラブリーなピアノです。最後の「イッツ・イージー・トゥ・セイ」は、ボー・デレクとダッドリー・ムーアが主演した80年代のラブ・コメディのテーマ曲ですが、そういえばサントラではダッドリー・ムーアがこの曲をピアノ・ソロで弾いていたんですよね。

 という訳で、おじさんの私には夜にこういう音楽は、酒が進んでしょうがないです。明日休みだったらいいのに(笑)。あと、興ざめなこと書くと、これでもう少し、モニカ・マンシーニのヴォーカルが魅力的だったら、このアルバム申し分ないないんですけがねぃ。
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RYUICHI SAKAMOTO / Cinemage

2006年01月20日 23時38分42秒 | サウンドトラック
ここ二週間くらいで一番聴いた音楽が坂本龍一のサントラ「リトルブッダ」の最後に収録されている「アクセプタンス~エンド・クレジット」という曲。坂本のサントラを集中的に聴いたのはかれこれ三ヶ月前くらいのことになりますが、その中でももっとも印象に残った曲ではあるし、自分のおかれたシチェーションがただ今忌中ということも大きいですが....。

 ともあれ、この曲の前半部分(アクセプタンス)の鎮魂歌のような荘厳な美しさは、おそらくバーバーの「アダージョ」とマーラーの9番の第4楽章あたりがインスピレーションになっているかとは思いますが、何度聴いても心が揺さぶられるような感動があります。また、後半部分(エンドクレジット)ではメインタイトルのリピートの中で徐々に光明が差すような明るさが広がっていくあたりも良いです。坂本は「リトルブッダ」の音楽を称して「悲しいけど、救いがある音楽」といったようですが、この曲にはそれが象徴されていると思います。

 このアルバムですが、坂本の映画関係のマテリアルばかり集めたライブ盤で、上記の曲は3曲目に「リトルブッダ」として収録されています。オリジナルではソプラノ付きの楽曲だった訳ですが、こちらは弦楽合奏+ピアノという編成で演奏されています。ライブ収録のせいかちょいと音が悪いのが気になりますが、まぁ、これはこれで趣向ではありましょう。

 ちなみに他には「戦メリ」、「ラストエンペラー」、「嵐が丘」といった曲が小組曲という形で収められていますが、バルセロナ・オリンピックのオープニング・テーマである「地中海のテーマ」が入っているのはうれしいところ。他の曲とはちょいとタイプが違いますが、これも坂本の傑作のひとつでしょう。
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伊福部昭 「大魔神」三部作 (Soundtrack)

2006年01月10日 00時58分44秒 | サウンドトラック
 「大魔神」三部作を続けて観たついでに探したら、大魔神の音楽だけを一枚にもとめたMDが出てきたので聴いてみました。もととなっているのは80年代に購入したSF特撮映画音楽全集の第12巻で、どうやらこれをMDに録音してあったものらしいです。レコードは未だあるハズですが、なにしろ大魔神の音楽はまとまった形でCD化されていないようなので、映画を観た後にMDであれ、サントラを聴けたのは幸いでした。

 音楽はもちろん伊福部先生であります。作曲は昭和46年ということで、先生の映画音楽もほぼ円熟期に達していたというか、いろいろな意味で特撮映画に関するボキャブラリーが出尽くした時期でもあったんでしょう。同時期の「フランケンシュタイン対バルゴン」や「サンダ対ガイラ」と共通するモチーフが登場するのは興味深いところです。おそらく、感情あるモンスターというか、人間と怪獣の中間くらいの線ということで、似たようなような感じになったのでしょうが、これらは平成ゴジラでも使われることなるのは興味深い点でもあります。また、ファロ島のテーマだの、ムー帝国のテーマと酷似したモチーフもいわば映画の土俗的な面を演出する場面で登場したりもするので、全編先生の刻印だらけな作品ではあり、さながら渋いベスト盤みたいな趣はあるのですが、贅沢をいえば大魔神専用のモチーフが印象的な旋律があったらとは思いました。

 ちなみに私が好きなのは「大魔神逆襲」で使われるムー帝国のテーマとしておなじみの旋律。これが子供の山越えのいたるところで、リリカルなピアノや木管楽器をメインにした清涼な楽曲として使用されている訳ですが、これが実にいいんですね。主人公の二宮秀樹は当時の名子役(マグマ大使のガムだったハズ)で、この子が実にけなげでいい演技してたもんで、この音楽が流れてくると、ノスタルジー半分で涙腺うるうるしてきちゃったりするんですよね。
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なるけみちこ/ワイルドアームス (Soundtrack)

2005年10月27日 20時34分48秒 | サウンドトラック
 <なるけみちこ(成毛美智子)>といえば、ゲーム・ファンの間では「ワイルドアームス」の音楽で有名です。「ワイルドアームス」といえば、リメイクも含め既に4作ほどあるわけですが、「ワイルドアームスの魅力のひとつ=なるけみちこの音楽」といわれるくらいに熱狂的なファンもいるほどです。このシリーズでは口笛をフィーチャーしたマカロニ・ウェスタン風なメイン・タイトルに置くのがパターンとなっていますが、これらの音楽を聴くと、「ワイルドアームス」の舞台となった砂漠化の進む荒涼とした世界を思い浮かべ、次に「あぁ、<なるけみちこ>だなぁ」と思うゲーム・ファンも多いのではないでしょうか。

 このアルバムは、シリーズ第一作のサントラになります。前述のマカロニ・ウェスタン風な音楽に加え、もうひとつの魅力であるウェットな哀感を感じさせる旋律、テクノ風に軽快な戦闘音楽などがまんべんなく鏤められ、既に<なるけみちこ>の魅力満載の作品になっています。もちろん、プレステ時代のゲーム音楽ですから、サウンド的には全て打ち込みシンセ+たまに生音でという構成でぱっと聴きにはチープそのものな訳ですが、仮にこれを全て生オケなんかでやったとしたら、逆にゲームの画面が負けてしまうでしょうから、これをシンセによる箱庭サウンドでやったのはむしろ必然というべきでしょう。
 また、<なるけみちこ>という人はゲーム以前にはTVの音楽などを担当してきたことにも関係あるのかもしれませんが、どうも壮大なスケールだとか、強烈な音楽的自我みたいなものはどうも苦手なようで、慎ましさだとか繊細な情感といった側面で優れて職人的というか本領発揮するです。そうした意味でもこの作品のような箱庭的なゲーム音楽には合うのかもしれません。いずれにしても、メインタイトルである「荒野の果てへ」にはそのあたりの魅力が凝縮されていると思います。

 それにしてもゲーム音楽というのは独特なものだと思います。ユーザーの好むと好まざるとにかかわらず、ゲームをやる度にメイン・タイトルや戦闘、あと街などの音楽をほとんど強制的に聴かせられることなります。場合によっては何百回も聴くことだってあるかもしれません。普通、音楽とはそうした聴き方はしないはずですから、この反復効果は悪く云うと、人それぞれの音楽の好みというか嗜好性みたいなものを麻痺させるような側面もあるんじゃないとすら思うんですね。このあたり深く考えるとなかなかおもしろい仮説がでてくるような気もしますが、これはまたいずれということで。
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坂本龍一/プレイング・ジ・オーケストラ

2005年10月26日 12時48分45秒 | サウンドトラック
 このところ80年代後半の坂本龍一の映画音楽作品をあれこれ聴いてきたので、ついでにこんなアルバムをひっぱりだしてきた。88年の4月にNHKホールで行われた「Sakamoto Plays Sakamoto」のパフォーマンスを収録したライブ盤で、大友直人指揮に東京交響楽団による「ラスト・エンペラー」と「戦場のメリークリスマス」をメインに据えた構成になっている。確か当時の坂本は、「ラスト・エンペラー」のアカデミー賞受賞その他で、「世界のサカモト」としてワールドワイドに勇躍しようかという時期だったばすで、これもヴァージンからの発売だったと思う。石ころが入っていて、振るとカラカラと音のするエキゾチックな箱にパッケージされていたのも、なにか当時の意気込みを感じさせて懐かしい。

 収録は前述のとおり、「ラスト・エンペラー」と「戦場のメリークリスマス」がメインのディスクに収録されている。前者は収録時間の関係からかオリジナル・サウンド・トラック・アルバムに収録されていないオケの楽曲群が収録されているし、「戦場のメリークリスマス」はオリジナルのシンセ演奏に対しこちらは生オケと、どちらのサントラを持っていても買って損はない内容となっているのは良心的だったのだが、オケの演奏そのものがそうだったのか、ライブ録音という制約がもとでそういう音になってしまったのか、ひょっとするとその両方なのかよくわからない点もあるのだけれど、ともかくオリジナル・サウンドトラックのそれに比べると、リズムは鈍重だし、弦に冴えがなく、どうも全体に生彩に欠く、一種の生ぬるい演奏という印象だったのが惜しい点だった。ずいぶん長いこと聴いていなかったので、今回、久しぶりに聴いたらそのあたりも大分緩和されているのではないかとも思ったが、残念ながらそのあたりの印象は変わらなかった。そもその「ラスト・エンペラー」はサントラ盤は坂本のデビッド・バーン等、共同で担当した2人の音楽も収録されており、坂本が書いたオケの演奏だけをじっくりと聴きたいと思っていた私のような映画音楽フリークには、数ある坂本サントラでも旋律美という点はでは筆頭に来る作品を楽しむに格好のアルバムだったハズだったのが....。惜しいアルバムだ。

 そういえば、その数年後に出た佐渡裕指揮の「シネマージュ」という同様なライブ盤にもほぼ似たような印象を感じたものだが、やはりオケのライブ盤というのはなかなか難しいものがあるんだな、と改めて実感した次第。それを考えると、近年のクラシックはライブでも、ほぼスタジオ盤とかわらないクウォリティを確保するようになっているのはさすがだと思う。
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坂本龍一/ザ・シェルタリング・スカイ(Soundtrack)

2005年10月15日 15時11分13秒 | サウンドトラック
 こちらは発表当時何度なく聴いた作品。坂本らしい美しくアコースティックな旋律は申し分なかったし、うっすらとエレクトリックなサウンドが絡まり、エスニックなヴォーカル作品を多数収録してワールド・ミュージックに目配せもおこたらないという具合に、全般的に「ラスト・エンペラー」に続く作品としては、申し分ない作品だったとは思うのだが、当時としては映画も音楽も「ラスト・エンペラー」に比べるといまひとつ華がなかったような印象だった。

 さて、このサントラ、今回聴いて、個人的に興味深かったのが、「ポーツ・コンポジション」という短い曲で、坂本がたまに見せる、新ウィーン楽派....というかベルク的な鬱蒼として粘着するような12音音楽をやっていて、「へぇ、こんなの入ったったけ?」という感じだった。ついでにいえば、続く「オン・サ・ベッド」はバルトークの「弦・チェレ」風な弦の動きをするのもおもしろいところ。あと、スタンダード・ナンバーである「ミッドナイト・サン」がSPレコードっぽい音で収録されているが、いったいどんな場面で使用されたんだろうか。ちょっと興味深いところではある。

 余談だが、ベルトルッチという監督、歴史的な大作を撮ると大抵次は気の抜けた(「暗殺のオペラ」の後の「ラスト・タンゴ・イン・パリ」、「1900年」の後の「ルナ」とか)、私小説みたいな作品をとるのがパターンで、これもそのパターンだろうと思って映画そのものを私はみていない。さっき調べてみたら、最近のベルトリッチは坂本とのコンビは解消して、「魅せられて」とか「シャンドライの恋」といった作品を監督しているらしいが、「1900年」「ラスト・エンペラー」に匹敵するような作品はないようだ。それにしても、どんな音楽がついているのだろう?。
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坂本龍一/侍女の物語(soundtrack)

2005年10月14日 22時59分25秒 | サウンドトラック
 こちらはフォルカー・シュレンドルフが演出した1990年の作品の音楽。フォルカー・シュレンドルフというと、私くらい世代になるとどうしても「ブリキの太鼓」を思いうかべてしまうのが、ともあれあのドイツの異才の作品を担当するとは、ひとくちに「世界の坂本」といっても、メジャーというよりはヨーロッパを拠点とするかなりアーティスティックなポジションのひとたちに評価されているんだなぁ、妙に感心したものである。

 さて、この作品は「嵐が丘」や「リトルブッダ」と異なり全てシンセにより構成されている。その意味で前者が「ラストエンペラー」の系統だとすると、こちらは「戦場のメリー・クリスマス」の路線といえるかもしれない。メイン・タイトルのエキゾチックで東洋風な旋律とか、各種シンセを音色を効果音的に空間に配列したような、ちょっとシリアスなサウンドが全般に鏤められているあたり、音楽的にも共通する部分があると思う。もっともこの作品の場合、予算と時間がなかったからシンセでやったという可能性もあるからなんともいえないが....(笑)。

 ともあれ、この作品、全体に坂本独特の中~低域で粘着するようなシンセ・サウンドが印象的だ。時なアート・オブ・ノイズ風な激しいサウンドや暗雲が立ちこめるような不穏なムードをシンセで展開するのは、確かにオーケストラでは無理だったかもしれない。あと、印象に残った曲を拾っておくと、「ラブ・イン・ニックス・ルーム」は、昨日の「リトルブッダ」のハイライトを思わせる壮麗な旋律でこれはなかなかの聴き物だが、これについては生オケでやった方がもっと良かったと思う。ついでに「交通事故」はなんかオケ収録前に、とりあえずシンセでスコアを音にしてみましたって感じなのがおかしい。「ウェイティング・フォー・マーダー」「キリング・コマンダー」「メイデイ」あたりはピアノとオケ(シンセ)の絡みを中心とした割とダイナミックな展開で、映画のハイライトを彷彿とさせる映像的に音楽だ。

 
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坂本龍一/リトル・ブッダ(soundtrack)

2005年10月13日 22時19分38秒 | サウンドトラック
 昨日、久しぶり聴いた「嵐が丘」がとてもよかったので、本日は坂本が作った同時期の映画音楽としては、「嵐が丘」以上に知名度も評価の高い「リトル・ブッダ」の方を聴いてみました。特定の音楽に対するモチベーションが上がっているせいではあると思うんですが、久しぶりに聴いてみたところ、これは素晴らしいです。なんでこんな素晴らしい音楽、これまで放置しておいたのだろうって感じ。
 一聴してぱっとしないまま放置してあった作品が、なんかのきっかけで、俄然、楽しめるようになる、或いは音楽が理解できたような気持ちになるということはよくあることですが、これもそのひとつかも....。こういうのはこと音楽に限らずいろいろな場面でありますが、こういう瞬間というのはとてもうれしいもんです。

 さて、この作品ですが、ご存じベルナルド・ベルトルッチ監督とのタッグによる第3作。映画の方は見ていませんが、おそらく坂本の映画音楽としては最高傑作の部類でしょう。音楽的な感触としては昨日の「嵐が丘」と基本的には共通していて、坂本らしい「痛ましいほどに美しい旋律」をベースに、「嵐が丘」のアイリッシュ・トラッド風味に対して、こちらはインド音楽がちらほらと顔を出すという感じです。ただし、スケール感はこちらの方が一回り大きくて、「嵐が丘」の情念に対し、こちらは悠久のスケール感とか運命論的巨大な力のようなものが伝わっくるのが特徴でしょうか。それにしても、坂本のオーケストレーションはなんといっても弦が命ですね。とにかく独特の旋律を美麗に奏でる弦の動きは絶品。時にイタリア的に歌い上げてしまうのは、ベルトリッチ監督の嗜好を配慮してかもしれませんが、この作品や「シェルタリング・スカイ」の大きな特徴です。

 曲としては、問答無用の美しさで魅了される「メイン・タイトル」「エヴァンズ・フェネラル」の他、「レッド・ダスト」の巨大でエキゾチックなスケール感。生オケとインド音楽のテクノのフュージョンみたいな「エクソダス」なども印象にの懲りました。あと、特筆すべきは声楽付きで演奏される「エンド・タイトル」ですかね。これの壮絶な美しさといったら、ちょっと言語を絶するものがあって、聴いていて鳥肌立ちました。坂本が自らの作品にオペラチックな声楽を導入するというのは、ずいぶん昔から、あれこれとトリッキーな形で試みでいましたけれど、基本的にはこういうことをストレートにやりたかったんだろうなぁと妙に納得しちゃいました。後半のシェーンベルクの「浄夜」を思わす、まさしく浄化されたような雰囲気などもの凄く感動的。現在、「これって、間違いなく坂本龍一の最高作じゃ~」とか思ってるところであります。
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坂本龍一/嵐が丘(soundtrack)

2005年10月11日 00時25分03秒 | サウンドトラック
 坂本龍一が手がける音楽で世界的に一番有名なのはおそらく映画音楽ではないか。なにしろ、かの「ラスト・エンペラー」でアカデミー賞をとっているくらいだから、YMOとか一時、ヴァージンからワールドワイドで発売されていたロック路線の音楽などより遙かに知名度があるのではないだろうか。この「嵐が丘」はエミリー・ブロンテの原作を、演出ピーター・コズミンスキー、出演ジュリエット・ピノーシュ、ラルフ・ファインズ、シンニード・オコナーといった英国の面々で92年に映画化した作品の音楽を担当したもので、時期的には坂本が「ラスト・エンペラー」以降、もっとも映画音楽家然とした活動をしていたころの作品だったと思う。

 実はこの作品。当時、ほぼリアルタイムで購入したものの、一度通して聞いたのみで、その後なんとなく放置してあったものである。坂本の音楽が幅広く多岐に渡っているので、よほどインパクトがないと、次から次へ出る作品に対応するのが手一杯でこのアルバムのように「いつかじっくり聴いてやろう」などと思いつつ、10年以上たってしまった作品が沢山ある。テレビ朝日絡みで制作されたオペラ作品とか、オケと共演したバルセロナ・オリンピックの式典音楽、そして映画音楽の諸作がその典型で、この作品についても、坂本らしい旋律美のようなものが今一歩不発終わっているように感じたこと、また全体にあまりに静的過ぎてやや音楽の自立性のようなものが稀薄に感じたような記憶がある。

 そんなワケで実に久しぶりにこの作品聴いたワケだが、先の印象は基本的にはかわらないものの、今回聴いて改めて発見したことは、この音楽確かに静的ではあるが、実は情念的な音楽だったということ。ある意味バーナード・ハーマンに共通するようなニューロティックな情念がハーマンほど濃厚ではないけれど、随所に感じられるのが発見であった。ひょっとすると坂本は、大昔にハーマンが作った同じブロンテ原作の「ジェーン・エア」の音楽を参考にしたのかもしれないな....どと邪推したくなったほどだ。ちなみにメイン・タイトルはいかにも「映画音楽の坂本」を感じさせる、いたましいような美しさにあふれたもの。これが全体に循環して、静かな情念に満ち満ちた音楽になっている。また、これにユーリアン・パイプの音色など絡ませて舞台のローカル性をちょいと滲ませたりしているのも特徴だろう。
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B.HERRMANN, A.NEWMAN / The Egyptian(Score)

2005年09月29日 23時02分12秒 | サウンドトラック
 6月にレビュウしたバーナード・ハーマンとアルフレッド・ニューマンの共作という珍作「エジプト人」の最新スコア盤。とはいっても、どうやらスコアを散逸してしまっているらしく、ジョン・モーガンという人が再現したスコアをストロンパーグ指揮モスクワ交響楽団の演奏で収録しています。Naxos系のサントラといえば以前はマルコポーロという傍系レーベルから出ていたワケですが、最近はすっかりNaxosの1シリーズとして定着したようで、こうしたレアな作品を数百円で購入できるのはうれしい限りです。

 さて、この作品、前記のとおり音楽そのものというより、どちらかといえば珍作という価値でサントラはCD化されたされたのだと思いますが、ほぼ時を同じくしてこうしたスコア盤まで出るということは、この作品、音楽的な価値もかなり認められたということなんでしょうか。まぁ、ハーマンの主要作品については、あらかた再録終わってきたという事情も無視できませんが、ともあれ元ソースの収録が55年だっただけに、こうした最新デジタル録音で本作品がもう一度楽しめるというのは、もうそれだけで私のようなサントラ・マニアにはたまらないことではあります。

 もっとも音質的には、NaxosですからあんまりHiFi感のようなものはありません。非常に穏健で中庸なこのレーベルらしい音で、ニューマンのパートはともかくとして、ハーマンのパートについては、もう少し金管がブリリアントに炸裂して欲しい、フォルテではガツンと音圧を感じさせてもらいたいなどと感じないでもないですが、高SN、今時なホール・トーンと相まって、当時は演奏会でとりあげるには異形過ぎたに違いないこの音楽がなんとも格調高い演奏会用音楽の如く聴こえてくるのは、録音以上に時の流れによるリスナーと演奏者の音楽的なキャパシティが圧倒的に拡大という現象もあるんでしょうが。

 あと、このスコア盤で改めて「エジプト人」の音楽を聴いて感じたことは、「いずれにせよニューマンの曲はハーマンの強烈なアクを前にいささか損をしている格好だ」と前回書かざるを得なかったニューマンのパートが思いの外、味わい深いものがあったこと。ニューマンは自分のパートでこの作品の「愛の主題」らしきモチーフを様々な形で循環させていますが、エピックらしいエキゾチックさをたたえつつ、時に意外なほどモダンなオーケストレーションでヴァリエーションを形成しているあたり、その巧緻さに舌を巻くといった感じでした。 
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メンデルスゾーン/真夏の夜の夢(コルンゴルト編)

2005年08月13日 16時31分00秒 | サウンドトラック
これはけっこう珍品の部類かも、1935年に米ワーナーで作られた映画「真夏の夜の夢」のスコア盤です。なにが珍品かというと、音楽はメンデルゾーンを使用している訳ですが、それを編曲しているのが、かのエーリッヒ・ヴォルフガンク・コルンゴールドなんですね。コルンゴルトといえば12歳にしてマーラーが「天才だ」と賞賛し、ツェムリンスキーが「君に教えることはもうなにもない」と感嘆したという、音楽史上の神童のひとりなのは有名ですが、いまひとついわゆるハリウッド・スタイルの映画音楽の創始者としても知られている人です。近年はウィーン時代の作品も盛んに発掘されて、リヒャルト・シュトラウス系のロマン派最終ステージを飾る人というステータスも確立してきたようですが、この作品は彼が映画音楽に手を染めるきっかけとなった作品です。

 どのような経緯でこの音楽を担当したのはわかりませんが、監督がウィーンのマックス・ラインハルトだったことやナチのユダヤ人迫害なんかもあったんでしょう、ともあれこの作品で彼はハリウッド・デビュウとなった訳です。内容的には前述のとおりメンデルゾーンの原曲を編曲している訳ですが、一聴して随所にコルンゴルト的な響きが満ち満ちているのは驚きます。後期ロマン派的な瀟洒でスケール大きなオーケストレーションでメンデルゾーンのかの曲を編曲するというのは賛否両論だと思いますが、シューベルトの「死と乙女」をマーラーが編曲したものなんかが、楽しめるクチだったら、これはこれで楽しめると思います。とにかく弦が厚く壮麗ですし、金管はふんだんに使われ色彩的、打楽器も多用という感じで、いかにも19世紀末の響きがするの特徴でしょう。「結婚行進曲」になんか、合唱団まで入って、ワーグナーの「ローエングリン」に使えそうな感じなんですよね、これが(笑)。

 また、原曲のアダプテイションも巧みで、序曲などオリジナルの序曲の編曲というより、「序曲」+「スケルツォ」+「間奏曲」+「結婚行進曲」でもってあらたな序曲を再構成していますし、その後単体で登場するこれらの曲もけっこう伸ばしたの縮めたりしているようですし、声楽付きの楽曲はあまり記憶にないのでなんともいえませんが、おそらくかなり自由に改変しているような感じがします。2曲目の「聖歌」など、ブリリアントな金管のファンファーレや壮麗なコーラスなどからして、コルンゴルトの曲なんじゃないと思うし、全般的に半音階をふんだんに使ったワーグナー流の彼自身のオペラ「死の都」や「ヘリアーネの奇蹟」あたりを聴いているような感じになったりましから....。

 という訳で、やはりこれは珍品というべき作品でしょう。この翌年に早くも「風雲児アドバース」を担当し、かの名作「ロビンフッド」も間近ということで、彼自身にとって映画音楽というのがどの程度入れ込んで作っていたかという問題は、この際おくとしても、映画音楽期への胎動としては非常に興味深い作品ではあります。
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JOHN BARRY 007 - Thunderball (Soundtrack)

2005年07月24日 00時09分10秒 | サウンドトラック
 昨日レビュウした通り、ビートルズは1965年にバハマで「ヘルプ」の撮影をする訳ですが、実はこれに先行にして、バハマに入っていた英国の映画チームがありました。テレンス・ヤング率いる「サンダーボール作戦」に撮影隊がです。この時期のイギリスといえば、音楽はビートルズ、映画は007という具合にエンターテイメントを席巻していたといえますが、当時の両者はあまりクロスすることがなかったので、007とビートルズというのは、なにか全く別の世界の住人のような気がする訳ですけれど、バハマでニアミスを起こしていたというのは、なんか1965年故の興味深いエピソードではあります。

 さて、この「サンダーボール作戦」ですが、007シリーズの第4作にあたり、「ゴールドフィンガー」でモタモタした演出をしていたガイ・ハミルトンから、第1,2作のメガフォンをとったテレンス・ヤングが復帰して、当時人気のピークを迎えていた007シリーズの決定版とすべく制作された作品です。ハイライトは海中でのアクション。数十名にも及ぶダイバーたちが水中銃を使ったり、肉弾戦をしたりして、当時としては画期的な行くション・シーンでした。「サンダーボール作戦」は、ストーリーが割と単調だし、この手のアクションも今となっては当たり前になってしまったので、現在みると大しておもしろい作品でもないですが、007シリーズの中では涼しげな海洋っぽいシーンが多くて、夏になるとなんとなく思い出す作品です。

 サントラですが、実はこれのオリジナル盤はスケジュールとの折り合いとかいう映画にありがちな理由で、どうやら作曲に手間取ったらしい水中シーンの音楽等後半部分がごっそり欠落したままで発売され、そのまま30年以上も発売され続けてきたのですが、一昨年、ようやくそれらの部分をボーナス・トラックとして補ったものが出されました。今、そちらの方を聴いてる訳ですが、やっぱぁ、こうじゃなくちゃいけない....という感じで楽しめます。2曲収められた水中アクション・シーンの音楽は、今聴くとアクションというより海中を遊泳しているような音楽ではありますが(笑)、いかにも涼しげで映画の場面を彷彿とさせます。途中「007のテーマ(ジョン・バリー作曲の方)」が出てくるあたりも楽しいです(ついでにオープニングのガンバナーが収録されているのもマニアにはうれしいところです)。

 あと、今夜、改めて聴いてみて気がついたんですが、このサントラ「ミスター・キス・キス・バン・バン」のモチーフが随所に出てくることもあり、やっぱ主題歌はディオンヌ・ワーウィックが歌う同曲の方が良かったような気がします。いや、トム・ジョーンズが歌う「サンダーボール」も傑作ではありますが。
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B.HERRMANN, A.NEWMAN / The Egyptian(soundtrack)

2005年06月18日 23時08分26秒 | サウンドトラック
 バーナード・ハーマンとアルフレッド・ニューマンとの合作による興味深いサウンド・トラックだ。あの唯我独尊なハーマンがどう他の作曲家(しかも大先輩で恩人のアルフレッド・ニューマン!)と、どんな形でコラボネートしたのか、以前から気になっていたのだが、3000枚限定プレスとはいえ、最近ではこんなものまで復刻される訳だ。映画ファンにはなんとも有り難い時代である。

 さて、英語がからきしな筆者は、このディスクについているブックレットに書かれているであろう本コラボレーションに至る経緯については全く不明なのだが、クレジットからして、ほぼ6~7割方の曲をハーマンが書き、残りをニューマンが担当という形になっているので、ふたりで共作した曲があるという訳ではないようだ。おそらく、映画界にありがちな時間的制約だとか、編集後に新たな音楽が必要になったとか、そうした理由でニューマンの曲が補強され、その結果このコラボレーションが実現したような感じではないだろうか。いずれにせよニューマンの曲はハーマンの強烈なアクを前にいささか損をしている格好だ。したがって、あまり濃くはないが、全体から受ける印象は紛れもなくどうしてもハーマンのサントラとなってしまうのではないか。

 オープニング・タイトルはコーラスを交えた壮大なもので、エピック映画の音楽といえば、ミクロス・ローザがを作ったスタイルの後塵を拝した格好だが、低い音域を金管をやたらと咆哮させ、やや不安な雰囲気を醸し出すあたりは、やはりハーマンらしさが出ている。4,10,12,19曲目ではハリー・ハウゼンの特撮ものに共通する強烈でダイナミズムとエキゾチックさが共存していて、このあたりのエキセントリックさもう完全なハーマン節といってよかろう。8~9,14曲目のややニューロティックな叙情はこれを録音した翌年の「めまい」あたりに共通するこれまた彼独特なムードである。ついでに7曲目の木管とストリングスを絡めて可愛らしく女性的に進行していく様も、「幽霊と未亡人」あたりと共通するハーマンのアナザー・サイドだ。

 一方、ニューマンの担当分は、割と人間ドラマの部分の背景で流したものが多いらしく、エスニックなパーカスを絡めエキゾチックなムードを取り入れつつも、基本的にはこの人の穏健な旋律を生かした比較的まっとう楽曲が多い。ただ、11,15曲目あたりでは薫陶を受けたシェーンベルクの影響なのか、「浄夜」や思わずロマンティックさや新古典派風なオーケストレーションが時に見え隠れしているのが興味深いところではあるが。

 音質ははっきり聴きとれないところもあるが、ステレオ録音のような気がするこれが録音されたのは55年だから、私の耳が間違っていなければ奇蹟のようなステレオ録音だ。ただし、マスターの劣化が進んでいるのか、音そのもののレンジは狭く、音もぼやけ気味だ。また、ノイズリダクションを強めにかけているようで、こういう処理をした時にありがちなことなのだが、弱音部ではやや不自然な聴こえ方をしたりするのは、まぁ、いたしかたところだろう。とはいえ、55年の録音ということを考えれば文句はいえまい。
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RAKSIN, HERRMANN / Laura, Jane Eyre

2005年05月30日 20時36分19秒 | サウンドトラック
 20世紀フォックスはこのところ、1940~50年代の名作サントラをシリーズで積極的に復刻し続けているが、これもその1枚。内容は「ローラ殺人事件」と「ジェーン・エア」のカップリングというファンにとってはまさに待望のアイテムだ。
 一応、知らない方のため書いておくと、どちらの作品も映画そのものの評価もさることながら、映画音楽としてはハリウッド黄金期の名作中の名作である。前者はデビッド・ラクシン作なるテーマ曲が非常に有名であり、欧米では映画音楽というカテゴリーを超え完全にスタンダード化した結果、現在でもジャズ・ミュージシャンに良く取り上げられている作品であるし、後者はおそらく復刻、再録を含め、一番CD化されているおそらくバーナード・ハーマン最初期の名作でなのある。

 それにしても、両作品ともオリジナル・サウンド・トラックという形で今の世に甦ったのは、実は意外であった。なぜならば、これらの作品はいずれも40年代の前半に制作されており、サウンド・トラックそのもの存在が危ぶまれまれていたの加え、仮に現存していたとしてもレコーディングが40年代前半とあっては、音質的には到底期待できないことから、私も含めファンとしてはスコアによる再録音で、その音楽を楽しむ他はないと思っていたからだ。
 ところが、この復刻盤を一聴して、まず驚いた。「これが、ほんとうに40年代の録音なのか?」とちょっとばかり度肝を抜かれたくらいに音質が良いのだ。近年の技術の進歩とは凄いものだ。マスターには多数存在していたであろうノイズもきれいになくなり、深々とした低音にささえられ、壮麗なオーケストラサウンドが見事に聴こえてくる。40年代のモノラル録音とはいえ、これなら音楽に没頭できようというものだ。

 さて、内容をついて少々書いておこう。まず「ローラ殺人事件」だが、これまで存在したスコアによる再録音は数分間のテーマ部分しかなかったので、サントラ全体から約30分にわたって再構成された(らしい)組曲は貴重だ。しかもうれしいことに、この組曲、例のテーマと変奏という形で構成されており、あの優雅で、どことなく世紀末的な情緒を湛えたテーマを、りシャンソン風、キャバレー風なジャズ、ワルツ、子守歌、緩徐楽章風などなど様々なアレンジにのって次々に演奏されていく様はけだし絶品である

 続く、ハーマンの「ジェーン・エア」は、近年、マルコポーロからほぼ全曲に近い形でデジタル録音されたアルバムも出ているし(アドリアノ指揮&スローヴァーク放送響)、ハーマン自身が60年代にロンドン・フィルを振った組曲(デッカ)も存在しているが、前者は音質的は万全だし、オケもうまいのだが、あまりにさらりと流れるように演奏しているため、いまひとつハーマン流のニューロティックさだとか、ドラマ的な起伏みたいなものが希薄だし、後者は演奏、雰囲気、録音共に揃ってはいたものの、10分余りと短いのたまにキズだったのだが、本命のサントラを聴くと、予想通りに濃厚な歌い回しに、時代がかったドラマティックなメリハリなどが感じられた、まさにコレだという感が強い。
 それにしても、約30分14曲の演奏で現れては消える「ジェーン・エア」の旋律は魅力的だ。癒しがたい恋愛感情と、それに同居する不安な情緒をこのくらい見事に表した旋律も他に類例がないのではないたろうか。ハーマンはこの種の分野では、その後「めまい」や「マーニー」そして「愛のメモリー」などで、さらに一歩高みに上り詰めた表現を見せることになる訳だが、この作品の持つ、若書き故のナイーブさみたいな感触もやはり捨てがたい魅力があり、このオリジナル演奏によって、その魅力を再認識したというところである。(2003年1月4日)

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スウィング・ガールズ(サントラ)

2005年05月14日 22時49分47秒 | サウンドトラック
 先日、DVDで観てすっかりお気に入りになった「スウィング・ガールズ」のですが、今日はサントラ盤を聴いてみました。このサントラ、劇中で使用されたスウィング・ガールズの演奏ももちろん含まれていますが、映画のBGMとして使われた文字通りのサントラも収録されています。サントラの方はミッキー吉野が作曲している訳ですが、およそビッグ・バンド・ジャズとはほとんど無縁な、これ以上ないくらいに淡く、さりげないアコスーティック・サウンドなのが印象的です。この映画、舞台が東北、主人公たちはあか抜けない高校一年ということで、こういう音楽になったんでしょうが、ちょっとアメリカのロード・ムービーを思い出させるところもあったりして、従来の日本映画にない雰囲気があります。

 曲としては、アコギによるノスタルジックな「Falling in Blue」「That's what it is !」と、ロード・ムービーっぽい「Stay away from me」が良かったですかね。あっそうそう、「Reminding Sorrows」も短いけどキレイな曲です。
 スウィング・ガールズの演奏では、「故郷の空」がSE入れで映画の感動を甦らせてくれます。続く「メイク・ハー・マイン」では、スウィングというより、ジャズ・ロック風なリズムですが、パンクなタイコがいいです。後半のステージ場面は「ムーンライト・セレナーデ 」~「メキシカン・フライヤ」~「シング・シング・シング」と映画通り収録されます。おそらくこのサントラを買う人はここがお目当てだと思いますが、音だけ聴いてもけっこう楽しめます。
 いや、ひょっとしたら音だけだと興ざめになっちゃうんじゃないかと思ってたんですが、演奏が巧いとか、そういうレベルで議論する代物でもないでしょうが、とにかくみんなリズム感がいいので、様になってます。カッコいい!。

 ついでに、エンドタイトルで使われたルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」もしっかり収録されてます。契約の関係で収録できず....なのが多い中、あえて金をかけて、きちんと入れたのは英断というべきでしょう。それにしても、女子高生がビッグ・バンドに挑戦した音楽映画で、BGMがロード・ムービー風、エンド・タイトルがルイ・アームストロングという、この映画に込められたランダムな情報量はけっこうなものがありますね。それを楽しく自然に受け取ることができるってのが、今時な日本人の感性なんでしょうが....。

PS:ボーナス・トラックには、向上のあんちゃん達が切々と歌った、あの「号泣してもいいですか」が入ってます(笑)。
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