透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

本の話を本の少し

2006-09-13 | A 読書日記

運命を分けた設計変更
設計図の描き換え
機械の設計図との違い
勘違い、ミス、失敗、偶然・・・・
またもや設計変更と勘違い
空前の設計変更
S字に込められた意匠

こんな小見出しを列挙すると、建築の本だと思われるでしょうね。人体の進化の歴史を辿った本なんです。

本の帯には**地球史上最大の改造作は、どう生まれ、運命やいかに。「ぼろぼろの設計図」を読む。** とあります。本のタイトルは『人体 失敗の進化史』遠藤秀紀/光文社新書です。

本の話題からしばらく遠ざかっていました。先日読了したこの本の内容を30字以内で要約すると「骨など動物のパーツの形から読み解いた進化の歴史」といったところでしょうか。動物の遺体解剖を繰り返し、進化の歴史を探っている著者はこの本で、人体の進化は行き当たりばったりで、たまたま結果オーライのこともあるけれど、全く失敗なこともあると指摘しています。例えば、第四章 行き詰まった失敗作 には次のような記述がでてきます。

**本足で歩くための殿筋群、内臓重量や腹圧を受け止める下腹部。狭いながらもバランスをとる足底。精巧な母指対向性。巨大な中枢神経。高度な思考を分担する大脳。少ない赤ん坊を確実に残す繁殖戦略。これらの設計変更はヒトをヒトたらしめる見事な意匠だ。一方で、現代の私たちは、設計変更の負の側面に日々悩まされている。九〇度回転し、垂直になった腹腔がもたらすヘルニア。二本足歩行から起因する腰痛や股関節異常。垂直な血流が引き起こす貧血に冷え性。歩行から解放された前肢が巻き起こす肩こり。**

**ホモ・サピエンスの短い歴史に残されたのは、何度も何度も消しゴムと修正液で描き換えられた、ぼろぼろになった設計図の山だ。** これが著者の見解というか認識。

面白い本でした。で、次は『夜のピクニック』恩田陸/新潮文庫を読む予定。


 


飛騨の匠文化館

2006-09-13 | A あれこれ








飛騨の匠文化館 (060909)

 瀬戸川に沿って続く白壁の蔵、その意匠に同調させたデザイン。設計は木造住宅の第一人者で岐阜県出身の吉田桂二さん。地元の大工さん達が「技」を結集して建てたという。

館内にはいろんな種類の大工道具や木の継手や仕口などの見本が展示されている。7世紀ころには既に飛騨の匠が中央の寺院の建立に技を揮っていたという。文化館の建築そのものやこれらの展示品を見ていると飛騨の匠の技を継承している古川の大工さん達の誇りを感ずる。