大きな道路からよく見えるところに、まだ収穫されてない柿畑があります。 もう熟して柔らかくなっているのではないかと思える赤さです。
買い物に行ったとあるお店で、ご主人とお客とが雑談をしていました。 聞くとはなしに、つい聞いてしまったのですが・・・ それが柿の話題だったもので。
主人「ほうかい、あこの畑、柿がいつまでも残っとる思うたら、お爺はん、具合が悪かったんかい。」
どうも高齢の柿農家の人が健康を害して、今年は柿が収穫できないと言う話でした。 息子さんがいるけれど、他の仕事に就いており、跡継ぎをせよとは言えないご時世だと言っているのでした。
主人「今頃の若いもんは、皮をむいでまで柿を食べんけんのう。 柿は売れんじゃろう。」
客 「柿では食えんけんのう。」
その話を聞いて数日後、
お墓掃除をしようと空き地に車を止めたところで、見知らぬお兄さんにつかまってしまいました。 柿を買ってくれと言うのです。 柿はあるからと断ったのですが、なおも熱心に話しかけてきます。
渋抜きの柿は、愛宕柿より甘い横野柿だということ。
毎日道ばたに立って売っていたら風邪を引いたこと。(そういえばここ1週間くらい、歩道にコンテナを積み上げて売ってる人がいた)
卵酒を飲んだので運転できなくなって、歩いてだれか買ってくれる人を探していたこと。
今日はまだ千円しか売れてないこと。
今年は柿が豊作で値がやすいこと。
返ってくるのは2万円くらいだろう(出荷して諸費用を除いたもうけのことか?確かに暮らしていけそうもない)
なんとか断ろうとしたのですが、見るだけ見てくれという。 すぐ近くの家だからと。
値段は安そうです。 1個からでも売りますというので、少しくらいならお正月用に買ってもいいかなという気になりました。
1個からというには、こんなふうに個別に真空パックされているのでしょう。
以前は、10キロの柿をひとつの大きな袋にいれて渋抜きし、そのまま箱に入れて売られていました。 しかし、ドライアイスを入れ空気を抜いて真空にした袋の柿は、いったん開くと傷みが早いのです。 大袋で売ってもあまり売れないということで、最近は1個又は2個ずつパックにして売っていることが多いです。 この方が、小人数の家族には都合がいいらしいです。 もっともですね。
さて、お兄さんは走って道案内してくれました。 そして行き着いた家には、柿の入った段ボールが軽四トラックいっぱい積んでありました。
中を見てみると
大きな袋にいっぱい詰まった柿。 以前から売られている大袋入りの柿でした。 お兄さん、これじゃ1個2個では買えないじゃないの。 大規模な農家では自分の家で個別の真空パックもできるようですが、このおうちではできないのでしょう。
10キロ入りと5キロ入りがあって、5キロのは1月4日にならないと渋が抜けないと言いましたが、結局5キロ入りを買ってしまいました。 少しおまけしてくれました。 多分1個30~50円くらいにつくだろうと思いますが、安いです。
家からお兄さんの母親らしい人が出てきて、わざわざ買いに来てくれたことを大変喜んでくれました。 いえ、ただお兄さんに連れてこられただけなんですけど。
そして広告の裏に書いた、手書きの説明書をくれました。 コピーではありません、直筆です。
もう一枚、柿を長持ちさせる方法を書いた鉛筆書きのノートの切れ端もくれました。
買ってくれた人全部に手書きのを渡したんでしょうか。 いったい何枚書いたのやら。
帰り際に、香の花(しきび)をあげるというので、お断りしました。 だってお墓参りのため車に積んでありますから。
それじゃ、カイロをあげると言います。 ? 意味が分からん。 これもていねいにおことわりしました。
すると、ちょっと待っといてと納屋に入っていったかと思うと、お餅を持ってきました。 「四方餅」だからと言って4個のお餅をくれました。 お母さんがついたんだそうです。
どうも買ってくれたお礼のようでしたので、カイロと一緒にありがたくいただくことにしました。
なんだかねえ
説明書と言い、お餅といい、本当に誠実に一生懸命売ろうとしてはいるのですが・・・・・ 切ないですねえ。
これが零細な農家の現実なのでしょう。 人の良いこの親子に、暖かいお正月は来るのでしょうか。
大晦日だというのに景気の悪い話題で申し訳ありません。 どうやら日本は暗いトンネルの入り口にいるようですが、その先にある出口はー? 近いことを願うばかりです。
あの親子にも、職をなくした人々にも、早く春が訪れますように。 そして皆様にとって平成21年が良いお年でありますように。