桜三里の途中にある鞍瀬渓谷。 その入り口に長さ100メートルに満たない短いあじさいロードがあります。 毎年ちょっとだけ寄り道をしていくのですが、残念ながら今年は花が少ないようです。
このあじさいは、この道沿いの一軒家に住むおばあさんが植えたのがはじまりだということを聞きました。 話を聞いたのがもう10年以上も前で、そのころ既におばあさんはこの家にいたりいなかったりの健康状態だったようです。 ですから植えたのはもっともっと前ということになります。
その後地域の方も加わってだんだんと広げていったそうなのです。 木々の茂る淋しい山道をあじさいで彩って人々に見てもらいたいという願いだったのでしょうか。
わたしは、自然の中に園芸種の植物を持ち込むのはあまり好きではありませんが、山の中のあじさいにだけは別の感情を持っています。
日の差さない山陰で日光を好む華やかな花はうまく育ちませんが、あじさいだけは日陰でも育つからでしょうか、 山のあちこちであじさいを見かけます。 ときにはなぜこんな所に?と思えるような場所にも。 それは、もう生活の痕跡もないけれど確かにそこに人の手が加えられたということなのです。
町の人から見れば不便きわまりない、変化の乏しい山の暮らしかもしれませんが、あじさいの彩りにささやかな幸せを感じながら、慎ましく平凡にそして精一杯生きた人々がいたという証だとわたしは思っています。 ですから、かすかな寂寥感とともに山の中のあじさいを見てしまいます。
先日、マタタビの葉であることを確かめた、白猪の滝入り口の菖蒲園。 ここにもあじさいがたくさん咲いていました。
杉の中にさくあじさいの群れ。
ここのあじさいについてはみっちゃんさんが書いておられます。 美しい写真ですよ。
わたしは、心に残った花々をいくつかご紹介。
あじさいといえば七変化。 微妙な色の変化が美しい。
花が咲いてます。ほら! 普通花びらと思われているのは萼で、真ん中のちっちゃくて丸いのが花です。右側と下の花が開いているでしょ?
赤系のあじさいも華やかで魅力的。
たくさんのあじさいの中でひときわめだっていた赤紫の花。
まるでちょうちょが飛んでるみたい。
これは実際にえび茶がかった深い赤でした。
最後に大好きなアナベル。 真ん中の花は子どもの頭くらいありました。
たくさんのあじさいと菖蒲を植えたのは白猪屋さんというおうちのご夫婦で、白猪の滝に訪れる人に喜んでもらおうとこつこつと植えたのだとか。 そのご主人はなくなりましたが、奥様と地域の方々とが花を守っていると、新聞で読みました。
花を介して山間ににぎわいを、そんな願いが込められているように思いました。 そしてその思いは確かに花を咲かせていました。